第9話 隠れし者たち編

第1章。過去との邂逅かいこう



 先ほどの年嵩の男が、ラティスさんに言上する。


「ラティス様、数々の御無礼お許し下さい。我々は400年前の創派党の

生き残りの子孫です。わたしの名はグスタン、将をさせて頂いております。

ぜひ、ラティス様に我が一族の長メライにあって頂きたく、

伏してお願い申し上げます。」


これはもう承諾だなと、僕は思った。ラティスさんにものを頼むときの、

心の琴線を震わせる一撃を、グスタンという人は放った。


「うむ許す、よきにはからえ。」


何だかな~。 でも出発だ。


・・・・・・・・


 鉄馬車は、快速に進む。ラティスさんは、屋根の上で腕を組み、

ポーズをとったままだ。

はたから見れば、戦いの女王様の凱旋というところか。

ラティスさんは、こういうの好きそうだから。


道を遮っていた戦士達は、あるものは鉄馬を操り、あるものは地面を滑空しながら、

鉄馬車を囲んで進む。本当にラティス女王様の親衛隊という雰囲気だ。


 しばらく行くと、森が開けて、広大な窪地の盆地が見えるところに着いた。

こちら側に町が見える、人々が動いているのが窓から確認できる。

奥の方は畑だろうか。鉄馬車は更に、盆地へ下っていく。

小川にかかる木橋を超えると、前方に百人程の人々が待っていた。


鉄馬車が彼らの前で止まる。

先導していたグスタンとかいう人が、声を上げる。


「暗黒の妖精様 ラティス様を、お連れ申しました。」


ラティスさんが、屋根上から、ふわりと宙を舞い地に降りる。

改めて、近くで、ラティスさんの実体化した姿・美貌をみた人々の間に、


『お~』


と、衝撃の声が上がる。列の後ろから、杖を突いた老人が現れる。


「私の名はメライ、この一族の長をしております。このたびは我が一族のもとに、

御身をお運びいただき、ありがとうございます。」


「で、あの喧嘩を売るような、魔法文字はなに?喧嘩ならいつでも買うわよ!」


ラティスさんの周りの景色が、功気で歪んで見える。これはヤバい。

あわてて僕は鉄馬車から降りて、ラティスさんを止めようと、

扉に手をかける。


「お怒りはごもっとも。それは、このメライの命でお支払いしますので、

なにとぞ我が一族を、願いをお聞き届け下さい。」


メライという人が、仕込み杖の剣を抜き、胸を突こうとした時、

三重の白金の輪が老人を拘束する。ラファイアさんの、結界呪縛。

ラティスさんはラファイアさんを、チラ見する。

余計な事をと、顔に書いてある。

僕は思った。これで大丈夫だ。

やはり、そのあとにラティスさんは、言った。


「話だけでも聞こうか。」 


・・・・・・・・


 アマトたちは、結構大きな、木造の建物に案内された。

100年以上のたたずまいを感じる、細部まで手入れが行き届いている。

壁面に、緑の髪を持つ妖精を上部に、真ん中に一人の美丈夫、

下部に多くの魔導師を描いた、巨大な絵画が飾ってあった。

アマト達5人は、しばしその絵に見とれる。


創派側は、メライ老他6人が交渉の席に座る。

それぞれに香茶や菓子・果物が出されたのをメライ老は確認する。

侍女たちが退席し、メライ老が話し出す。


「その絵が、お気になられるか。それは、我々創派党の象徴を描いています。

一番上は、風の妖精クリスタ様。中ほどは英雄フェアル様。

下はこの4百年の間の指導者だった魔導師様達を。」


「フェアルが英雄?」


思わず、アマトが声を出す。


「「「無礼者が!」」」


メライ老の横に座る、騎士達が腰の剣に手をかける。


「やめんか!!」


メライ老が大声で叱責する。その声で騎士達がアマトに謝罪の礼をとる。


「我々が外界と接触を断って、約400年。外の世界では、

 フェアル様いや創派党は、どう伝わっていますかな?」


