第35話 トレラーガ大市にて
「あ、お帰りなさい」
ギルドで
「何か良い事あったんですか?」
首を傾げて尋ねると、何故か私の両手をギュッと握った。
「アイルさんのお陰です! エドガルドさんがアイルさんにしっかり休んでもらいたいからと宿泊中の部屋のベッドを最高級品に取り替えてくれたんです! しかもベッドはそのまま宿で使って良いっておっしゃって…」
ホクホク、という表現がぴったりの笑顔で説明してくれた。
今後高級ベッドの部屋は他の部屋より高い値段で貸すんだろうなぁ。
「スゲェなアイル、もう貢がせてんのか」
「意外に魔性の女なんだね」
「昨日出会ってベッドを貢がせるなんてあたしでも無いわよ? やるわね…」
「最高級品なんて全部受注してから作るはずだろう、どうやってこの短時間で準備したんだか」
「あ、それはご自分のお屋敷から持ち込んだらしいですよ? 使ってない客間のベッドだとか…、シーツも凄く良い手触りでした!」
部屋に戻ってベッドを見ると素人目にも明らかに材質が違うとわかる、全員に洗浄魔法を掛けると皆でベッドに倒れ込んだ。
ヤバい、高反発のマットレスみたいな寝心地で今朝までのゴワゴワした感じが一切無いから疲れてる今なら目を閉じたら10秒で寝られそう。
まぁ、横に寝転んでるホセの尻尾がワッサワッサとぶつかってくるから本当には寝ないけどね。
こうして快適な睡眠を手に入れた『
「ふっふっふ、大市で使う軍資金はバッチリ稼いだし、買い物するわよ~!」
やはり買い物に燃えるのはいつでもどこでも女性なのだろうか、朝食を済ませたビビアナの気合いが凄い。
かく言う私もソワソワしちゃってるんだけれど。
「ホセ! 荷物持ち頼んだわよ!」
「へいへい」
「私がストレージに入れるよ?」
げんなりとしてホセが答えていたので声を掛けると両側からリカルドとエリアスに肩を掴まれた。
「やめておけ、ビビアナに付き合ったら自分の買い物が何も出来なくなるぞ」
「そうそう、ここは慣れてるホセに任せて僕達は3人で回ろうね」
「う、うん…」
リカルドは真顔で、エリアスは笑顔だけど有無を言わせない雰囲気だったので素直に頷いておいた。
「それじゃあ昼食は各自で、夕食の時間に宿で合流って事でいいな?」
リカルドの言葉に皆が頷き解散となり、私達3人はまずはぐるっと見て回る事にした。
大通りと広場にはどこから人が湧き出てきたんだと言いたくなる程の人が居た。
「はぐれたらアイルを見つけるの大変そうだね、はぐれたらお昼にいつもの屋台通りにあるテーブル辺りで落ち合おうか」
「そうだな、はぐれたとしてもアイルなら誘拐や暴漢に会っても返り討ちにするだろうし」
「まぁね、1人行動は慣れてるから問題無いよ」
元々買い物や映画なんかも1人で行く事が多かったから何の問題も無い、そんな風に思っていた時もありました。
どうしよう、コレはどう収拾つければいいんだろうか。
「彼女に用があるならここで話せば良いだろう、うら若き乙女を騎士達で囲む必要は無いのでは?」
「お前には関係ないだろう、たかが商会の会頭が私に逆らうというのか」
リカルド達とあっさりはぐれてしまい、お取り潰しになった家から売りに出されたという魔導具を売っている店を覗いていたら騎士団の小隊長に声を掛けられたのだ。
投げナイフを回収してあるから返すついでに少し話しがしたいとの事。
多分何故暗器なんて使っているのか聞きたいんだと思う。
投げナイフは要らないし話す事は無いと突っぱねたら腕を掴まれ、そしたらすぐにエドガルドが現れて(たぶん尾けてた)止めてくれて今に至る。
小隊長の後ろに3人の騎士が居る、あまり騒ぎを大きくしたくないし困ったなぁ。
「はぁ…、じゃあエドガルドが証人としてついて来て。あなたに何かあったら
「私も一緒に…!? ま、まぁそれならば…」
面倒事に巻き込まれているというのにエドガルドは嬉しそうにニマニマしながら了承した。
「明日にはトレラーガを離れるから大市を楽しみたいの、だからお昼までに話しを終わらせてね」
「ふっ、素直に話してくれればな」
少々面倒くさい事になりそうな予感…、適当に誤魔化すけど。
連れて行かれたのは私達が泊まっている宿よりうんと高級感溢れる宿だった。
あ、宿といえば一応エドガルドにお礼を言っておかなきゃ。
「エドガルド、宿屋のベッド、ありがとね」
「どういたしまして、アイルにはゆっくり
騎士達が宿泊している部屋に通されながら、エドガルドは私に仕えたいとか言ってるけど呼び捨てでタメ
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