第452話 ブラウリオの策略
[side ホセ]
一旦部屋に
一応部屋に入る時には三度軽く扉を叩く、部屋に入る前のノックは孤児院でそりゃもうシッカリと叩き込まれたからな。
だけど返事が
言っていた通り鍵は掛かって無いから部屋に入ってテーブル席で
防音が施されているがオレの耳には
別に覗く気なんて更々無ぇけど風呂から意識を外す為にお茶を飲みつつウルスカ出発前夜のじいさんとの会話を思い出してみた。
「なぁ、本当にアイルの事は諦めてしまうのか?」
ひ孫が欲しい発言から時々こういう事を言う様になったじいさん、アイル以外でも良いが出来ればアイルとのひ孫が良いらしい。
アイルは小せぇからな、長く可愛がれるとでも思ってるんだろう。
「諦めるも何もあれだけバッサリ振られちまったんだからどうしようもねぇだろ」
じいさんが珍しく二人で部屋飲みしようなんて誘って来たが、何かと思えばそんな話だったから来た事を後悔していた。
「ハァ…、ホセは本当に恋愛をして来てないのだな、平民として育ったという理由を抜きにしても駆け引きというものが全くわかっておらん」
「駆け引き? 魔物討伐の時にゃやってるぜ、知恵の回る魔物も居るからな」
「馬鹿者、私が言っているのは恋の駆け引きだ、これでもお前の祖母である妻と出会った時は…」
「あ~、いい、じいさんの
長くなりそうな予感がしたから話を
アイルもよくあんなの聞いてられるぜ。
「ンンッ、まぁ良い。とにかくお前は振られたが嫌われてはいない、しかも告白した事によって意識はしたはずだ。あとはアイルに信用と安心感を持って貰えれば成功率はかなり高いと見ている」
咳払いをして惚気話を語ろうとした事を誤魔化したじいさんがバカな事を言い出した。
「おいおい、信用も安心感も十分過ぎるはずだぜ、じゃなきゃ二人きりで夜を過ごしたりしねぇだろ?」
「それは仲間としての信用と安心感だろう、私が言っておるのは男としてだ。今のホセだとほぼゼロだな、娼館に通っている分マイナスかもしれん。特に浮気に関してはこちらが驚く程に拒絶反応を見せるからな、アイルは喧嘩したからと娼館に行くのも許せないのだろう?」
「ああ」
あの時の事を思い出して蒸留酒を
「本当にアイルが好きならそういう意味での信用を得なければならん、そこさえ何とかすれば勝機はあると思っている。お前には人族より有利な点がある事だしな」
そう言ってじいさんはこれ見よがしに尻尾を揺らした。
「けどよ、そんなの他の獣人が言い寄って来たら意味無ぇだろ? あいつ教会本部でも狐の獣人を撫で回していたしな」
「ふむ、やはり気付いておらなんだか。私とホセの二人一緒にアイルと寝る時があるだろう、その時に明らかに私よりホセに触れている時間が長いんだぞ。毛並みの魅力は同じ獣人にしか通用しないと思っていたが、アイルに関しては別な様だな。容姿や財力、性格と同じく魅力の一つとして利用するが良い。アイルよりも娼婦の方が良いと言うのなら無理
散々煽っておいて今更だろ、じいさんはオレの答えがわかっている様に尻尾を揺らしながらグラスを傾けた。
脱衣所の扉が開く音で意識がウルスカの夜からトレラーガに戻る。
扉に視線を向けると風呂上がりで頬をピンクに染めたアイルがオレ達とお揃いのシンプルな夜着で立っていた。
「お先に~、ホセがいつも使ってる石鹸置いてあるからね。私と同じやつ使っても良いけど、あはは」
「オレが花の匂いさせてどうすんだよ」
アイルはエドガルドが用意していた花の香りの石鹸を気に入って自分でも買って使っている、オレは
「あ~…、お揃いの匂いになってたらエドがうるさいかもしれないね」
「ククッ、それならそれで面白そうだけどな。お茶ありがとな、じゃあ風呂入ってくる」
「うん」
アイルの頭を軽く撫でて風呂へと向かう、教会本部に向かう時に喧嘩して以来小さな事でも礼を言う様にしたらアイルの機嫌が悪くなるのがかなり減った、これまで
脱衣所の扉を開けるとアイルの香り…正確にはアイルの使っている石鹸やシャンプーの香りが充満していた。
服を脱いで風呂場に入ると更に香りが濃くなる、無意識に深呼吸してため息の様な吐息を漏らした。
「すぅ……はぁ……あ、いや、今のは違う、アイルの匂いを嗅いだ訳じゃねぇ! オレもこの匂いが嫌いじゃねぇだけだ、うん」
誰も見ていないし、聞いていないのはわかっているが、つい言い訳を口に出す。
クソッ、エドガルドの奴が変な事を言うから妙に意識しちまう、アイルの愛用品の香りを
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