第186話 大氾濫終息
もう夏の気候だというのに時折り涼しい風が吹いてくる、昨日放った
大体100㎡くらいかな、お肉に出来る魔物も結構入ってるから冷蔵庫要らずだね、なんて一緒に待機してるビビアナと話していたら、同じく待機してる冒険者達が顔を引き攣らせた。
何でこんなにのんびりしているのかというと、ガスパルが雑魚だと言っていた様に外壁の周りにいる魔物達はそう強くは無い。
大物でもボア系の変異種くらいなので下位ランクだと難しいかもしれないけどAランク以上にとってはただの食材だ。
変異種の中には昼間と違って人が居なかった夜の間に死んだ魔物の魔石を喰らって変異したっぽいのも居た。
魔石はある程度長く生きた魔物にしか発生しないのでダンジョン産で魔石持ちなんて殆ど居ないらしいけど。
先天的な変異種は色味が違うが、魔石を喰らって変異したものはパワーアップというか、パンプアップしましたと言わんばかりに体格が逞しくなるのだ。
それでも1000体くらい残っているので地道に数を減らすしか無い、エルフ2人も先攻組として参加しているがあまり魔法を使っている様には見えないので2人に近付く。
「おはよう、昨日はお世話になったみたいで…ありがとう。戦況はどう?」
「あら、おはようございます。元気になられてなによりです、私達は他所へ行こうとする魔物だけを狙う様に言われてるだけなので楽ですが、外壁付近の冒険者達は大変そうですね」
知能の低い魔物は本能的に人を襲うらしく、何体かは他の村や町に向かったかもしれないが、殆どはこのカタヘルナにいる人の気配に引き寄せられて留まっている。
「ここまで乱戦状態であれば我らが外壁付近に攻撃魔法を放てば冒険者が巻き込まれるからな。かと言って我らだけで残りを殲滅するのは魔力が足りん、お前は治癒魔法も使えると聞いた、『
この人…えっと、確かハニエルとか言うエルフはチョイチョイ我ら我らってニコイチ発言して来るなぁ、周りへの牽制なんだろうか。
この2人の関係って何なんだろう、整ってる顔という意味では似てるけど、家族という感じでは無さそうだし…。
「ところで2人は恋人なの?」
ドッガァァァン
思い付いたまま聞いたらハニエルがさっきの10倍くらい威力のありそうな特大の火球を逃げ出した魔物に放ち、大爆発を起こした。
外壁の上に居たら人達も、下で戦ってた人達も何事かと一瞬騒つく。
「ななななな、何をいきなり言い出すんだ!? 我らがその様な仲に見えたというのか!? ふふ…、まぁ仕方の無い事かもしれんが…」
物凄く動揺しながらニヤつきを抑えきれず顔が赤いハニエル。
一方アリエルは穏やかな微笑みのまま顔色は変わらず、おっとりと話す。
「違いますよ? いわゆる昔馴染みというやつですね、エルフの里同士の交流で知り合って百年以上経ってますから」
アリエルの言葉に膝から崩れ落ちて俯くハニエル。
「はは…、少々魔力が足りなくなった様だ…、暫く休ませてもらおう」
これはさっきの10倍火球で本当に魔力切れなのか、それともアリエルの言葉の攻撃力にやられたのか分かりかねる。
ハニエルはその場で座り込み、手摺りとなっている壁に凭れて俯いてしまった。
気のせいだろうか、ハニエルから鼻をすする様な音が聞こえて来た気がするんだけど。
アリエルは戦場を見渡し、時々火球を放っていてハニエルを気にしている様子は無い。
「あ、あの、邪魔してごめんね。私向こうで待機してるから、何かあったら声掛けて」
ジリジリと後退し、そそくさとその場から逃げ出した。
あんなに偉そうなハニエルが打たれ弱いのは意外だった…、打たれ弱いのかアリエルに弱いのかは微妙だけど。
「さっきのは何だったの?」
ビビアナの所まで戻ると聞かれた、10倍火球だもんそりゃ気になるよね~。
「ああ…、うん…。あの2人の関係は昔馴染だけど、これ以上は詳しく聞いちゃダメって事がわかったかな…」
「ふぅん?」
大して興味は無かったのか、ビビアナは曖昧な相槌を打つと支給された矢の確認を再開した。
矢羽が乱れているものをチョイチョイと弄って整える、羽のバランスが悪いと思った所に飛ばないんだとか。
2時間程するとガスパルの交代指示の声が聞こえた。
「さ、今度はあたし達が頑張る番ね!」
「うん!」
魔物の数を確認すると今朝と比べて6割くらいに減っていた、下の方では先攻の冒険者達が退避すると同時に待機していた冒険者達が飛び出して来た、もちろん『
交代した事により、乱戦状態だったものが魔物と冒険者の層に分かれた、今だ!
「『
地面から生える様に無数の氷柱が乱立する、先に削っておかないとエルフの2人みたいに逃げ出す魔物しか狙えなくなりそうだったし。
下からも横からも歓声の様な驚きの声が上がった。
「ふふっ、アイルったら、そんなに頑張られちゃったらあたし達が活躍出来ないじゃない」
揶揄う様に笑ってビビアナが矢を放つ、下の冒険者を背後から襲おうとしていた目の3つある狼(鑑定したら魔狼という名前だった)の眉間を射抜くとすぐに矢を番えて再び矢を放った、このスピードで矢を放ってたんなら昨日指が腫れてるわけだよ。
氷柱から逃れた魔物達は次々に冒険者達に屠られていき、その日の昼食の時間にはガスパルから
ホッと息を吐いたが、私が大変なのはこの後だという事をこの時は忘れていたのだ。
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