第402話 レミエルとガブリエルの再会
「おぅ、お帰り。あれ? 1人多…って、エルフ!?」
門番のルシオが私達を見て戸惑う、出て行った時と人数が違うから当然か。
私の時も帰りに増えてたんだから2度目だね。
「エルフの里からガブリエルに会いに来たレミエルだ」
「レミエルよ、よろしく」
「……ハッ、身分証は持っているかい?」
ルシオ…、今レミエルに見惚れていたね?
私が初めて来た時とは随分と態度が違うんじゃないかなぁ、思わずジトリとした目を向けてしまう。
ルシオに言われてレミエルは木で出来た身分証を出した。
「おお、コレが噂のエルフの身分証か…、うん…、うん…、よし、問題ないな。ようこそウルスカへ」
「ありがとう」
身分証を確認してレミエルに返した、エルフの身分証は特別なのだろうか。
普段私達は
「さてと、ギルドと魔導具研究所の二手に分かれて行動するか? 俺はリーダーだからギルドに行くとして、アイルは研究所の方で頼むぞ」
「えぇっ!?」
「あ、オレはギルドに行くぜ、
リカルドもホセも
「じゃあ僕はアイルについて行くよ、面白そうだし」
エリアスは完全に面白がってるだけだから良いよね、何か話が拗れた時は私がガブリエルとレミエルの板挟みになってる姿しか思い浮かばないよ。
ちなみにエンリケはさりげなくリカルドの隣に立ってギルドへ行く意思表示をしていた。
「じゃあ研究所に行ってくる…」
「ああ、そっちは頼んだぞ、家で会おう」
苦笑いを浮かべるリカルド達に見送られながらニコニコしているエリアスと、緊張で口数が少なくなっているレミエルを連れて魔導具研究所へと向かった。
この時間ならまだ仕事中のはずだから1階の事務所に寄って呼び出して貰った。
「アイル! こんな時間に来るなんて珍しいね! 何かまた開発して欲しい魔導具でもあるのかな?」
呼び出し用の魔導具で呼ばれてすぐに、扉をブチ破る勢いでガブリエルが現れた。
「ごめんね、お仕事中に。ガブリエルのお客さんを連れて来たの」
そう言ってレミエルに視線を向けると、ガブリエルも釣られた様にレミエルを見た。
「あれ? レミエル? 何でウルスカにいるんだい?」
「あ、あの、その、長老達が…、その…」
キョトンとしているガブリエル、婚約者なんだったらもう少し別のリアクションがあると思うんだけど。
レミエルはレミエルで久々の再会なのか何だかポンコツになっているし。
「まぁいいや、休憩にするから私の部屋でお茶でも飲みながら話そうか」
「じゃあ私達はこれで失礼するね」
ガブリエルがすぐに階段へ向かおうとしたので帰ろうとした、エリアスは残念そうな顔をしない!
「どうしてだい!?
「え、でも婚約者と久々の再会でしょ? 邪魔するのはちょっと…」
「婚約者? 誰が? まさか…レミエルが婚約者だとでも思ってるのかな?」
キョトンとしたガブリエルの言葉にその場の空気が凍りついた。
事務員さんも、レミエルも顔面蒼白である。
エリアス、嘘でも良いからその笑顔を引っ込めて心配そうにしてやって。
「詳しい話は2人ですれば良いよ、やっぱり私達は邪魔にな…」
いきなりガシリと腕を掴まれたので振り向くと、犯人は涙目のレミエルだった、その目は
「はぁ…、わかった、客観的に判断する人も必要だろうから一緒に話を聞くよ」
諦めてガブリエルの部屋に行くと、真新しいティーセットでお茶を淹れてくれた。
「綺麗なティーセットだね、お客さんが来たりするのかい?」
「この前アイルが食事を作ってくれた時に他の住み込み研究員がここに来て一緒に食べたんだけど、その時は来客用が足りなくてアイルが持っていた物を使ったから買っておいたんだ」
「……そうなんだ、だから新しいんだね」
エリアスの質問に照れ笑いを浮かべながら答えているが、それまでは来客が無かったと言っているも同然である。
その事実に気付いたであろうエリアスも一瞬言葉に詰まっちゃってるよ。
「アイルの手料理を…ここで…」
「前にお土産として珍しい食材を持って来たの、その時たまたまお腹空いてたみたいだからその食材を使って料理しただけだから」
呆然と呟いたのはレミエルだ、関係を誤解されてはたまらないので慌てて説明した。
とりあえず2人の関係に私が巻き込まれない様にしないと!
「で、レミエルはどうしてウルスカに居るんだい?」
そういえばガブリエルは貴族だった、その事を思い出す様な優雅な所作でお茶をひと口飲んでから話し始める。
「えっと…、迷子になって森を
レミエルが話始めた時、部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「はい」
ガブリエルがドアを開けると、1階に居た事務員さんが手紙を届けに来てくれた様だ。
「所長、手紙が届いたのですが…、どうやら1度王都に届いた物が転送された様ですので早く確認された方が良いのでは」
「ありがとう」
手紙を受け取るとソファに戻りながら手紙を開封した。
そして段々と暗い顔になり、ソファに座った時には項垂れていた。
「ガブリエル、大丈夫?」
暗い顔で、喋らなくなってしまったので思わず声を掛ける。
「大丈夫じゃないかも…、この手紙、さっきレミエルが言ってた長老達からの手紙だったよ。いい加減子孫を残す為に子供の1人でも作れって、レミエルならちょうど良いから結婚せずともせめて孕ませろとか、レミエルが気に入らないなら里に帰って何人か孕ませるならまた里から出ても良いとか、異議があるなら里まで言いに来いって…」
「なっ、何それ!? レミエルを何だと思ってるの!? ガブリエルに至っては完全に種馬扱いじゃない!」
「たねうま…」
「ぶふっ」
憤慨したら私の言葉でショックを受けた様に呆然と呟いたガブリエル、そんな様子にエリアスが吹き出した。
レミエルはそれが何か、と言わんばかりにキョトンとした顔をしている、きっとそれが当たり前だと教え込まれて来たのだろう。
「それで実際のところ2人は婚約者なの?」
「そうよ」
「違うよ」
レミエルとガブリエルが同時に答えて顔を見合わせた。
どうやら話が終わるまでにはお茶のお代わりが必要な様だ。
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