第211話 タイチとアデラの結婚式
結婚式って女神様が居るから教会でするものだと思っていた。
だけどそれは殆ど見栄が大事な貴族だけなんだって、何故ならお布施の額が平民にはキツイから。
小さな村や町だと教会の規模自体が小さいから平民でもちょっと裕福なら利用出来るらしいけど、モステレスみたいな大きな都市だと教会の規模が大きい分司祭や助祭、シスターの数も多いので動員人数や式の最中受け入れられない信者の数だけお布施も逃す事になるので大金貨は確実に必要なんだとか。
財力的には余裕で教会で式を挙げられる2人だが、だったらお布施の分を披露宴でパーッと使ってついでに商会の宣伝したい…と言うのが本日の主役達の意見だそうな。
そんな訳でこれ以上無い宣伝効果を持つ
で、現在私は門前広場に作られた結婚式会場で客寄せパンダと化している。
広場に並べられたテーブルと椅子に座り、主役の登場を待っているが黒髪がそれなりに居るにも関わらず私は注目を浴びていた。
何故なら以前タイチが言っていたが大山家は物っっ凄い男系の家らしく、家系に女の子は3人だけで、しかもその子達は黒髪ではなかったりする。
そして垂れ幕、「タイチ、アデラ結婚おめでとう」と書かれているすぐ横に「4人目の賢者と共同開発の白だし、近日発売」と書かれた物が飾られている。
しかも文字数の関係で白だしの方が大きく、その垂れ幕の下では大山商会のスタッフが道行く人に料理の味付けにも使えるスープの素として試飲用の小さなカップや、昨日教えた白だしで味付けした唐揚げの試食が配られていた。
「何というか…、商魂逞しいね。今まで色んな商人を見て来たがここまでの人には会った事が無いよ。アイルや賢者サブローの居た所ではコレが普通だったりするのかい?」
ちゃっかり『
「あ~…、ある程度は居るね、特にとある地域の商人はかなり商魂逞しいよ」
偏見かもしれないけど大阪の商人なら自分の結婚式を宣伝に利用するのなんて当然なイメージだ。
しかしサブローの子孫のタイチよりアデラの方が余程それっぽい。
「本当に!?」
エドはどうやら冗談のつもりで言ったらしい、逆に驚いている。
「うん、その地域の商人の挨拶は「儲かりまっか~」って儲かっていますか意味の言葉で、順調な時は「ボチボチでんな~」って何とかやってますと答えるんだって。物凄く良い時は「お陰さんで~」って自分の力じゃなく周りのお陰でやってますと謙遜して答えるらしいよ。私の居た国では謙虚が美徳って考えがあるせいだろうけど。なのに商品を値切る時に値切って得した、じゃなく値切らなきゃ損っていう考え方だとか」
「アイルは何だか凄い所にいたんだね~」
「いやいや、私はその地域の住民じゃ無かったからね!?」
エリアスの勘違いをすかさず訂正した、大学時代にアパートで前の住人が残して行ったエアコンが壊れたので大阪出身の友人とお店に行った時、商品を決めると友人は真っ先に店長を呼んで貰って値段交渉し始めた。
何故かと聞くと値引き権限持ってるから話が早い、との事。
凄く頼もしかったが私にはあの子の真似が出来るとは思えない。
式と披露宴が合体した様な宴が始まると、通行人からも2人にたくさん祝福の言葉が掛けられた。
式を進行する司祭が持って来た結婚証明書に2人がサインをして、司祭がそれを皆に見える様に掲げると一際大きな拍手が会場を包んだ。
その証明書を司祭が教会に持って帰り保管される事になる。
お布施という謝礼と商会商品を使った料理の数々を手土産に司祭が帰ると、後は正に宴となった。
あちこちで乾杯の声が上がり、余興が行われて凄く盛り上がり、私も2杯だけ飲んで良いと言われてテンションが上がったので風魔法と水魔法で会場全体にミストを風で送って涼しくしてから会場を囲む様に氷の柱を作り出した。
いや~、我ながらその日1番の盛り上がりだったかな、雲があったから陽射しはそこまでキツくなかったとはいえ、結構気温が高かったので涼を求める通行人や子供達が大喜びしていた。
年配の人以外は魔法自体を初めて見る人が多かったので上がった歓声につられて更に野次馬が増えた、そして商会のスタッフがすかさず試食を差し出しアデラは笑いが止まらなかったそうな。
実際いつから白だしが発売するのかや、試食のレシピを問い合わせる声が多かったとか。
全て白だしを使っているのでレシピを知って作るイコール白だしを買う、という事なので販売当日にはレシピを付けて販売するんだとか。
醤油を使ったレシピも醤油コーナーに張り出すらしい、そのレシピで商売しない限り商人ギルドに手数料を支払わなくても良いので一般家庭では好きに作れるのだ。
司会をしていたタイチの親族がそろそろ宴の終了だと会場に告げた、いつの間にか私の膝の上に鎮座していたハヤトが明日も結婚式だったらいいのに、などとボヤいたが昼前から始まりもう夕方、日本の結婚式と披露宴の2倍は時間が経っている。
楽しい事は楽しかったが、ずっと好奇の目に晒された挙句カパカパとお酒を飲む仲間達を横目に2杯で我慢したので寧ろ終了を告げられてホッとした。
残った料理は通行人にも振舞われるので
招待客がチラホラと帰り始めたので私達も宿泊施設に戻る事にした、ハヤトを降ろすと昨日と同じく感覚が無くなっている足に正常化の魔法を掛ける、ふふふ、学習した私はもう2度と足の痺れで悲鳴を上げる事など無いのだ。
氷柱の魔法を解除した事により周りから上がった残念そうな声を聞きながら私達は会場を後にした。
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