第165話 おもてなし
「ただいま、今日はバレリオもウチで食事するんだって? そこで会ったから連れて来た」
「おかえりなさい、買い物手伝って貰ったお礼に誘ったの。バレリオいらっしゃい、2人共食事は出来てるから食堂に来てね」
「邪魔するぜ。近くまで来たらスゲェ良い匂いしてたからどこの家かと思ってたけどよ、アイルの料理だったんだな、楽しみだぜ! あ、コレ手土産の酒な」
そう言って冒険者が好んで飲むウィスキーを手渡してきた。
「わぁ、ありがとう! そんな気を使わなくて良かったのに」
「ははは、遠慮無く食う為だから気にすんな、俺はよく食うぜ?」
「沢山作ったからお腹いっぱいになるまで食べてってね! こっちだよ」
ウィスキーを受け取ると食堂へと案内した、3人は既に席に着いていてバレリオを歓迎した。
そして私は1番の壁であるホセをチラチラ見ながらお伺いを立てる。
「バレリオからウィスキーを貰ったの、折角だから私も飲んで良いよね? 2杯までにするから…」
「折角だもん、アイルも一緒に飲みたいよね」
「流石にホセでもコレでダメなんて意地悪は言わないんじゃないかしら?」
「……いいんじゃね?」
ちょっぴりホセが呆れた目をしている様な気がするけど、私は表には出さずに内心ガッツポーズした。
「そういや嬢ちゃんが酒を飲んでるところをあんまり見た事無かったけどよ、結構好きなのか?」
「アイルは酒癖が悪ぃから外じゃ飲ませられねぇんだよ、3杯以上飲んだら次の日全然覚えてねぇクセに色々やらかすからな」
ジロリとホセに睨まれて思わずサッと目を逸らす。
「はっはっは、冒険者にゃ酒癖の悪い奴なんざゴロゴロしてるから俺は気にしねぇよ。自分で作ってるし暴れて酒や料理をダメにしちまったりはしねぇだろ?」
「まぁ…、確かにそれはねぇな」
「なら問題ねぇよ! さぁ、早く食わせてくれ、さっきから美味そうな匂いに腹が準備万端なんだ」
そう言った途端にバレリオのお腹が豪快に鳴った、照れ臭そうに笑って頭を掻くバレリオを席に座らせると厨房からどんどん運び込む。
いつもはストレージに入れて一気に持って来るけど、バレリオが居るので今日は自分で運んでいる。
キャベツがトロトロに煮込まれたロールキャベツを見てバレリオがゴクリと唾を飲み込んだ。
「こっちは中が少し硬めのお肉で、こっちは柔らかい方ね、両方試してみて好きな方食べてね」
普段洋食の時はワンプレートにプラスαな事が多いけど、今日は大皿から好きなだけ取るパターンにした。
全ての食事をテーブルに並べてお酒を注いだらリカルドの乾杯の音頭で食事開始。
「美味ぇ! 俺なんかより全然美味ぇよ、嬢ちゃんは料理上手なんだな! お前らが羨ましいぜ、家に帰ったらこんな美味い飯が待ってるなんてよぉ」
「えへへ、ありがと」
「それは常々思ってるさ、バレリオは今一人暮らしだったか? 仲間とは住まないのか?」
「ははっ、仲間と住んじまったら女を連れ込み辛…とと、ゲフンゲフン。色々と気ぃ使うからな、今は小さな一軒家を借りて住んでるぜ」
リカルドの質問に答えている途中で私を見て咳払いしつつ言い直した、やはりそれなりにモテてはいる様だ。
その後もバレリオは見ていて気持ちの良いくらい沢山食べた、私は2杯しか飲めないお酒を大事に飲みながらお肉が柔らかい方のロールキャベツを口にする。
「しっかし…、最初に見た時は何の冗談かと思ったが…。何かもうお前らが嬢ちゃんと一緒に居るのがしっくりくる様になっちまったなァ」
既にバレリオが持って来たお酒は無くなり、リビングのアルコールコレクションから数本持って来たので食堂は食事会から飲み会へと変わって行く。
まったりした空気の中、突然しみじみと赤くなった顔のバレリオが呟いた。
「ははっ、最初に会った時はまさかオレ達のパーティメンバーになるなんて思ってなかったからな。考えてみりゃあの時
「そうだね、しかも獣化してたからついて行ったけど、知らないお兄さんのホセだったらついて行かなかっただろうし…、偶然が重なって今があるんだよね。じゃなきゃ今頃ウルスカの何処かの食堂あたりで住み込みで働いていたかもしれないなぁ、あははっ」
「そいつぁ良いな! いや、嬢ちゃんの腕は勿体無いかもしれねぇけどよ、こんな美味い飯を出す食堂なら絶対通ってるぜ」
「ちょっとぉ、バレリオったらアイルを誑かす様な事言わないでよね。アイルは絶対手放さないんだから! アイルが冒険者辞めるって言ったらあたしも一緒に引退しちゃうかもしれないわ」
「うんうん、僕も同意見だね。アイルが居ると楽しいし美味しいし楽だもん。アイルの居ない頃にはもう戻れないって言うか、戻りたく無いね。だよねぇ、ホセ?」
私もだけど、皆も結構酔ってきてる様だ、声も段々大きくなってきてる。
ホセは私が酔っ払うのを警戒してかいつもより飲むペースが遅い気がするけど。
私のグラスは悲しい事に既に2杯目を飲み終わってしまい、氷しか残ってない。
「まぁな、あの時の大蜘蛛に感謝したいと思うくらいには…。素材として売っ払っちまったけどな、ははは」
あ、前言撤回、ホセも結構酔ってるみたいだ。
「なんだよ、そんなに嬢ちゃんが頑張ってんならもう1杯くらい飲んでも許されるだろぉ?」
立ち上がってフラフラと近付いて来たバレリオが私のグラスに結構なみなみとウィスキーを注いだ。
ホセは諦めた様に大きなため息を吐いた、コレは許可って事だよね!?
他の皆も飲んじゃえと言ってくれたので迷いなくグラスを傾けた、残りが半分くらいになったところまでは覚えてるんだけど…ね。
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