第23話 盗賊
「おはよう! 朝食の準備出来てるよ」
着替えてるかもしれないから男性用テントをボスボスと叩いて声を掛けた、今まではリカルドとエリアス、ホセとビビアナに分かれていたが、私が入った事によって男3人でも寝られるサイズの物を購入した。
今回みたいに人目があったら出来ないけど、パーティメンバーだけなら防御結界を展開すれば見張りしなくても夜は全員寝られるし。
「ほらほら、ビビアナも起きて~」
何故私だけこんなに元気なのかと言うと、見張りの順番が最後だったから早寝早起きで頭もスッキリしているから。
既に明るいから焚き火も必要ないのでシートの上にローテーブルをストレージから出して朝食を並べて準備万端だ。
「そういえばドロテオに一応話しておいたぞ、あいつらが馬車を止めてくれって言っても暫くは走らせるって言ってた」
皆揃って食事を始めた時にリカルドが言った、不確かだけどあの2人が盗賊の仲間かもしれないと話して対策を考えておいた方が良いと伝えて貰ったのだ。
「万が一の為に私とビビアナ入れ替わろうか?」
「だめよ、もし人質として捕まって口を塞がれたらどうするの。強引に馬車を止めさせる為にそういう手段に出ないとも限らないでしょ?」
「そうだね、ビビアナなら捕まっても対応出来るし、離れていればアイルがこっそり魔法使う事も可能でしょ?」
「そっか、それもそうだね…」
ビビアナとエリアスに論破されてしまった。
「今日はオレとエリアスが入れ替わろうぜ、もしも乗客を人質にとられてもオレの方が早く動けるからな。エリアスはドロテオの護衛を頼む」
「そうだね、そうしよう」
「あとはアイルとビビアナは御者が襲われない様に守ってやってくれ。特にビビアナは荷台から襲われる可能性もあるから気をつけるんだぞ、何かあればすぐに大声か合図で知らせる様に。出来るだけ戦わず通り抜ける様にしよう」
「わかったわ」
「うん」
こうして朝食会議が終わり、乗客も朝食を済ませてテントを片付け始めた。
私が朝食の片付けをしている間にパーティのテントも畳まれていたので皆の手際の良さが伺える。
「では出発しましょうか、今夜は宿で休めますからね」
ドロテオの言葉で乗客も馬車に乗り込んで出発した、常に探索魔法掛けておいた方がいいかな。
半径1キロだと広過ぎるか、高い所から矢を射られてもせいぜい100mくらいしか届かないだろうし300mにしておけば大丈夫でしょ。
「『
御者台に上がる前にコッソリ唱えて乗り込んだ、時々食材として確保したくなる魔物が探索に引っかかるけど街道から見えない所にいるからスルー。
1度トイレ休憩を挟んで再び馬車を走らせる、もうすぐ盗賊が出ると言われるエリアだから集中しないと。
「わぁ凄く大きい木…、樹齢何年なんだろう」
見た事無いけど屋久杉ってこんな感じかなぁとあまりの大きさに思わず呟いた、その直後後ろの馬車で何やら騒ぎ始めた。
それと同時に探索魔法で前方に20人程の武器を持った人達がいるのがわかった。
「どうしたんですかね?」
「どうやら誰かが用を足したいと騒いでいるみたいだ」
ドロテオが後ろの馬車を振り返って見ているとニヤリと笑ってエリアスが言った、私はまだ覚えてないけどビビアナが手信号で教えてくれたらしい。
「前方で待ち構えてるからこのまま暫く走らせた方が賢明ね」
「「えぇっ!?」」
私の言葉にドロテオとミゲルが驚きの声を上げた、顔色を失いながらも馬車を走らせるミゲルの肩に手を置いて安心させる様に微笑む。
「何の為に『
「そういう事。ミゲル、できるだけ道の真ん中を走って。飛び出して来たら跳ね飛ばすつもりで走らせていいからね。リカルド!」
エリアスが並走していたリカルドに手信号で警戒を呼びかける、そんな2人に気を取られている隙に速度を上げた馬車の走行音に紛れて呪文をひとつ。
「『
探索魔法で位置の捕捉は出来ているのでそろそろ弓を構える距離になった時に盗賊全員の足を地面に埋め込んだ。
これで矢を射てもポジショニングとか出来ないし踏ん張りがきかないはず。
同時に後ろの馬車が更に騒がしくなった、街道の左右に目を向ければ木の影にチラホラと人の姿が見えている。
きちんと隠れる前に足が埋まったのだろう、必死にもがいて足を動かそうとしている。
1本だけヒョロっと矢が飛んで来たけどリカルドが剣で斬り落とし、馬車は待ち伏せエリアを走り抜けた。
ちなみに盗賊一味の2人は乗客を人質にして馬車を止めようとしてビビアナと馬から馬車に飛び移ったホセに取り押さえられた。
獣人の身体能力が凄過ぎる…。
ちなみにホセの乗っていた馬はちゃんと馬車についてきたお利口さんだった。
次の休憩場所で2人を縛り上げ、夕方に到着した町の兵士に突き出した。
焦って乗客を人質にしようとしなければタイミング悪くトイレに行きたかった人のフリできたけど、その場合裏切ったと思われる危険があったのだろう。
この2人を切っ掛けに帰りには盗賊団が捕まってるといいねと夕食の時に話しながらその町の名物料理に舌鼓を打った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます