ミッションA むかつくスマホ

 全国の恋文読者のみなさん、こんにちは。

 ここから夢に変わって語りを引き継ぎ、本日実況中継をつとめさせていただきます、恋文界のプリティー・アイドル、もも叶です!

 今あたしは、自宅にいて、なんと、カレのマーティンが遊びにきております!

 しばらく部屋でわちゃわちゃ(いちゃいちゃ、ともいうかな、てへ)してから、ジュース持ってくるね、と席を外し、ベッドの棚のティッシュケースの中の隠しカメラの様子をキッチンからマーティンくんの様子をモニタリングしております。

 というのも。

 さいきんマーティンくんは、はまっているものがありまして。

 それは、スマホのおしゃべり機能なのです。

 約一世紀前の時代から来た彼は、それはもうこの時代のハイテク機能に感動して、教えてから延々と、「OKグーグル」から始まる頼みごとを連発してるのです。

 今日はなんとなんと、その習性を利用したどっきりをしかけてみたいと思っちゃってます!

 お、マーティン少年、さっそく胸ポケットからスマホを取り出しました!

 そして、話しかけます。

「OKグーグル。僕は誰?」

 大きな瞳がきらきらと澄んだ輝きをたたえております。

 すると、スマホは答えました。

『あなたは、マーティン・ターラー。『飛ぶ教室』の主人公にして、『恋文』の正統派カレ役』

 マーティンくんの頬が、満足げにほてります。

『……と自分では思っているだろうが、実際はすぐキレたり、仲間内でボケ役に回ったり、キャラが迷子気味。近頃は自分でもスタンスを決めかねている、ちょっと残念な半端物クンです』

「……!?」

 マーティン見開いた目をぱちくりさせて、スマホをひっくりかえし、いじってまじまじと見ています。そこでスマホはすかさず、機械的な音声で続けます。

『天然キャラを選択することをオススメします。キレキャラは封印の方向で。貸したブックカバーにもも叶がシミつけたからってキレるな。男のくせにちっちゃいです』

 マーティン、首をかしげています。

 そこでこのももはすかさず、キッチンテーブルの上に設置したマイクで、言葉を吹き込みます。そう、この露木コーポレーション開発のマイクは、マーティンのスマホと連携して、スマホの声を出せる仕組みになっているのです。

 しばらく首をかしげると、気をとりなおしたようにマーティンは再トライ。

「おいしいものが、食べたいな」

『そうですか。本の紙でも食べたらどうですか』

 さすがにむっとした顔をするマーティン。

「僕は『アルプスの少女ハイジ』にでてくるヤギじゃないぞ! 人間としておいしいものが食べたいんだ!」

『近くにいい草原があります』

「(# ゜Д゜)だから僕は――」

『草食ではなく肉食ですか』

「なんで動物前提なんだ!」

『彼女のことが食べたいとか考えてるんでしょう。このスケベ』

「だぁぁぁぁ~っ」

 いらいらと猫っ気をかきむしるマーティン。

 やばい、これ、超おもしろい。

 あと一時間くらいは続けようと思います。

「OKグーグル! 僕と決闘しろ! フェンシングでも肉弾戦でも、好きな方法を選べ!」

『スマホ相手にムキになってるサルと戦えるかよタコ』

「くぉのぉぉぉ!!」

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