第304話 貧民街の教会
「じゃあ僕はここから別行動するね」
エリアスとはここから別行動、それなりに賑わっているケーキ屋に入って焼き菓子をゴッソリ買って来た、1部…いや、半分くらいは帰りの道中楽しむ為だけど。
1種類につき2つくらいは残して来たからお店の迷惑にはなって無いはず!
お店を出るとさっきまで聞いていた声が耳に届いた。
「ねぇ、良いでしょう?」
「でも…、私恋人がいるから…」
「やだなぁ、君みたいに素敵な女性に恋人がいるのは当然だよ。ただ僕は美人さんとお話ししたいだけで
「えぇ…、まぁ…」
「「「……………」」エリアスが普段どうやって情報仕入れてたか判明したね」
人族でも顔が良ければ受け入れられる様だ、パルテナでも人によっては獣人差別をする人達も居たみたいだけど、ホセは常に受け入れられてたもんね。
私達はエリアスを見なかった事にして辻馬車に乗り込み、ケーキ屋で聞いた
王都には5箇所教会があり、その内の3つは孤児院が併設されていて、貧民街にあるのは1箇所だけとの事。
「お客さん、悪いがここまでで勘弁してくれ、帰りに1人だと襲われちまう。教会はこの道に入って2本目を右に行けばすぐに見えるからさ」
「わかった、ごくろうさん」
ホセが代金を払い、私達は歩いて教会を目指した。
確かに段々街並みが薄汚れて来たなぁとは思っていたけど、辻馬車の御者が指し示した「この道」は初めてトレラーガの貧民街に行った時を思い出した。
ウルスカは荒くれ者が居る、というイメージだが、やはり大きい都市では区画全体が
念のために貧民街を出るまで身体強化と探索魔法を展開しておこう。
「『
角の向こうにも聞こえるくらいの声で待ち伏せに気が付いている事をアピールしてやった。
あ、撤収するみたい、賢明な判断だね。
「久々に気を張らなきゃいけねぇみてぇだな」
「そうだよ、獣人同士での喧嘩なんて普段しないんだからホセが負けてもおかしくないんだよ?」
「へっ、そん
「バカね、相手もAランク相当の実力があったらどうするのよ、アイルはそういう意味で言ってるのよ?」
「……わかったよ」
ムッツリとしながらもホセは大人しく頷いた、やっぱりビビアナの言う事はちゃんと聞くんだよね。
「普通の格好じゃなく冒険者スタイルで来れば良かったかなぁ」
今日の私達は都会の街中散策用に作った服なのでちょっとおしゃれ仕様なのだ。
そのせいかオープンカー状態の辻馬車に乗ってる間中すごく視線を向けられていた、私にも向けられていたけど種類が違ったよ!
2人は見惚れるというわかりやすい視線に対し、私に向けられるのは「何でこんなのが一緒に?」と言わんばかりの不思議そうな視線だったのだ。
さっきの3人組なのか、その仲間なのか、遠くから様子を伺っているのはわかってるけど近付いて来ないので放置。
結局私達が教会に入るまで3人は付かず離れず見張っていた、何がしたいんだ。
礼拝堂に入ると騎士らしき人達と凛としたシスターが話をしていて、扉が開くと同時にこちらに視線が集中した。
真面目そうな顔付きの獣人達はホセとは種族というより種類が違う感じでまた良し!
「おい」
「ハッ」
ホンワ~となっていたらホセに頭を掴まれて正気に戻る。
私は軽く身を
「お話中ごめんなさい、私達旅の途中で孤児院の見学がしたくて来たんですけど…。先日教会本部の孤児院も見学してきたところなんです」
「教会本部ですか!? あそこの見学なんて…」
どうも疑われている様だ、いきなり来て孤児院を見せてだなんて怪しいもんね。
しかし私には切り札がある!
私はポケットから出すフリで通信魔導具を取り出した。
「そういえばカリスト大司教にビルデオに到着した報告をしていませんでした。カリスト大司教~」
『アイル様!?』
秒で反応した、まさかずっと通信魔導具の前で待機していたんじゃないよね?
「はい、今ビルデオの王都にある教会で孤児院を見学させて頂こうと立ち寄ったところです」
『それはそれは、確かビルデオの王都には3箇所孤児院があったと思いますが…、そこに教会関係者はおりますか?』
「ほ、本当にカリスト大司教様の声だわ…」
『おや、その声はシスタークララですかな? という事は貧民街にある教会ですね。シスタークララ、アイル様をよろしくお願いします、怪我をした子がいるのなら診て頂くと良いですよ、但し内密にね』
「は、はい…」
通信魔導具の向こうでウィンクしている姿が目に浮かんで思わず口元が緩んだ。
『やっぱり! カリスト大司教様! 教皇様が通信魔導具が見当たらないというのでもしやと思ったら…』
『これ、今アイル様と通信をしている最中ですよ』
『えっ、アイル様!? 失礼しました!』
「お忙しい様なのでまた移動したら連絡しますね」
『もう!? アイ』
私はそっと通信を終了した。
シスターも話していた騎士も何とも言えない顔をしている、きっと大司教という立場の人が部下に叱られているのを聞いてしまったからだろう。
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