第168話 バレた理由
「な、ななな何の事!?」
「アイル…、その態度は肯定してる以外の何ものでも無いよ…」
動揺して吃りまくる私にエリアスがツッコんだ。
ホセはさり気なく殺気立っている。
「ははは、さっき見ちまったんだよ。人の気配がしたからアイルだったら驚かそうと思って気配消して覗いたらよ、ココで食器を魔法で綺麗にした挙句、マジックバッグも無しにテーブルの上のモンを全部消しちまったところをな。初めてギルドで黒髪黒目を見た時は賢者サブローの子孫かとはチラッと思ったんだけどよ、賢者の子孫でも魔法が使えねぇって事ぁ有名だろ? そんで食わせてもらった見た事も聞いた事もねぇ料理にトドメの魔法、アイル本人が賢者じゃねぇと理屈が合わねぇ。だが隠してんだろ? 誰にも言うつもりはねぇから安心しな」
バレリオはいつでも飛び掛かれる体勢になっていたホセにニヤリと笑った。
「ああ…、僕達は普段から食べ慣れてるせいで何も思わなくなってたけど、考えてみたらこのあんかけ? っていうトロみのついたスープを使った料理も唐揚げもアイルに食べさせてもらうまで食べた事無かったもんね」
そういえば昨日酒の肴が減って来た時に独り酒用にこっそり確保してた唐揚げや細切りポテトフライも出したんだった。
これは知られたのが分別のあるバレリオだった事を幸いと思うしかないかな。
それにしてもあんかけも知られてなかったのか、もしかしたらサブローは男子厨房に入らずの世代だから食べた事はあっても片栗粉を使うって知らなかったのかも。
それにしても泊まった事を知らなかったとはいえ、覗かれるてるの全然気付かなかった、バレリオって確かBランクだっけ?
ベテランなだけあって気配の消し方が上手いなぁ、そんな技術を悪戯に使おうとするなんてなんて無駄使い。
「はぁ、今度の依頼で隠してる場合じゃ無くなるかな~って思ってたけど、まさかそれより早くバレるとは思ってなかったよ。でもこんなタイミングでバレるのも必然だったのかもしれないね…バレリオだけに」
「「「………………」」アイル、お前まだ酔ってんのか?」
「ぐ…ッ」
無言もツライけどホセに冷静にツッコまれるのもツライ!!
そりゃちょっと無理矢理な感じだったけどさぁ!
憐れみを含んだ3人の視線に耐え切れず、下唇を噛んで目を逸らした。
「とりあえず…、リカルドとビビアナにも報告はしておかないとね」
オレンジまで完食したエリアスは立ち上がり食堂を出て行った。
「バレリオが黙っててくれるなら今まで通りでいられるよね? とりあえずこの国に居る限り王様だろうと何かを私達に強制出来ない許可証もあるし」
不安になって縋る様にホセを見ると、小さく息を吐いて私を見た。
「……はぁ、とりあえずこの国に居る間はな。けどよ、セゴニアに行く前にバレるとセゴニアに入った途端確保される危険はあるぜ。バレる前に次の依頼で活躍してセゴニア王家に恩を売るしかねぇな、そんで自由を確保するのを褒美の1つにしてもらう」
「うん…、そうだね」
「オイオイ、王家に恩が売れる様な依頼ってまさか…」
「まぁ…バレリオなら言っても平気だろ。一応秘密で頼むぜ、あんたの予想で合ってるよ、
「はぁ~、そりゃ賢者って事も秘密にしておけねぇな。魔法使いが居るのと居ないとじゃあ死人の数がかなり違ってくるだろうか「なんですってぇぇ!?」
いきなりビビアナの大きな声と共に、2階で乱暴にドアを開ける音がした。
その後、ダッシュで階段を降りて来る足音がしたかと思ったら、これまた乱暴に食堂のドアがビビアナによって開けられた。
「バレリオ…もちろん黙っててくれるのよね!? じゃなきゃどんな手を使ってでも社会的に抹殺するわよ!?」
恐ろしい事を言いながらズカズカとバレリオに近付いて両肩を掴んでガクガクと揺さぶった。
バレリオの体格を一見細腕のビビアナが揺らせるのって実は凄い事なんじゃ…、流石
「お、落ち着け、俺は言うつもりは
バレリオは私を見てウィンクした。
「ふ、ふふふっ、わかったよ、それくらいならいつでもどうぞ。でもそれよりバレリオは料理上手って言ってたし、レシピを教えようか? そうすれば好きなのいつでも食べれるでしょ?」
「いやいや、それにゃあ先に正解の味を知ってなきゃならねぇだろ? ある程度食べ慣れてからじゃねぇとな! って事でいいか? ビビアナ」
未だ肩を掴んだままジトリとした目でバレリオを見ていたビビアナは、やっと納得した様に小さくため息を吐いて手を離した。
「ふふふ、それじゃあ数日ウチに通って料理の味見してみる? 作りながらレシピも教えるよ、セゴニアに行くために料理を作り溜めして持って行くから沢山作らなきゃいけないの」
「そりゃ良いな! 手伝いは任せとけ」
言質がとれ、思わずニヤリと笑みが溢れる。
私は料理の出来る助手をゲットした!
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