第150話 ホセと喧嘩
「お前、酒臭ぇぞ。最初エリアスかと思ったけど、ビビアナとアイルも昨夜飲んだな…? あ~ぁ、オレだけ飲み損ねたのか~オレも飲みたかったな~」
翌朝、宿屋を出てリカルドを迎えに行く為に馬に乗ったらホセが嫌味ったらしく言ってきた。
ホセと飲んだら高確率で迷惑掛けてお説教コースなんだもん、別の部屋だから迷惑掛からないと思って飲んだ訳だし。
「じゃあ次の宿屋で飲めばいいじゃない。次はリカルドも居るし3人部屋2つとるでしょ? そうしたらテディは私とビビアナの部屋だろうから気にせず飲めるじゃない」
「3人部屋は大きい街ならともかく、村や町ならあってもひと部屋だぞ」
「じゃあ私がテディと一緒に寝るよ、それなら2人部屋で大丈夫でしょ?」
「まぁな。………居場所を取って代わられてんのオレの方じゃねぇか(ボソ)」
「ん? 何か言った?」
「いぃや、何も言ってねぇ」
お酒を飲み損なった事を拗ねているのかムッツリとしているホセ、不機嫌になりたいのはこっちだって言うのに。
お腹のロープを隠す為にリカルドが私を溺愛している説(そこまでは言ってない)が領内に蔓延しているという事をプリプリ怒って文句を言いながら移動した。
「わかったわかった、悪かったって、ほらもう着いたから口閉じろ」
明らかに面倒になって適当に答えるホセ、宿屋からリカルドの実家までの距離は短いので文句を言い足りないが口を閉じた。
庭先では出発準備を終えたリカルドが家族と別れを惜しんでいる。
私達が門に近付くと気配を感じたのか、リカルドが最初に振り返った。
「おはよう皆」
「「「「「おはよう」」」」ございます」
リカルドと挨拶を交わした後は、皆下馬してご家族にも挨拶をした。
するとリカルドのお母さんがススッと近付いて来て微笑みながらそっと私の手を握った。
「アイルさん、町の噂に驚いたんじゃないかしら? わたくしとしては噂が本当になるのは大歓迎なのよ? アイルさんがリカルドと結婚して私達の家族になってくれるのなら冒険者を続けていても「母上!」
うんざりした顔でリカルドがお母さんを呼んだ、もしかして家にいる間結婚プッシュされていたんだろうか。
貴族としてはちょっと結婚適齢期過ぎてるもんね、男でも大体20代前半には結婚するのが普通らしいし。
「あらあら、もっとお話ししたかったのに残念だわ。さっきの事は本気だからいつでも報告待ってるわね」
そう言ってパチンと綺麗なウィンクをするとリカルドの元へ向かい、頬にキスをした。
「リカルド、身体に気を付けるのよ? 嬉しい報告ならいつでも大歓迎ですからね、報告待ってるわ」
「…………とりあえず定期的に手紙は書きます。母上も身体に気を付けて、何か困った事があれば報せて下さい。皆も元気で」
ヒラリと馬に乗ると笑顔を見せて馬を走らせた、私達も会釈をして後に続く。
領地を出る前にバウムクーヘンを2本買って港町を目指した。
途中のお昼休憩では屋台で買ったトルティーヤっぽいものに自前のマヨネーズを追加して食べ、暫く食休み。
「あ、やっぱりアイルさんは成人してたんですね」
昨夜私達3人だけでお酒を飲んでいた事をホセがリカルドにバラした時にテディが言った。
「あれ? 驚かないの? 大抵の人は驚くんだけどね」
エリアスがテディが驚かない事に驚いていた、テディはきっと見る目があるだけでおかしい事じゃないもん。
そう思ったが、次に続いた言葉で固まってしまった。
「その…、お風呂に入れて貰った時に…見たので…」
そう言って口籠もるテディ、私はこの瞬間にやっと10歳相当の精神年齢だとしっかり認識した。
獣人はあけすけだと教わったけど、やっぱり意識し始めは違うのだろうか。
「ははっ、だったら余計に成人だって聞いて驚きそうなもんだけどなぁ?」
「ちゃんと成長し続けてるもん!」
ホセの言葉にキッと睨み付けて二の腕に拳をビシビシと叩き込んだが微動だにしない、くそぅ。
「母さんと同じくらい…ちゃんと大人でしたよ?」
私が普段から貧乳ネタで弄られてる事を知らないテディはキョトンとして首を傾げた。
その言葉にホセは一瞬瞠目したが、すぐに何かに気付いた様な声を漏らした。
「あぁ…、そっか、奴隷だったから栄養が…」
そんなに…そんっなに私を貧乳扱いしたいのか!?
栄養不足で成長不良だった人と同じだと…、どうして普通に成長してるっていう発想が出ないワケ!?
ビビアナと比べたら小さいけど、それはビビアナが巨乳(アイル調べで推定Hカップ)なだけで私だって既にDカップに到達しそうだし!!
1人で納得して頷いているホセを怒気を孕んで睨みつける私に気付いたエリアスとリカルドは顔色を悪くしている。
ビビアナは微笑んでいるが、あの顔はホセが痛い目みても自業自得だと思っているのだろう。
「いいもん、恋人が出来たらもっと育つもん。ホセみたいに胸に拘ったりしない心の広い人と付き合うもんね!」
「ハァ!? 別にオレは胸に拘ったりしてねぇよ!」
「拘ってるじゃない! いっつもいっつもバカにしてさ!」
グギギギギ、と睨み合っていたらテディはオロオロしていたが、エリアスが笑いながらズバリと言った。
「拘ってるよね、胸にって言うか、アイルの胸に。成長を楽しみにしてるの? なんてね、あははは」
「ククッ、確かに娼館で…っと」
リカルドが口を滑らせ自分の口を片手で押さえた。
きっと買っている娼婦の胸の大きさがバラバラだと言いたかったのだろう。
「う~ん…、楽しみにって言うか、確かにちゃんと育つかは心配してるかもな」
「ホセには関係無いでしょ! 心配される筋合いも無い!! もうヤダ!! リカルド、ここからはリカルドの馬に乗せて!」
「あ、ああ…」
「ケッ、勝手にしろ!」
「勝手にしますぅ〜!」
「「ふんっ!」」
私の勢いに押されてリカルドが承諾したので、港町の宿屋までホセとは口をきかずにリカルドの馬で移動した。
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