と、メライ老がアマトに尋ねる。


「『創派党の指導者フリートに、王座を欲したフェアルが反旗を翻した、

 最終決戦の前に、内部分裂を起こしたので、帝国・王国連合軍に敗れた。

 反乱の失敗の最大の原因は、奴隷出身のフェアルのせいである。』と」


「創派党のほとんどは、その戦いで討ち死にしだが、一部が忽然と消え去った。

 それが、失われた一族と言われています。」


そこまで言って、アマトは相手の顔色をみて、付け加える。


「しかし、あなたがたの旗印だった、奴隷制の廃止や人身売買の禁止は、

 その後、帝国でも王国でも、立法化されました。」


「もう一つの旗印の民衆平等は、不完全な形ですが 下級民といえ、

国家に貢献すれば、準爵という貴族に叙爵する事ができるようになりました。」


「そうですか、我らが始祖の戦いも無駄ではなかったわけですな。」


「真の創派党の過去ですが・・・・・・」


とアマトの言葉に自分達への好意を感じた、メライ老が語りだした。


「英雄フェアル様や指導者フリートを中心にした、反奴隷制・反人身売買・

民衆平等の動きは、当初は帝国の一地方で起きた暴動にしか過ぎませんでした。」


「しかし、魔導師ドゥーム様が加わり、師の策により、

戦争の際、前線での使い捨てだった奴隷兵士達が我らに合流した時、

それは反乱へと拡大しました。その流れは、奴隷階級の人間だけではなく、

下級帝国民をも巻き込み、一大勢力となり数多くの貴族領を席巻、

帝国の打倒は間近と思われました。」


「しかし王帝側は、信じられぬ策をとりました。一つは我々が占領した領地を

王国へ譲渡する密約と、もう一つは王帝の不興をかって帝国を追放されていた

ダヤン子爵を、侯爵へ復権させ元帥として全軍の指揮を任せたことです。」


「ここまでは、たぶんあなた方が聞いた歴史と変わりますまい。」


と、メライ老はいったん話をきり、カップの香茶を飲みほした。


「元帥ダヤンは、巧妙でした。フェアル様が攻めれば引き、

引けば叩くという戦いに徹し、我々に物資を渡さぬために、

焦土作戦を実施。」


「それと合わせて、徹底的な調略を行い、わが軍を裏切れば、前非は問わぬ、

先程あなたの申された準爵や、新しく作った爵位、補爵にも遇しようと。」


「そして、フェアル様、ドゥーム師に強烈な嫉妬心を持っていたフリートと

その一党らがそれに応じ我々を裏切りました。」


「最終的には、裏切り者たちを、返り討ちにしましたが、それで創派党は四散し

陣容を整えた帝国軍、火の妖精ルービス水の妖精エルメルアの二大妖精を擁した

王国の遠征軍の合同軍をインペリアルの原で迎え撃ったのですが、多数に無勢

わが軍は壊滅しました。」


「その前に、フェアル様はドゥーム師ら魔導師に、女子供をこの地に逃がす事、

 森の周りに広大な結界を張り巡らせる事を、ご遺言なされたのです。」


「フェアル様達の勇戦や風の妖精クリスタ様が火の妖精ルービス・

水の妖精エルメルアを抑えたことで、連合軍は追撃戦ができず、

我々の祖先はこの地に逃げのびました。」


「いまのは、暗黒妖精への侮蔑の言葉の説明にはなっていないよね。」


と、ラティスがイラつきながら口をはさむ。


「ラティス様、失礼しました。ご説明しますので、話を続けさせて下さい。」


「ドゥーム師は、異能者であられ、風・火・地・水との妖精と、

妖精契約を結ばれていたのです。」


それを聞いて、ラティスが、ラファイアを睨み、ラファイアはニコリと笑う。


「師は、そのせいか、預言者としての力も持っておいででした。」


「師が残されたものなかに、


『どんなに手当てを尽くそうが、400年もせぬうちに、

結界は維持できなくなる。まさにその時、暗黒の妖精が現れる。

そのとき頭を下げて、全力で助力を頼め。

ワシからも、結界に、暗黒の妖精が近づいたら浮かび出す、

