第414話 テントの中の出来事
エリアスのテントから出て来たレミエルを見て固まっていたら、パチリとレミエルと視線がぶつかった。
あわわ、どうしよう、何て言うべき!?
やはりここはあのRPGの名言「昨日はお楽しみでしたね」かな!?
固まったまま混乱していたが、レミエルは泣きそうな顔をした、いや、泣き出した。
そして私にタックルというか、勢いよく走って来て抱き締める様に抱き上げそのまま走り出す。
「レミエル!? どうしたの!?」
小柄とはいえ女性の力で抱き上げて走るのは難しいはずなのに、身体強化でも使ってるのだろうか。
レミエルは私を抱えたままテントから離れた
「うぅ…っ、アイルぅ…ぐすっ」
「ど、どうしたの!? エリアスに乱暴な事でもされた!?」
川の水音で声は掻き消されるかもしれないけど、一応小声で話す。
「ううん…、その逆なの。里の姉さん達が言った通りにしたのに…」
「里の姉さん達? いったい何て言われたの?」
「男をその気にさせるにはそっと手を握って自分の胸に押し当てるんだって…、そうするば柔らかさとこっちの胸のドキドキが伝わるから上手く行くって教えて貰ったの。しかも断られたせいで泣き疲れてそのまま眠っちゃうなんて、エリアスにどんな顔すれば良いかわからない…!」
胸に手を…ねぇ、まさか…、まさかとは思うけどそれがダメだったんじゃなかろうか。
思わずエルフ特有のスレンダーな身体のやはりスレンダーな胸部を見てしまう、ぶっちゃけ私の13歳の頃のサイズだ。
普通のブラでは無く胸部保護用のスポーツブラみたいなやつでカバーできる程度。
「えっと…、エリアスはもう起きてるの?」
「ううん、眠ってたからコッソリ出て来たの」
「それなら…昨夜の事は酔ってて覚えて無い事にしちゃおう! レミエルの記憶では自分のテントにずっと居た、起きたらエリアスのテントに居てびっくりして飛び出しちゃった、いいね?」
「そんな…、信じて貰えるかしら?」
「そんなの言い張った者勝ちでしょう。本当の事なんて本人にしかわからないんだから。私はエリアスに言い含めて来るから朝食を並べておいてくれる?」
「う、うん、わかった。エリアスの方はお願いね」
「任せておいて、絶対信じさせるから」
私はストレージから朝食セットを出してレミエルに任せた、何かをしていた方が気が紛れるしね。
そしてエリアスのテントへと向かう。
「エリアス、起きてる? 開けるよ」
声を掛けてテントの中を覗くとエリアスがグッタリしていた。
どうやらレミエルが出て行った時も起きていた様だ、
「『
「……ないから」
「ん? 防音魔法使ったからハッキリ言ってよ」
やはりまだ父親になる覚悟が無いのか、それとも1人に絞る事が出来ないのか。
「だってあまりにもレミエルの胸が小さいから…! ほぼ無いんだよ!?」
「うわ最低」
ガバッと身体を起こして訴えるエリアスに、思わず
「酷い!!」
「酷く無い、私の素直な感想だよ」
「そ、そりゃあ昨夜レミエルがテントに入って来た時はドキドキしなかったと言えば嘘になるよ!? だけどさぁ…」
エリアスの話を纏めるとこうだ、昨夜ウトウトし始めた頃にレミエルがそっと入って来て防音魔法を掛けた、その時点でまさかと思いつつも期待もあった。
そしてレミエルが言っていた通りエリアスは手を握られ、その手はレミエルの胸に押しつけられたが、柔らかな弾力が申し訳程度手の平に触れたかと思ったら指先には胸骨の感触があった…と。
「わかるかい!? 普通胸っていうのは手で包み込むものだろう!? なのにレミエルの胸は指が必要無いくらいなんだ! いくら僕が胸の大きさに
いくら防音魔法を掛けてあるとはいえ、赤裸々にも程がある発言をするエリアス。
私が女だって事忘れてないよね?
「だけど…、拒否する理由が胸っていうのは…」
あまりにもレミエルが可哀想で思わず反論しかけると、エリアスは
「大丈夫だよ、レミエルにはもっと自分大事にしてって言って断ったから。それともアイルは獣化した時に申し訳程度しか毛が生えてない獣人にもホセやおじいさんと同じテンションでモフれるって言うのかい!? ずっとその毛量しか触れないんだよ!?」
「う…っ!? それは…!!」
背景にピシャァァンと雷が落ちた気がした。
もふもふしているからこそモフれるのであって、もふもふ成分が無いとモフる事は不可能、それはもう撫でるというやつだ。
「わかったかい? 僕に言わせれば胸は揉むモノであって撫でるモノではないんだよ…! エドガルドならそれでも平気かもしれないけど、僕には耐えられないんだ」
エリアスの言い分を理解出来てしまった私にはもうエリアスを責めるなんて出来なかった。
エルフの身長が低くて童顔であればエドは喜んでエルフの里に向かったかもしれないが、残念ながらこれまで見たエルフは全員スラリとした美形だ。
結局私とエリアスは父親になる覚悟がまだ無いという理由で断った事にし、昨夜の事はレミエルは酔って覚えて無いという説明を信じたと口裏を合わせた。
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