第197話 セゴニア王宮

 王宮に到着した、王都の観光も何もせず直行で。

 食事の時間までお寛ぎ下さいと案内された部屋に1人でポツンと居る。

 無駄に広くて落ち着かない、20畳どころじゃないな、40畳くらいあるんじゃなかろうか。



 最初に部屋へ案内されたのが私なので他の仲間達の部屋がどこかわからない、全員到着してるかわからないから洗浄魔法を掛けて綺麗にしてから天蓋付きのゴージャスベッドへダイブした。

 馬車の中で気疲れしたのもあってしばらくウトウトと微睡んでいたら、既に外は夕焼けで赤く染まっていた。



「『探索サーチ』」



 探索魔法で仲間達を探すと下のフロアの客室に案内された様だ、ちなみに広さは10畳くらい、格差があり過ぎでしょ。

 王宮内の造りを確認すべく探索範囲を広げていたら、仲間達の部屋近くの食堂らしき場所に食事が4人分。

 そして私の部屋に食事が運ばれて来ている最中だった。



 到着前に言えば私も食堂で食べられるだろうかと思い、確認しようとドアへ向かったらノックされたので返事をすると侍女が1人入って来た。



「失礼致します、先程お伺いした時はおやすみの様でしたので食事をお部屋にお運び致しました。すぐに準備致しますので少々お待ち下さいませ」



 お伺いって…、さっきの探索魔法で壁の中の通路から部屋の様子をお伺いっ放しの人がいる事に気付いちゃってるんだけどね?

 むしろその人からの報告でしょ、だって冒険者生活してたらノックで起きるくらいには周りの気配に敏感になるし。

 返事する間も無く、洗練された無駄の無い動きであれよあれよと言う間に食事の準備が済んでしまった。



 仲間達に用意されていたものよりかなり豪華な気がする、きっと私が一緒なら皆も良い物食べられるって事だよね、次からは一緒に食べられる様に言っておかなきゃ。



「次からは仲間達と食べたいので起こして下さい、せっかく…」



 侍女ににこやかに話しかけ、途中で壁へと近付き人が潜んでいる場所を乱暴なノックをする様にドンッと拳で叩く。



「ずっと私に張り付いてる人がいるみたいですし?」



 目の笑っていない笑顔を侍女に向けるとサッと顔色を変えた、恐らくここに人が潜んでいる事を知っているのだろう。

 複雑な模様に紛れてはいるが、僅かに切れ目みたいなものが見えるのでここから覗いていた様だ。



「私は自分の身は自分で守れるから護衛は不要、それとも監視しているというのなら私に喧嘩売ってると認識すると上の人に伝えて貰えます?」



 切れ目をジッと見て言うと、壁の中の人は居なくなった。

 とりあえずマーキングしたし、王様直属なのか隠密部隊みたいな集団の元に帰るのかチェックしちゃえ。

 感覚的にはテレビ見ながら食事する様な感じで探索魔法を使いながら食事する事にした。



 給仕をしている侍女はさっきの出来事でかなり緊張している様だ。

 食事を一応鑑定したが、睡眠薬とか妙な物は入ってなかったので食べたが量が多すぎる。

 味は普通に美味しいが普段パーティメンバー全員で食べるくらいの量がテーブルに乗っているのだ。



「……ご馳走様、次からは女性1人が食べれる分だけ持って来ていただける? 歓待して下さる気持ちは嬉しいですが無駄になってしまうのは心苦しいので」



「かしこまりました、厨房の方にそう申し付けておきます。明日は午前に謁見がございますので朝食後にお支度を手伝いに参ります」



「朝食は仲間達と一緒にいただけますよね?」



「……はい、その様に手配致します」



 危ない、コレ言わなきゃここに運び込まれるパターンだったよね。

 何だか嫌な予感がするなぁ、いっそビビアナかホセの部屋に泊めて貰った方が良いかも。

 そんな事を考えていたら手がワキワキと動いた、そういや暫くホセをモフらせて貰ってないなぁ。



「入浴のお手伝いは後程参ります」



「あ、必要ありません、1人でも大丈夫ですし、さっき洗浄魔法で綺麗にしたので」



「かしこまりました、タンスの中の衣類はお好きにお使いくださって結構ですので」



 洗浄魔法という言葉に驚いていたが、すぐに無表情に戻った、やはり表情を出しちゃいけないと教育されているのだろうか。

 私と侍女が会話してる間に他の侍女達が食器を綺麗に片付けてしまった。

 無駄の無い動きに感心してしまう、そして退室して行く侍女達。

 私に説明していた侍女が部屋を出て行く時、コソッと呪文を唱える。



「それでは失礼致します」



「『身体強化パワーブースト』『隠蔽ハイディング』」



 さっきの侍女もこの侍女も、退室する時は頭を下げて他の人(ドアの外に待機している騎士)がドアを閉めるまで頭を上げないのでドアが閉まる前にそっと脱出した。



 行き先はホセの部屋、私の部屋と違って部屋の前に騎士は居なかった。

 ノックをすると暫くしてバスローブ姿のホセが顔を出した、私の姿を認識出来ないせいでキョロキョロしている間に抱き着く様に部屋に押し込む。



「アイルか」



「『魔法解除マジックリリース』、えへへ、当ったり~!」



「丁度いい、情報のすり合わせしようぜ」



 私とホセはベッドに腰掛けるとお互い部屋に案内されてからの出来事と、聞かされている明日の予定など報告し合った。

 夕食に来なかったので結構心配させてしまった様で、疲れて眠っていたと言ったらジト目で無言になってしまった。



 その後、何とか機嫌をとって獣化してもらい、ブラッシングした後フワフワ毛並みで移動中のストレスを癒して貰いながらぐっすり眠った。

 その夜私がで騒ぎがあった事も知らずに。



◇◇◇


更新遅くなりました、出来立てホヤホヤ。

謁見まで行けず…、次回で行けるかな?(^_^;)

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