第70話 エルフの成長速度
リビングでお茶を飲んでひと休みした後、私達は各自部屋へと案内された。
メイドさんが1人ずつ付いてくれて、この屋敷に一体何人居るんだろうと思ったり。
3階建てで屋根裏部屋もありそうだし、ザッと個室だけ軽く見積もって40部屋はある。
案内されたのは横並びの1人部屋だったんだけど、20畳くらいありそう。
ウルスカの家は10畳くらいだけど、それでも広くて喜んだのに、いくつもある1人部屋でこの広さとは…流石豪邸。
夕食までの間にお風呂にも入らせてもらった、客専用の浴室があってビビアナと2人で入ったんだけど、広さ的には5人同時に入れそうなくらい。
夕食の時間になり呼ばれて食堂へ向かうと本格的なコース料理らしくお皿の左右にカトラリーが並べられていた。
一応こんな豪邸での食事だからとウルスカ出発前に買ったちょっと良い服にしたけど正解だったみたい。
席に着こうとしたらホセが不安そうにソワソワしていた。
「どうしたの?」
「いや…、こんな畏まった食事なんて初めてだからよ、マナーなんて知らねぇし」
「私も習った事は無いけど、とりあえずカトラリーは外側から順番に使って、音立てたりガツガツ食べなきゃ大丈夫じゃない? あと持つところの無い水の入った器が出されたら指先が汚れた時に洗う用だから飲んじゃダメよ? あとは迷ったらガブリエル達の真似すればいいでしょ」
「わかった…」
友人の結婚式に出席する為に軽く勉強した事はあるけどウロ覚えだ、椅子のどっち側から座るとかもあった気もするけどもう覚えて無い。
私とビビアナには給仕係だろうか、20代の男性が椅子を引いてくれた。
「ありがとう」
お礼を言ったら軽く目が見開かれた、何で驚くのかと思ったらビビアナはされて当然と言わんばかりに椅子を引いてくれた男性の方を見もしなかった、どうやらそれが普通らしい。
ホセと違ってビビアナは駆け出しの頃デートで色んなお店に連れて行って貰って食費を浮かせていたと聞いた事がある、だからこういう時の振る舞いには慣れているのだろう。
「お待たせ、お腹が空いたでしょ? さっそく食事にしようか」
食事をしながらラファエルは私達とガブリエルの関係を根掘り葉掘り聞いてきた。
知り合った切っ掛けに始まり、私の出自や魔法に関する事はボカして上手く説明出来たと思う。
「へぇ、じゃあ知り合ってからそんなに時間は経ってないんだね」
「そうだな、ガブリエルの事もエルフで王立研究所の支所長で治癒魔法の適正は無いって事くらいしか知らないな。こんな立派な屋敷を持ってる事も今日初めて知ったくらいだ」
「アイルもそうなの?」
「そうだよ。あ、リカルド、あと年齢が218歳だってギルマスが教えてくれたじゃない」
「はは、そう言えばそうだな。ところでラファエルは何歳なんだ?」
「ふふふ、エルフは生殖機能が確立されると成長が一気に緩やかになるから、個人差がある分見た目じゃわからないよね」
「兄さん! ……確か今年で80歳になった…はず」
知らなかった、全員同じ様にゆっくり成長するんじゃないのか。
だけど確かに何年も赤ん坊のままだと親は大変だもんね、エルフの謎がまた1つ解けた。
80歳でこの見た目なら結構早く身体が成長したんだなとかバレちゃった事が恥ずかしいのか、ラファエルは顔を赤くしてガブリエルに怒った。
「やっぱエルフはスゲェな、アイルの年齢聞いた時も驚いたけど、それ以上だな」
「アイルの年齢?」
ラファエルが不思議そうに首を傾げた。
「うふふ、アイルはもう成人してるのよ。15歳だもの」
「ッ!?」
給仕係やメイドを含め、私の年齢を知らなかった人達が一斉に私を見た。
「小柄なのも童顔も民族的なものだもん、童顔な民族の中でも童顔だとは言われるけどさ…」
ブチブチと言い訳しながら果実水に口を付けた、食前酒のスパークリングワイン以降は私だけ果実水にされてしまった、他の人は全員お酒を飲んでるのに。
ガブリエルは良いじゃないかと言ってくれたが、パーティメンバー全員が真顔で止めたので引き下がってしまったのだ。
出された夕食は全て凄く美味しかった、久々の魚料理も食べられたし、しかも魚料理と肉料理の間にソルベを挟む本格フルコースだった、料理はなんとなくドイツっぽかったけど。
そしてホセだけじゃなく、エリアスもガブリエルやラファエルをチラチラ見ながら食べていたのでコース料理には慣れてない様だった。
リカルドは前から食べ方が皆より綺麗だとは思っていたけど、マナーは完璧なのはやはりモテ男だから女の子を口説く時にお高いレストランとかに連れて行ってたからなんだろうか。
エリアスはレストランよりカフェやバーでデートするイメージ、勝手な想像だけど。
ちなみにホセは酒場で視線を絡ませ合った人とワンナイトラブが多そう。
何というか、ウチのパーティメンバーがバカップルになってるところが想像出来ない。
食後はリビングでお茶を頂きながら王都滞在中の相談をした、とりあえずガブリエルが王城の敷地内にある研究所に顔を出して報告しないと目処が立たないという事なので私達は自由行動という事になった。
もしガブリエルが研究所に通い詰めるならその間に港町まで遊びに行っちゃあダメかなぁ、馬なら往復3日で移動出来るらしいし。
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