第505話 お出迎え
「もうここから身体強化で走って行っちゃダメ~?」
「ダメだ。護衛任務なのを忘れるな」
「はぁい……」
あと馬車を一時間も走らせればウルスカに到着するという距離、ダメ元で言ってみたら予想通リカルドに一蹴された。
「前に孤児院のヤツらにも仕事はキッチリしろって言われただろ? ククッ、またあいつらに叱られてぇか? エリアスの言った通り御者させなくて正解だぜ、馬に無理させたかもしれねぇもんな」
素直に諦めてしょんぼりとしていたら、ホセが追い打ちをかけてきた。
ホセがイカの事バラさなきゃ、あの時も子供達に色々言われなかったのにさ。
「ここまで来たのなら安全だろうし、私は許可してもいいけど、リーダーのリカルドがダメって言うならダメだねぇ。私としてもアイルが一緒の方が楽しいから、いてくれた方が嬉しいな」
「う……っ」
純粋なガブリエルの笑顔が眩し過ぎる。嫌味でもなんでもなく言ってるから罪悪感に
もう自分勝手な事は言いません。
その後、ウルスカに到着するまでおとなしく過ごした、ラストスパートだからと馬に身体強化かけたけど。
『到着したよ、皆身分証準備しておいてね』
「はぁい!」
御者席のエリアスからの声に元気よく返事した。
さっき通信魔導具でビビアナに連絡したら、散歩がてら門前広場に来るって言ってたからすぐに会えるのだ。
『おお、帰って来たか。お前らがいないからアイルを見たがってる観光客とかいないって聞いてガッカリしてたぞ。アイルは見世物じゃないって怒りそうだけどな、ははは。それよりついさっきビビアナを見たぞ、結構腹が大きくなってたなぁ』
『ビビアナに会いたくてたまらない人が中にいるからそんな事言っちゃダメだよ、馬車を飛び出したらどうするのさ』
『んぁ? ホセの事か? ガキの頃から変わらねぇなぁ、ははははは! ホレ、身分証返すぜ』
門番のルシオがひょいと窓から中の顔ぶれを確認して身分証をエリアスに返し、再び馬車が動き出した。
それにしても……、ホセってば私よりビビアナにべったりだと思われてるんだね、ププッ。
内心ニヨニヨしていたらホセにジロリと睨まれた。
「言っとくけどよ、ルシオはガキの頃のイメージのままだから言ってるだけだぞ。大体あの頃だってビビアナに余計な手出しをしようとするヤツらから守るためにずっと一緒にいただけだし。別にオレが」「わかってるよぅ、そんなにムキにならなくていいのにぃ~」
「だったらその顔やめろ!」
ホセの大きな手で顔を掴まれ、頬を潰される。
「しょんな顔って……」
「ふふっ、アイル、さっきはアイルを揶揄っている時のエリアスと同じ顔してたよ」
抗議の声を上げようとしたら、エンリケに笑われてしまった。
どうやら顔に出ていたようだ。
「そういう事だ」
凶悪な顔でニヤリと笑われ、なんとか誤魔化そうと目を逸らすといきなり抱き込まれた。
「え!? 何!?」
「ビビアナに会えるのは最後にしてやるよ」
「酷い!!」
ホセの腕の中でもがいていたら、馬車が止まった。
『お帰り、長旅お疲れ様。あの子達にお風呂の準備お願いしてあるからすぐに入れるわよ』
『わぁ、ありがとうビビアナ! ルシオに聞いたけど、本当に少し見ない間にお腹が大きくなったねぇ』
『うふふ、そうでしょ? 特に寝ようとすると凄く動くから大変なのよ』
『真っ先に飛び出してきそうなアイルが出て来ないがどうした?』
どうやらおじいちゃんも一緒に来ているようだ。
「もう! 放してよホセ!」
「さぁ、皆降りようか」
無情にもリカルドが降りて行くと、ホセと私以外の皆も続いて降りて行った。
「皆おかえりなさい。アイルとホセは?」
ドアが開いた事により、はっきりとビビアナの声が聞こえる。
「ビビアナ~! ただいま~! ホセに捕まってるの~!」
馬車の中から私が叫ぶと、ビビアナとおじいちゃんが中を覗いた。
「相変わらずねぇ、何やってるのよ。ホセ、放してあげなさい」
「チッ、しょうがねぇな」
ビビアナのおかげでホセから解放されて馬車から飛び出す。
タリファスの公爵領の宿屋以来で二週間くらいしか経ってないのに、ビビアナのお腹は更に大きくなっている。
ビビアナまであと一メートル、抱き着こうとした瞬間、横から衝撃が襲った。
「アイル~、久しぶりじゃないか~! 出発しちゃってから王都に向かったって聞いてびっくりしたんだからね、おかえり~」
スリスリと頬ずりされながら時々当たる柔らかくてふわふわの耳、『
そういえば王都へ向かうちょっと前から依頼でパメラ達がウルスカにいなかったから何も言ってなかったっけ。
「た、ただいま……、ちょうど入れ違いにウルスカを出ちゃったみたいだね。パメラ元気だった?」
「うん! ビビアナにそろそろ帰って来るって聞いてたから昨日から三日間は休養日にしたんだ。今からギルドへ依頼達成報告に行くんだろ? アタイも一緒に行くよ」
「おい、勝手に連れて行くなよ」
抱き上げられてそのまま連れて行かれそうになったが、ホセがパメラの肩を掴んで止めてくれた。
とりあえずビビアナとおじいちゃんとハグしたいんだけどなぁ。
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