第7話 「なんて汚い奴」

ヤマグチとノエミはユウコを嘲笑うかのようにキャンパス内でラブラブな生活を送っていた。

あの一件から数か月、空気はすっかり冷たくなり季節も冬になっていた。

人肌恋しくなるこの季節を、元カレとそれと何の悪気もなく浮気をしていた友人がおでんのように熱々な様子を見るのは、冷えたユウコの心にはとても辛いものがあった。

ユウコは時間が経ったし早く忘れたいから、彼らのことはない存在として考えようとした。

しかし一時は忘れたつもりでいたその煮えたぎるような嫉妬心は、冷たい風と共に吹き返してきた。

それはいつまで経っても、例の2人はべたべたくっつき、冬と言う寒い季節と言うこともありヤマグチはノエミを気遣い風邪をひかないように上着やマフラーを共有したがった。

その様子を見てユウコの怒りはヒートアップするしかなかったのである。


そんな虚しい冬のキャンパスライフを過ごしていたある日のこと、ノエミが1人で寂しそうに昼食をとっているのを見た。

なぜ1人なのだろうと疑問だったが、答えはすぐに分かった。

「今日、ヤマグチ休みだってさ。インフルになったって。」

「なんで、そんなこと知っているのよ?」

「ああ。1週間休むってグルチャで言ってった。彼女のことは一切何も言わなかったけどな。」

「へぇ、それで1人な訳か。俺ら話しかけるか?」

「いいよ、どうせ避けられているし。」

そう、あれから数か月間ユウコたちはヤマグチやノエミに避けられている。

話しかけようとするとすぐにどこかへ行ってしまう。

最初はユウコに対して始まったが、やがてそれはユウコに対してのみではなくなった。

しかし、ユウコはノエミのことを許していないし許すつもりもないが、1人でいるのを見るとどうしようもなく良心が働きそうになってしまう。

まるで捨てられた子犬を見ているのかのような気持ちになる。

そんな気持ちを察してか、「もう行きましょう。」とリコが促した。


それにしても、ノエミはユウコ達以外に友人を作っていなかったことがすぐに分かる。

ヤマグチが休むと1人になるのはその証拠だ。

それで寂しそうにするのは自業自得としか言えないが、そのことはまだリコ達には話していない。

そのため、ユウコは心の中で(ざまあないわ。)と呟いたが外目には出さなかった。

しかし、ヤマグチは一体何を考えているのか。

愛しているはずの彼女を学校で1人にするなど。

愛しているのならば、本気で好きならば、彼女が1人にならないようにその彼女とやらを友人と仲良くさせるなど方法は沢山あるだろう。

彼はそんなことは一切していない様子だ。

コウズが「グルチャでインフルになった」と言っていたことを話したが、ノエミが1人になるからどうのこうのと言うことは言っていなかった。

彼は彼女を1人にしてもいいのだろうか。

彼女に寂しい思いをさせて平気なのだろうか。

それとも、彼は彼女を他の男に盗られるのが怖いのだろうか。

だとしたら、彼は自己中心的すぎる。

自分のことしか考えていない。

彼女がかわいそうだ。

でも、それは自業自得でもある。

何とも複雑だ。

そして、彼が自分のことしか考えていないのであればそれは愛なんかじゃない。

彼が私と別れた理由は「セックスができないから」である。

それでノエミと浮気の末、身も心も結ばれた。

そうとなれば彼はノエミとセックスができるから交際していると見ることができる。

そんなの最低である。

心が汚い。

気色悪い。

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