第23話 コラボ依頼

「う~……」


 宙音がベッドの上でうなってる。


「何してんのー?」

「うわっ! お姉ちゃんいつの間に!?」


 そんなに驚かなくてもいいでしょー。


「でー?」

「……別に」

「もー! それっ!」

「あっ!」


 宙音の手からスマホをとってみたら動画が流れていた。


「これ、あれだよねー? 宙音がやってるやつ」

「Vtuber! いい加減覚えて」

「それそれー!」

「もう!」


 顔をあかくして怒ってる。


「かえして!」

「はいはい。その人が好きなのー?」

「推しってだけ」

「好きじゃないのー?」

「好きも含んでるの!」

「へー。それで、面白いのー?」

「面白い。ウチの目標だから」

「なんだっけ」

「そう、山幸 うみくん」

「あー! いってたいってたー!」


 宙音が少し前ずっと話してた。


「でー? なんでうなってたのー?」

「別にって言ったでしょ」

「うりうりー!」

「うっざい!」


 最近の宙音は抱き着くとすぐ逃げようとするから、もっと強くしないと。


「ぎゅー!!」

「うざいうざいうざいうざい!」

「離さないよー!」

「わかった! 言う! 言うから!」

「ぎゅー!!」

「離せぇ!」


 じたばたしてるから力を緩める。


「それでー?」

「離してよー……」

「やだー」

「……ちょっと、コラボ断られちゃって」

「コラボってこの人と?」

「そう」

「えー、危なくない? ネット上の人とあっちゃいけないんだってよー?」

「会うわけじゃないから! 通話しながら一緒に配信するってこと」

「なんだ。そのくらいおっけーしてくれてもいいのにねー?」

「そのくらいじゃない。結構差があるから」

「年が?」

「登録者が! 年はそんなに離れてなさそうだけど」

「なら何回もおねがいすればいいよー」

「迷惑でしょ……」

「そうかなー?」


 わ、じとっとした目で見られた。


「なんて送ったのー?」

「……はぁ。もういいや……これ」

「んー? あ、メール? えー、かたくない?」


 メッセージでいいのに。


「初対面なんだからあたりまえでしょ!」

「姉ちゃんが考えてあげるー!」

「絶対やめて!」

「なんてなまえだっけ? えっと、やまさち?」


 ……んー? やまさち、うみ。やまさち……


「いきなり固まった……どうしたの?」

「んー、ちょっと? その人の動画見せてー?」

「動画じゃなくて配信のアーカイブだけど」

「……」


 宙音のイヤホンを耳に入れる。

 んー。やっぱり? あれ、ポケット……

 あー、部屋にスマホ置きっぱなしだー!


「ちょっと聞いてくるねー!」

「? 何を? 誰に?」

「待っててー」


 スリーブモードを解除して、メッセージを送る。


『カイトって山幸うみであってるー?』

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る