第143話 獣人の年齢
下山しながら狩り…ではなく、魔物討伐や採取をしつつ、テディの事を色々聞かせてもらった。
母親は熊獣人だったが父親は狐の獣人だったとか(獣人は母親の種族を受け継ぎ、母親が人族の場合は半々で獣人が産まれるとエリアスが教えてくれた)父親は話を聞く限り過労で、母親は事故で亡くなったらしい。
テディ本人はなんと5歳だった、ホセが言うには獣人は子供の成長が早いらしい。
だからホセもビビアナが成人したと同時に13歳で冒険者ギルドに本登録をし、稼いだ分を孤児院に寄付していたとか。
そっか~、5歳なら私がお風呂に入れてあげても大丈夫かな、まだ園児の年齢って事だもんね。
宿屋に到着したらお風呂に入れてあげないと、お風呂に普段入れないのかちょっと臭ってるし。
途中で人に見られない様にテディには魔導具だと言って隠蔽魔法を付与した薄布を被って貰っている。
いきなり宿屋に子供を連れて行ったらあの元主人にバレちゃう可能性があるもんね。
馬車ではテディを私の隣に座らせて(隠蔽魔法のせいで私にしか場所が感知できないし)移動した、他の乗客は少なかったけど、途中でテディのお腹がグーグー鳴ったせいで私がお腹空かせてると思って30歳手前くらいの5人組のお兄様方にクスクスと笑われてしまった。
こんな事なら先に食事してから馬車に乗れば良かった…、でもコレを逃すと混み合う時間帯に突入するらしいので仕方なかったのだ。
勘違いとはいえ、私のお腹が鳴っていると思われているのがわかって顔が赤くなってしまったから、余計に私が犯人だと思われたのだろう。
実際お昼の時間は過ぎているから少しお腹は空いている、ギルドに向かう前に宿屋に戻ってテディを綺麗にしたら昼食を食べよう。
馬車は王都の門を潜って門前広場で止まった、私達と入れ替わりに数日掛けて探索するのであろう荷物を持った冒険者達が乗り込んで行った。
「じゃあ先に宿屋へ行って部屋で食事しようよ、2人部屋が空いてたら私とビビアナが移るって事にしていい?」
「わかった」
私が提案すると、理由を察したのかリカルドは快く了承してくれた、大部屋は妙に隙が無さそうなエンリケが居るから隠蔽魔法使っててもテディの事を勘づかれそうだもんね。
テディが迷子にならない様に手を繋いで宿屋まで戻った、幸い部屋も空いていたのでテディと一緒に部屋に向かう。
お昼はBLTサンドの予定だったので3人分手渡し、ビビアナにも先に食べて貰ってテディは備え付けの風呂場に直行させた。
こっちはお風呂と言ってもシャワールーム的な感じだ、やはり賢者サブローが住んだ国とは大陸が違うから浴槽があまり普及しなかったのだろうか。
テディの頭は2回洗った、1回目は殆ど泡立たなかったのだ。
如何に汚れていたのかがわかるというもの、心を鬼にして食事よりお風呂を優先して良かった。
ちなみにシャワーはホースの無い固定式なのでびしょ濡れになる為私も一緒に入ったのだが、テディは凄く照れ屋さんの様で真っ赤になりながら蹲って両手で目を覆っていた。
私は弟が小2になるまで一緒に入っていたので全く抵抗が無い、しかしテディは身体を洗ってあげようとしたけど背中以外は拒否してきた。
奴隷仲間と水浴びはしていたけど、人に洗って貰った経験は母親以外無いと言っていたので他人に洗ってもらうのは抵抗があったのだろう。
サッパリしたが、次の問題は着替えだ。
仕方がないのでサイズが1番近い私のワンピースタイプのパジャマを着てもらった、食後にそのまま寝れるし。
先にスープを飲んで貰ったが、あまりにもガッついていたので最初から固形物を出さなくて正解だった。
スープで少し落ち着いた頃によく噛んで食べる様に言い含めてBLTサンドを出したらこんなに美味しいものを食べるのも、親切にされたのも初めてと言って泣き出した。
一体どんな劣悪な環境にいたんだろう、食べている最中にテディはデザートの前に眠ってしまった、気が緩んだのだろう。
ベッドに寝かしつけて私も自分の食事をしていたらノックと共にホセが入って来た。
「コラッ、返事の前に開けないの!」
「悪りぃ悪りぃ、あれ? テディは寝ちまったのか……って、アイル、まさか一緒に入ったのか?」
ビビアナに注意されたが悪いと思ってない謝り方をしつつ部屋に入ってくると、髪が濡れたままの私とテディを見比べてホセが言った。
「うん、だってまだ5歳なら1人でちゃんと身体とか洗えないでしょ?」
何を当たり前な事を聞くのかと首を傾げると、ホセは大きなため息を吐いた。
「はぁぁぁ~……、あのなぁ、獣人は中身と見た目年齢が同じだと思え。人族の実年齢で考えてたんだろうけど、それは違うからな。それにテディは碌な食事して無さそうだから精神年齢は人族でいう10歳くらいだと思うぞ」
「え…っ!?」
10歳!? それが本当なら恥ずかしがるはずだよ!! 早く言って欲しかった、寧ろ何で教えてくれなかったのビビアナ!
ギギギと錆びついたブリキの人形の様な動きでビビアナを見ると、ビビアナは肩を竦めた。
「ごめんなさいね、あたしも知らなかったわ。だってホセは見た目年齢はともかく、実年齢と精神年齢が同じだったもの」
「バ…ッ、あ、あれは敢えてチビ達に合わせてただけだ!」
「「ふぅ~ん…」」
反論したホセだが、私とビビアナの全く信じて無い視線を向けられたじろいだ。
「そ、そんなこたぁどうでも良いんだよ! それよりここはビビアナに任せて食い終わったらギルドに行くからな、オレたちの部屋に来いよ」
そう言って逃げる様に私達の部屋を出て行ったので、食事を済ませて隠蔽魔法を掛けた布とお風呂前に脱いだ服に洗浄魔法を掛けてから大部屋へと向かった。
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