第446話 新たな通信魔導具

「じゃあコレ、ガブリエルを脅し…じゃなくて協力をお願いして作った簡易通信魔導具だよ。何かあったら迷わず呼んでね、すぐに帰って来るから。いつでも持ち歩ける様にペンダントとして普段使いが出来るデザインにしてもらったんだ、普通の通信魔導具だと大きくなっちゃうから頑張ったんだよ(ガブリエルが)」



 出発の前日、エルフの里から帰って来てから十日目の夜にやっと完成した簡易通信魔導具をリビングでビビアナに手渡した。

 私自身付与魔法は出来ても通信魔導具の原理とかサッパリだったので、簡単に持ち歩ける通信魔導具が無いなら他の冒険者に護衛を頼むようにガブリエルに言っておいたのだ。



 いくら簡易通信魔導具とはいえ片手で持てるサイズではあるものの、気軽に持ち歩くには少々大きい。

 魔導具の小型化は繊細な魔力操作が要求されるので難易度が上がる、ちなみに一般の人が魔導具を作る時は魔石を溶かしたインクで魔法式を刻み込みながら描くとの事。



 その場合ガブリエルや私がやっている魔力でき付ける方法よりうんと器用さが求められるので私には無理だ。

 そんな訳で開発だけガブリエルに頼み、私がチート頼みで言われるがまま魔法を付与した物が今回の簡易通信魔導具である。



「へぇ、パッと見で魔導具だとは思わないわね。精々魔石を使った装飾品としか思えないわ」



 ビビアナは魔導具を手に取るとじっくりと眺めた、隣でセシリオも興味深そうに覗き込んでいる。

 おじいちゃんが羨ましそうにしているのは気のせいだろうか、今回はおじいちゃんもお留守番だから寂しいだろうけど我慢できるかなぁ、私。



「材料と時間の都合でひとつしか作れなかったから、おじいちゃんも話したくなったらビビアナから借りて連絡してね。宿屋で私達とエルフの三人で部屋が別々なら夜に時々帰ってくるからね、その場合はリビングに来る様にするよ」



「そうか、往復のふた月の間寂しい夜かと思ったがアイルが時々帰って来てくれるなら嬉しいな」



 私が時々帰って来ると聞いておじいちゃんが嬉しそうに笑って頭を撫でてくれた、宿屋に泊まる時は是非ともパーティとエルフで部屋を分けてもらわなきゃ。

 妊娠中だから前程寝室にこもる事は無いかもしれないけど、ビビアナ達はまだ新婚さんだもんね。



「おい、またエドガルドの屋敷に寄るなら連絡しとかなきゃダメなんじゃねぇの? あのベッドの寝心地は良いけどアイツと顔を合わせるのがなぁ…」



 明日から移動の為、まったりと晩酌をしているホセが言った。



「もう連絡はされているはずだ、ギルドでエドガルドに連絡しておくと言われたからな…」



 げんなりした様子のリカルドがビールをあおった、どうやらトレラーガのギルドとウルスカのギルドは連携が取れているらしい。

 領主から頼られている大商会の会頭の頼みだもん、しかも私と親しくしているところも目撃されてるだろうから情報を流すというより連絡しておくという感覚なのだろう。



 でもなんだかんだでエドは色々お世話してくれるからありがたいと言えばありがたいんだよね、屋敷の料理人達も喜んで一緒に料理してくれるしさ。

 私を妻にしたいとか言ってる割に下僕状態に満足してる気もするし、他の人から見たらエドを都合の良い存在として利用してる悪女に見えるじゃないかと心配になる。



 実際そう言われても否定出来ないのが辛いところだけど。

 もういっそ開き直って女神の化身としてエドを信者一号扱いにしちゃうとか………いや、無いな。

 頭を振って考えを追い出し、酒瓶に手を伸ばして…手をホセに掴まれた。



「お前、一杯だけにするって言ってたよな? あんまり飲むと泡水が無くなっちまうんだろ?」



「う……」



 皆が飲み始めたけど、ビビアナは飲めないしと思って一杯だけハイボールを飲んだのだ。

 確かに調子に乗って飲んだらすぐに炭酸水は無くなってしまう、エドにも瓶一本分だけお裾分けしようと思ってるし。



「あら、出発しちゃったら酔っ払えないんだから今夜くらいはいいんじゃないかしら?」



 ビビアナが悪魔の囁きの如く魅力的な事を言い出した、だけど今夜は酔っ払ったら寂しくて泣いちゃう気がする。



「ううん…、今夜は我慢する。その代わりおじいちゃん一緒に寝ようね、夜に帰って来れても朝まで居たらバレちゃうかもしれないから夜の内に戻らないといけないだろうし」



「ケッ、そんな事言ってしょっちゅうじいさんと寝てるじゃねぇか」



「ふふっ、ホセったらヤキモチ焼かないの。アイルもあんまりおじいさんばっかり構ってたらホセが拗ねちゃうわよ」



「そんなんじゃねぇよ! 大体エルフの里から帰って来る時だって一緒に寝てるっての!」



 悪態あくたいをつくホセをビビアナが揶揄からかった、そんなにムキになったら余計に本当みたいだよ、ふふふ。

 ほら、エリアスが嬉しそうな顔しちゃってるし。



「ホセ、安心しなよ、道中小さい村の宿屋だと冒険者用に四人部屋が多いからアイルと二人で寝てもらう事が多いだろうからさ」



「だから違うっての!」



 にっこり微笑みながら揶揄うエリアスに怒鳴るホセ、だけどね、エリアスの言葉で尻尾が揺れてるから説得力は無いんだよ?

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