第33話 悪魔との遭遇
冒険者は舐められたら終わりってよく小説でも書いてあったし、関係無い人に嘲りの目を向けられるのはムカつく、加奈子を思い出してしまうせいだ。
掌に隠したミスリルの棒手裏剣に魔力を通して4人組の女冒険者の隙間を縫う様に壁に向かって投げた。
タンッと乾いた音を立てて棒手裏剣が壁に突き刺さり、女冒険者を始め、辺りがシンと鎮まり返る。
態とゆったりと女冒険者達に向かって歩きながら話しかけた。
「陰口なら聞こえない様に言うべきね、文句ならコソコソしないでハッキリ本人に言うべきじゃない? 実力が無ければBランクパーティに入ったりしないのよ? これは警告、次は壁なんかじゃなく身体に穴が空く事になるからね?」
青褪めた女冒険者達にズイっと近付き棒手裏剣を壁から引き抜く、正確には引き抜こうとしたら意外に深く刺さってて力じゃ抜けなかったので魔力操作で棒手裏剣を動かして抜いたんだけど。
危なかった、もし投げナイフの方を使っていたら多少のコントロールは出来ても引き抜く様な力強い操作は出来ないからホセにでもお願いして抜いて貰わなきゃいけないところだった。
最初は女冒険者の周辺だけが静かになっていたけど、いつの間にかギルド内全体が静かになって私達に注目していたらしい。
逃げ出したい衝動を抑えてゆっくり仲間の元に戻ると、よくやったと言わんばかりの笑顔で迎えてくれた。
「これでここでもやり易くなったんじゃないか? 今の時間は人も多いし、アイルの見た目に騙されて侮る奴もかなり減っただろう」
リカルドはそう言いながら私の頭を撫でた、今さっき凄く格好つけたのに頭撫でられたら台無しだと思うのは私だけなんだろうか。
「受ける依頼は決まったの?」
「ああ、前に来た時は持ち帰りを考えて受けられなかった
「了解」
リカルドがカウンターで手続きをして山側の冒険者専用門から山へと向かった。
徒歩で40分程、専用の馬車も出ているらしいが乗り心地が最悪らしいのでお尻の安全の為にも徒歩で移動する事にした。
「ギルドの受付で聞いたんだが、今騎士団も山に入っているらしい。宿は俺達と違って高級宿だし冒険者登録している訳じゃ無いからギルドで会う事も無いが、もしかしたら山で会うかもしれないから揉め事を起こさない様に気をつけるよう言われたよ」
「珍しい…、どうして騎士団なんかが来てるんだろうね?」
「大きな市が開かれると言っていただろう、交易都市ならではの珍しい品が入るから毎年態々王都から来ているらしい」
「騎士って事は偉そうなお貴族様なんだろ? 出来るだけ関わらない様にしようぜ、難癖つけられちゃたまんねぇからよ」
「実力があればまだ許せるけど、実力も無いのに身分だけで偉そうな坊やと関わるのはゴメンよ」
本物の騎士って見た事無いからちょっと見てみたいとは言えない雰囲気だ、もしかしたらいつか王都に行く事があるかもしれないし、楽しみはとっておこう。
それにしても今から行く山は標高自体は高くないけど凄く大きい、山脈という程の規模では無いけど。
山に入ると所々木にペイントがしてあった、どうやらランクによってこれ以上進んじゃいけないって目安になっているらしい。
探索魔法で見つけた大猪を目指して山を登って行くが、1週間馬車移動だったせいか鈍ってる気がする。
「このまま真っ直ぐ進むと戦闘中の10人くらいの集団とぶつかるけど、このまま進む? それとも避けて進む?」
大体半分くらい進んだ所で再び探索魔法を使って周囲の状況を確認したが、10人というのは冒険者の集団にしては人数が多い気がするので騎士団の可能性がある。
「10人か…、騎士団の小隊かもしれないから避けて行こう」
リカルドの判断に皆はホッとした表情を浮かべた、よっぽど騎士に関わりたくないんだね。
騎士はともかく私としては魔物の方が問題だった。
「あの場所から動かないならこっちの方が近いかな、何か虫っぽい魔物みたいだから近付きたくない…、動き速そうだし」
アレっぽいから正直怖い、アレですよアレ、黒い悪魔。
私は基本的に虫が苦手だ、正確にはいつ間にか苦手になっていた、子供の頃は平気だったのに。
いけない、こんな事考えてフラグになったらシャレにならないから無心になろう。
500m程先に件の集団が居るので迂回して大猪の元へ向かった、途中で薬草や
急いで探索魔法を使うとこちらへ向かって来る魔物が1体、考えたくは無いが明らかにさっきの集団が居た方向から向かって来ている。
私の様子がおかしい事に最初に気付いたのはホセだった、探索魔法を使った後に顔色を変えて一方向を見ていたせいだ。
「おい、アイ「ヒッ、いやぁぁぁぁぁッ 『
まさかと思ったけど見てしまった、遠目でもわかるあり得ないサイズの黒い悪魔の姿を。
その姿を目にした瞬間、真っ白になった頭を掠めたのは
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます