第361話 ギルドへ妊娠報告
食後のお茶を飲んでひと休みしてから『
それにしても、セシリオは休日になるとビビアナから片時も離れないな。
ビビアナはそういうタイプを重いと感じるかと思っていたが、意外にもその重さが心地良いと思うタイプだったらしい。
自分の事を特別に思ってくれてるという実感ができるんだって、私には無理かも。
冒険者ギルドに入ろうとしたら、中から数人飛び出して来て、ホセを見て慌てた様子で声を掛けて来た。
「ホセっ、あの狼獣人ってホセのじいさんじゃなかったか!? バカな奴らが街中で絡んで訓練場の方へ連れて行っちまったぞ!」
おじいちゃんは散歩してくると言って私達より先に出掛けていたのだ。
私達と一緒に行動してるところや、家に帰ってるところもそれなりに目撃されてるから手出しする様なバカは居ないと思ったのに。
よく見ると声を掛けてきたのはバレリオに教育された元新人達だった、うむうむ、ちゃんと真面目にやっている様で良かった。
「わかった、教えてくれてありがとな。って、おいアイル!」
私はホセを追い抜いて訓練場へと走って向かった、おじいちゃんはそれなりに強いと思う、そんなおじいちゃんに絡むおバカさんは相手の実力もわからない低レベルなヤツらだろうから心配しなくていいってわかってるけど、それでもやっぱり心配なのだ。
ギルド内を走り抜ける際に何人かに声を掛けられた気はするが、優先すべきはおじいちゃんだ。
訓練場に到着すると、おじいちゃんは木剣を手に4人組の冒険者達を相手していた。
「ほれ、そんな大振りでは殺してくれと言っているも同然だぞ」
ドスッと鈍い音を立てて木剣の平面で胴を打ち付け、その隙に背後に回って振りかぶった男の脇腹に回し蹴りをお見舞いする。
残りの2人は既にやられた後の様で、木剣を支えにやっと立っている状態だった。
「おじいちゃんカッコイイ!! さすが元騎士だね!」
「おお、アイルか、まだまだ若造には負けんよ」
ピョイピョイと飛び上がって声援を送ると、おじいちゃんはニカッと笑った。
私の言葉を聞いたおじいちゃんに絡んだバカ達や周りの野次馬達が騒つく。
「騎士だと…!?」
「道理で強いはずだぜ」
「やるなぁ、冒険者としても現役でやっていけるんじゃねぇ?」
そんな騒めきの中、木剣を片付けておじいちゃんがこっちに来た、そして同時にギルドのカウンターの方からいきなり歓声が上がった。
「あっ、もしかしてビビアナの妊娠をもう知らせちゃったのかもしれない!」
「「「「「「なにぃぃぃっ!?」」」」」」
歓声の理由を予測して口に出すと、今度は訓練場で驚きの声が上がった。
「アイルっ、それは本当なのか!?」
「ビビアナは冒険者引退しちまうのか!?」
「どうすんだよ、パーティでアイルが女1人になっちまうじゃねぇか、何か間違いでも…」
「バカか、前はビビアナが女1人でも問題なかったんだぞ、アイルだったら安全に決まってるだろ?」
「それもそうだな、ははははは」
「おじいちゃん、彼らもおじいちゃんに鍛えて欲しそうだよ?」
にっこり笑って好き勝手言っている冒険者達を親指で差してやった。
「あっ、いやっ、皆がアイルの事大事にしてるって意味で言っただけだから!」
「そうだぞ! 別にアイルに魅力が無いって言ってる訳じゃ「オイッ」
口を滑らせた冒険者の脇腹を仲間が肘で突いた。
どうしてくれようかと思っていたら、おじいちゃんが皆の元へ戻る様に促してきた。
「アイル、ビビアナは皆に祝われて揉みくちゃにされてないか心配ではないか? 妊娠初期は大事だと聞いたが」
「あっ、そうだね! ……………あなた達、次は無いからね?」
カウンターのある方へ戻ろうとして足を止め、振り返って騒いでいた冒険者達に忠告すると、その場の全員がコクコクと激しく頷いた。
その様子を確認して私とおじいちゃんは皆の元へと戻る。
そこで見たものは冒険者達に囲まれて酒場で強引にお酒を飲まされているセシリオ、受付嬢達に囲まれてキャッキャと話をしているビビアナ、カウンターで並んでいたのに受付嬢達が仕事を放棄している為待たされている冒険者と、それを申し訳なさそうに見ている『
「それで今何ヶ月? いつ妊娠がわかったの!?」
「昨夜セシリオが腰の模様が変わってるって気付いたの、その前の晩はまだ変わって無かったから今は2ヶ月目に入ったばかりってとこね」
それって昨夜もその前の夜もそういう事してたって事だよね、それだけ仲良くしてたら子供も出来る訳だよ、むしろ今まで出来なかったのが不思議なくらいだ。
「ねぇねぇ、おじいちゃん」
「ん? どうしたアイル?」
私はおじいちゃんの袖を引っ張り小声で話す、きっとおじいちゃんなら知ってるよね?
「腰に変わった模様が出ると妊娠2ヶ月目なの? どんな模様になるか知ってる?」
「そりゃまぁ…知っているが…。アイルはそういう知識を持って無いのか?」
おじいちゃんは驚いた様に目を
「だって、私の居たところとは身体の仕組みが違うんだもん。私のこの身体は女神様に創られたからこの世界の人達と同じになってるけど」
「ふむ…、それならマザーやビビアナに聞けばよかろう」
「マザーは聖職者だから聞くのは
「ははは、ならば娼館で知識の豊富な娼婦に教えて貰える様に頼んでやろうか? 娼婦相手なら恥ずかしくもなかろう? それにアイルと話すだけで稼げるのなら娼婦も喜ぶのではないか?」
「わぁい! おじいちゃんありがとう!」
私は嬉しくておじいちゃんに抱きついた、ムフフ、これで色々情報交換できちゃうぞ。
ビビアナの活動休止手続きが無事終わったので、ベロベロに酔っ払わされたセシリオを連れて皆で家へと帰った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます