第164話 バレリオとお買い物

「そういや…また『希望エスペランサ』がウルスカを離れるって噂になってたが本当か? 最近遠征が多くねぇ?」



「うん、また国外に行く事になりそうなの、でもついでにコルバドまで行って美味しい物が無いか探しに行く約束してるんだ~」



「ククッ、お前らよく食うからなぁ。この前の赤鎧も美味かったし、良いモン見つけたら金は出すから俺の分も買って来てくれや」



「私は皆と違ってそんなに食べてないよ!? 量より質を重視してるからね! 美味しい食材があれば買って来るよ、バレリオが料理する人なら調味料も買って来るけど」



「料理か? 結構上手いぜ? 仲間にも評判良いしな」



「えぇ!? 料理出来るの!? 意外!!」



「ははは、ひでぇな、長年冒険者やってりゃどうしても飯を作らなきゃなんねぇ時もあるからな。仲間内じゃあ俺が1番美味い飯を作れるから自然と回数も増えて腕が上がったのさ」



「へぇ、じゃあ才能があったんだね」



 あのナンパ少年から離れた後、一緒に買い物をして今はバレリオと2人で食堂に居る。

 バレリオは厳つい見た目に反して女子供に対してはとても紳士だ、話をしていても楽しいし、それなりにモテるだろうと思っていたらバツイチだった。



 若い頃に助けた人に一目惚れして結婚までしたが、冒険者の仕事が忙しくてあまり帰れなかったら「あなたは私より仲間と居る方が楽しいのね」と出て行ってしまったそうだ。

 この離婚パターンは冒険者あるあるらしい。



 結局子供が出来る前に別れてしまったので、家族の反対を押し切って冒険者になった事もあり、仲間だけが家族だと言う。

 しかし、ハッキリとは言ってないが同じ村出身の冒険者が居て家族の安否はその人を通じてお互い確認している様だ。

 今まで気は良いがどちらかと言うと荒くれ冒険者の部類だと思っていたのに今日で見る目が変わった。



 時々店内に入って来た客が心配そうにこちらをチラチラ見て、楽しそうにしている私達を見て安堵の表情を浮かべるという事があった。

 もしかしてお嬢さんスタイルのせいでバレリオに無理矢理付き合わされてると心配されてたのかもしれない。



 30代後半のバレリオとなら親子に見られるかもと思ったけど、あまりにも似てないからそういう発想にはならない様だ。

 食事はバレリオが奢ってくれた、「嬢ちゃんに出させるような情け無い稼ぎじゃねぇから安心しな」と、とても男前な言葉と共に。



 その後も一緒に市場をブラついて美味しそうなキャベツが目に入ったので今夜はロールキャベツにしようとミンチとベーコンも買い込んだ。

 いつもの調子で買ってしまったが、バレリオは余裕気に片手で全ての荷物を持ったまま反対の腕で私の事をエスコートして家まで送ってくれた。



 お礼に夕食に誘って3時間後にまた訪ねて来る事になった。

 家に入るとリカルドは出掛けていたが、3人はリビングで寛いでいたのでバレリオを夕食に誘った事を伝えると喜ばれた、どうやら皆ウルスカで冒険者を始めた頃にバレリオにはお世話になった様だ。



 3人共昼食は屋台の物を買って来て食べたらしい、厨房に入ると朝準備した物も綺麗に食べられていた。

 私は満足気にムフンと鼻息を漏らし食器を片付けてロールキャベツ作りに掛る。



 キャベツは芯をくり抜き丸ごと茹でる、一般家庭の数なら水道の水流を利用して使う分だけ1枚ずつ剥くが、このホームではそんなヌルい数では無いので3玉を水が沸騰したらドボン。

 冬キャベツはキュッと巻いてるから無理だけど、春キャベツはふんわりだから出来る技よね。



 赤鎧用に買った鍋が大活躍だ、その間にタネを作る、ミンチに塩胡椒とナツメグ、卵と牛乳でパン粉の代わりに湿気らせたおからも入れてコネコネ、最後に人参と玉葱の微塵切りを加えてコネコネ。

 お肉は柔らかい方が良い派の為にタネを分けて氷水を数回に分けて足しながらコネコネ。



 タネが出来たタイミングでいい感じにキャベツが茹だったので優しく分離して1枚ずつ塩胡椒してタネを巻く。

 巻終わりを下にして鍋に並べでコンソメスープを流し込み、ベーコンを投入して煮込めば本日の主菜の完成!



 副菜は何にしよう、定番はポテトサラダかな…茹で卵のざく切りゴロゴロのやつにしよう。

 コンソメとマヨの味だから後は甘辛系…金平牛蒡ならお酒のおつまみにもなるし良いかな。



 ジャガイモに一周切れ目を入れて水を張った鍋に放り込んで茹でていたら、段々ロールキャベツの良い匂いが漂い始めたせいで3人が顔を出した。

 折角なのでビビアナにはマヨネーズを只管混ぜてもらい、ホセには茹だったジャガイモを布越しに皮をギュッとすると切れ目からツルンと剥けるのでそれをマッシュする係。



 エリアスにはささがき牛蒡をお願いして私は人参の千切り。

 ビビアナに包丁は持たせられないけど、マヨネーズに関しては完全に任せて大丈夫になったのは嬉しい。

 無事に副菜も作り終わり、お手伝いのご褒美として火の通りを確認ついでにロールキャベツを味見していたらバレリオと一緒にリカルドが帰って来た。

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