魔法文字を付与しておく。』


の言葉があります。」


「つまり、そのーードゥームは、なぜ現れた暗黒の妖精が

助けてくれると、予言したの?」


メライ老は、の言葉に一瞬詰まりながらも、話を続ける。


「師の側近の魔導師もそのことを質問しております。師は、


『ワシが思うに、この暗黒のエレメントの妖精は、な心情を 

隠し持たれているように思えて仕方ないのだ。

わざと怒らせるような魔法文字を付与したのは、

その高貴さゆえ、我が本心を慮って下さるとな。』


 と、お答えになっております。」


「そいつ、よくわかってるじゃない。まあ今後のことは私にまかせなさい。」


それを聞いてアマトは絶句し、エリースは天を仰ぎ、ラファイアは肩をすぼめ、

ユウイだけがニコニコと笑顔だった。


 

第2章。潮流



 ラティスの言葉により、逆に会談は混迷した。

一番若くみえる騎士が、強い異議を唱えたのである。


「たしかに、あの結界を突破し、山を削りとられたその力は認めましょう。

一回の戦で済むなら、間違いなく勝てましょう。

だが帝国なり王国を滅ぼし、我らが覇をとなえる事が出来ましょうや?」


「黙れ、リョウリ。」


グスタンがリョウリを叱責する。


「いえこれは、一族の興亡に関わる事。黙る事はできません。」


「恐れながら申し上げます。」


眼帯をした隻眼の女性騎士が話をいれる許しをこう。


「これはキョウショウと申すもの。発言をお許し願いたい」


メライ老が発言の許可をラティスに求める。

ラティスが手を上げ、承認する。


「フェアル様が軍を率いておられた時、数万の兵士、多数の騎士・

上級妖精契約者がおりました。無論フェアル様自体、超上級妖精

いや極上級妖精クリスタ様の契約者でした。」


「いま、我々に用意出来る兵力は兵400に騎士100というところでしょう。

それに、上級妖精契約者はたったの5人です。最上級妖精契約者さえおりません。

ラティス様が加われたところで、帝国・王国を相手にするには、

圧倒的に戦力不足でしょう。」


「私はタスクというもの。発言の許可を求めたい。」


ラティスがうなづく。


「ラティス様ありがとうございます。では、そもそも今、帝国と王国は

どのような状態でしょうか?」


「アマト、説明して。」


え、ぼく、とアマトは思いながらも、できる限り詳しく説明した。


①帝国は、先々帝の乱行が原因で、内乱が起こり、勝利者の3大公国が

互いに牽制し、 統一が崩れている事。

②先代の王帝は死去。新王帝不在の状況。

③その状況を好機として、王国が周辺諸国と同盟して、帝国との戦の準備を

進めている事。

④帝国内でも、傭兵の大量募集が、各ギルドを通じてなされている事。

⑤帝国内で、下級帝国民にも、王国連合との戦が避けられないものとして

 語られている事。

⑥王国のものと思われる工作者が、帝国内で破壊工作を始めており、自分らも

 それに巻き込まれたこと。


「なかなか興味深い事で、筋も通っていますが、大嘘をつくなら、100の内

99は真実を述べよとも言いますからな。」


「リョ何とかと言ったわね、なら1つの嘘は何よ!」


と、ラティスが苛立ちを隠さず叫ぶ。


「我々が結界を出た途端に、帝国軍或いは王国軍が、一斉攻撃という事が、

あり得ませんか。その内容に真実味を持たせるために、わざとこのような、

人畜無害のどうしようもないような男に語らせた・・・」


そこまで聞いて、ラティスが噴き出し、ラファイアが笑いをこらえる。

2妖精の笑いのツボが同じらしい。


「何がおかしいか!?」


リョウリが激昂する。


「400年も山倉に閉じこもてっいるから、人畜無害のどうしようもないとか、

長々しい言葉を使うのよ。人畜無害のどうしようもない?

