第388話 男達の絆
「帰したく無いが…、もう帰ってしまうのか…」
「また来るから、それともビビアナの赤ちゃんが産まれたら見に来る?」
「それはいい考えだね、冒険者ギルドを通して性別を教えてくれたら出産祝いを持って会いに行くよ」
「うん、もしかしたら依頼で居ないかもしれないから先に連絡してね」
エドの屋敷の前での遣り取り、既にトレラーガに来て6日が経っていた、なので私のストレージの中には大量の料理が収められていてウハウハだ。
トレラーガを出て人目が無くなったら転移でウルスカの近くまで行けばこの料理は置いておけるという計算である。
「わかった。ああ、そうだ、あの夜着は男共の前で着てはいけないよ? 私も1度しか着た姿を見せて貰えなかったんだからね」
あの夜着というのはもちろん兎の夜着の事だ、一緒に寝る予定のおじいちゃんなら良いよね?
「私もちょっと恥ずかしいし、見せるつもりはないから安心して。それじゃ、元気でね!」
「ああ、アイルも」
私は御者席に乗り込み馬車を走らせた、車内に乗ると窓から私の姿が見えるせいか、馬車が見えなくなるまでエドが動かない事に気付いたからだ。
[車内 side]
「あの夜着ってなんだろうね? エンリケは知ってる?」
別れ際のエドガルドの言葉を真っ先に気にしたのはエリアスだ、リカルドもホセも首を傾げたのに対し、エンリケが小さく笑ったので知っていると目星を付けられたのだ。
「知ってるよ、3人が出掛けた夜に着ていた夜着の事だと思う。アイルが兎に獣化しちゃったみたいで可愛かったよ」
「へぇ、それは是非見せて貰いたいなぁ、ねぇホセ?」
「別に…」
ホセは昨夜からずっと機嫌が悪い、何故ならエドガルドが夕食を済ませて食堂を出る時に忙しいからと皆の前でおやすみのキスを
皆の前では恥ずかしいと渋るアイルに、頬にしてくれるなら後でも良いと言ったせいでアイルはその場で額にキスをした。
それだけであればきっとその場で顔を
しかも「君達も娼館を出る時におやすみのキスをして貰ったりするのかい?」と言い出し、その夜はアイルが目を合わそうとしなかった。
その事を思い出したのか、ホセは天井を睨み付けながら拳を握って歯を食いしばっている。
その様子に3人はホセが何を考えているのか察したらしく、苦笑いを浮かべた。
『ふふふ、そろそろ良いかな…。どぅどぅ』
そんな車内の様子を知らないアイルの声が聞こえて馬車が止まり、御者席の小窓が開いた。
「そっちに人影が無いか確認してもらえる? そろそろウルスカの近くに転移しちゃおうと思うんだけど」
リカルドが立ち上がり後方の窓から確認した。
「馬車も人も見えないが…、転移した先に誰か居たらどうするんだ?」
「その時は隠蔽魔法使ってたから見えなかっただけだって言い張れば良いよ」
「あ、なぁんだ、意外にちゃんと考えてたんだね」
「エリアス! 私を何だと思ってるの!?」
「だって枕カバーの事も僕が言わなきゃ登録もしなかったでしょ? ちゃんと決めておかないと肖像権だっけ? 絵描きの利益とかそういうのも守られないって知らなかったでしょ? そういう意味で世話のやける仲間だと思ってるけど何か?」
「うぐぅ…、その節はお世話になりました…」
「ふふっ、どういたしまして」
結局抱き枕もキャラクター枕カバーも商業ギルドに登録する事になった、色々な形がある事と、絵描きや役者などに利益が入る様にする為ににはしっかり登録して取り決めを作っておかないと作った人の総取りになるからとエリアスが説得したのだ。
ちなみにオバンドは己の利益の為、エドガルドはアイルの抱き枕を手に入れる為にオバンドの利益総取りを黙認する気だった事は話を聞いたエリアスの胸の内にしまってある。
特にエドガルドに対して貸しはいくつあっても良いと思っているだけに、アイルの抱き枕を作る事を予測しているが口には出さなかった。
「じゃあ行くよ~、『
幸い転移した先に人目は無かった、1時間も馬車を走らせればウルスカに到着するという所まで来たのでお昼には家に帰れそうだった。
アイルは御者席の小窓を閉めると再び馬車を走らせると、再び男だけの会話が始まる。
「それにしてもアイルが教えたっていう夜の技、結構広まってたね?」
「俺はエリアスみたいに日参してないから詳しくは無いぞ、だが確かにウルスカの娼婦と同じ事をしていたな…」
「なぁんだ、リカルドもしっかりウルスカの娼館で確認してたんだね。リカルドは黙ってればお堅そうに見えるの狡いよね~」
「そんなにイイの? アイルの教えた技って…」
珍しくエンリケがこの手の話に入った。
そしてさっきまで不機嫌だったホセも合わせて3人が同時にコクリと頷いた。
「へ、へぇ~…、ちょっと興味持っちゃうなぁ…」
エンリケが娼館に興味を持つのは出会ってから初めての事だった、ホセはニヤリと笑うとエンリケの真横に座り肩を組んだ。
「
「確かにそうだね…、それなら…」
ホセの言葉巧みな誘惑にエンリケはコクリと頷いた、男達の絆が更に深まった瞬間である。
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