第466話 エルフ達の再会
要塞都市エスポナを出発して三日目の夕方、私達は王都の外壁の前に居た。
「何と言うか…、森や山が遠いな…」
馬車の窓から遠くに見える山を見ながらカマエルがポツリと漏らす。
そりゃまぁ山の中に住んでいたエルフからしたら馬車で数時間行かなきゃ到着しない森や山なんて遠いだろうね。
自然に囲まれて育ったから王都は住みづらいかもしれない、近くに大きな森があるウルスカに住むタミエルは大丈夫だろうけど。
「大丈夫だよ、馬だったら半日で山まで往復出来るし。言えば王宮で借りれるだろうけど、私の屋敷にも馬は数頭居るから乗りたければ乗りなよ。一人が嫌なら時々騎士団が訓練に行くからついて行けば良いし」
ガブリエルはあっさりと言ったが、カマエルが騎士団に同行出来るくらい良い関係を築けるのか怪しいと思う。
「そこはラファエルと行けば良いと言うところじゃないのか?」
リカルドが首を傾げた、少なくとも
しかし魔法を使えない事を馬鹿にされて里に居づらくなったラファエルからしたら、里のエルフと仲良くするのは難しい気がする。
今は原因がわかったとはいえ、何十年も
「う~ん…、ラファエルはあまり外に出たがらないからねぇ」
「それって街中だと注目されるから嫌なんじゃなかった? 王都の外なら良いんじゃないかな?」
「あ、そうか。そうだねぇ、それじゃあ屋敷に着いたら聞いてみようか」
エリアスの言葉にガブリエルはポムと手を打って頷いた。
「その前に到着したらカマエルとタミエルはラファエルに里での態度を謝らなきゃダメだよ? こういう事はちゃんと口に出して言ってもらうかもらわないかで本人の気持ちはかなり違うからね! 会ったら挨拶と同時に謝罪! わかった?」
「「わかった…」」
再現ドラマなんかで介護してた
それで許せない人も当然居るだろうけど、それでも申し訳ないと思うのなら伝えた方が良いだろう。
『もうすぐ門だから、そろそろ皆の身分証預かっておくよ』
御者席からエンリケが声を掛けて来た、私達は身分証を取り出して小窓からエンリケに預ける。
馬車は一般の長い行列を横目に、貴族用の門から簡単な確認だけで王都内へと入った。
「ここがこの国で最も栄えている王都か…、さすがに全ての規模が大きいな。カマエル、慣れるのに時間が掛かるのではないか?」
窓から街並みを見ながらタミエルが心配そうに言ったが、当のカマエルは余裕気に微笑んだ。
「ラファエルもここに何十年も住んできたのだから問題無かろう。教えを
そう言ったカマエルは悟りを開いたかの様な顔をしていた。
初心者講座だけでラスボス級の娼婦に挑んだ事により、彼らは精神的にとても成長したのだろう。
考えてみればエルフの里を出たばかりに比べて二人とも格段に表情がわかりやすくなった。
やはり周りに表情豊かな人達が居ると変わるのだろうか。
馬車は順調に街中を通り抜け、貴族街のガブリエルの屋敷に差しかかった。
門の前に移動するまでに中から人が出て来たのが見える、家令のレアンドロとの対比でラファエルの身長が伸びてない事がわかってホッとした。
だって、アルトゥロは最初はあんまり私と変わらないくらいだったのに、トレラーガに行く度に伸びてるから身長がどんどん離されていくんだもん。
とは言っても元々ラファエルはビビアナくらいの身長だから私よりはうんと大きいんだけどね。
「兄さん、お帰りなさい」
「ガブリエル様、お帰りなさいませ」
「ただいま、変わりは無かったかい?」
出迎えてくれたラファエルと使用人達にガブリエルが声を掛けると、全員が微妙な顔をした。何かあったのだろうか。
「その…、招待や問い合わせの手紙が凄く多くなってる…かな。アイルが神託を受けて魔法が使える子供が生まれるようになったと既に広まってるから、貴族で唯一アイルと繋がりのある兄さんに会いたいと…。アイルが賢者なのは知ってたけど、神託を受けるような聖女には見えないから変な感じだね」
「確かにアイルが聖女だと言われても戸惑うのは仕方ないだろう。ラファエル、久しぶりだな、里では事情も知らずに魔法を使えない事を
「私からも謝罪しよう、道中アイルからも散々説教された。自分達と違うからと
「え? えぇっ!?」
前に出たカマエルとタミエルがラファエルに頭を下げた。カマエルの最初の言葉にちょっと引っかかったけど、ちゃんと謝れたから許してあげよう。
二人に謝られて驚いてるラファエルが可愛かったし。
それにしても王都なだけあって魔法を使える子供が生まれてる事を知っている人も増えている様だ、王都にいる間面倒な事に巻き込まれないといいけどなぁ。
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