今の言葉では3語『』というの!」


メライ老をはじめ、創派党の人々が、マジマジとアマトの顔を凝視する。

(『ヘタレ』の新語が、創派党の人々に認識された歴史的一歩であった。)


・・・・・・・・


ラティスさんが、顔を引き締めて言い放つ。


「リ ー エ !」


エリースの背後に、緑色の髪をたなびかせた、超絶美貌の妖精が現れる。


「まさかリスタル様!?いや、瞳の色が違われる。しかし超上級妖精 様 !」


メライ老が、思わず言葉を口に出す。


リーエさんも、カッコをつけているが、本当はエリースの背中に

隠れたいだろうな、気の毒だとアマトは思う。


ラティスさんがまた言葉を放つ、


「そこにいる、ヘタレも、1000年の間、誰も使えなかった、

ラファイスの禁呪を使用した者と、帝国では誤解されているわ。」


そうそう、誤解ですよ。え、それ言う必要ないんじゃないかと、アマトは思った。


「ここまで、私たちが秘密を明らかにした以上、あんた達も覚悟を決めたら。」


「ラティス様。と申されますと?」


と、メライ老が尋ねる。


「帝国なり王国なりと戦う意思よ。森の中で吠えるだけなら、誰にでもできるわ。

少なくとも私はね、あんたらに協力してやってもいいと言っているのよ。」


「妖精リーエも協力したいと言っている、私もリーエがそういうなら協力する。」


と、エリースがリーエの気持ちを代弁する。


「私は、アマトさんに従います。」


と、良き従者のふりをして、ラファイアはぬけぬけと言う。

『ラファイアさんの事は秘密にしますか、ラティスさん。

〈切り札は最後まで出さない〉という事ですか?』とアマトは思う。

ともかく、決断を求められている、アマトは言った、


「協力しましょう。」


ラティスとラファイアが、いなければ今の自分はいない。

その思いがアマトを動かす。


「私は、どうすればいいのかしら。」


ユウイが、ニコッと一言もらした。



第3章。覚悟



それまで、沈黙を貫いていた老人ハン二と頑丈そうな大男スキ二が、

意見を述べる。


「お聞きしました帝国の情勢をみると、帝国と戦わずしても我々を認めさせる事が、

出来るやもしれません。」


「ハン二老。帝国本領ですな。」


「左様、スキ二。この状況なら誰が王帝になろうと、帝国に隙ができよう。

3大公国が妥協して操り人形を王帝としても、人形に意思を持たせてやれば

良いのだ。」


「王帝として意思を持たせれば、自分直属の兵も欲しかろうて。」


「王国連合が帝国との戦を望んでいるのも、我等には好機やもしれん。」


「搦め手から篭絡する、ということですか?」


と、アマトは言う。


「そういう事になりますかな、アマト殿。」


「400年前、敵将ダヤンの元には百鴈部隊という、諜報工作を専門にする

特化兵がいました。我々の始祖は散々それに悩まされました。

今度は我々がそのやり方を真似るという事です。」


「けど、それを行ったとしても、3大公国にもあなた方を認めさせるには、

結果として何らかの、はっきり言えば帝国を、戦で勝利させる事が必要でしょう。

あなた方500人、ほとんどが生き残れない事も覚悟の上ですか。」


と、珍しくエリースが尋ねる。


「そういう事です。エリース殿。」


優しくスキ二がエリースに返答する。他の戦士達も肯く。


それからは、揉めることなく話は進んだ。アマト達が予定通り、帝都にはいり、

新王帝との接触をはかる。創派党から何人かがアマト達と共に遅れて帝都に入り、

随時この地への連絡を図る。


最もアマト達を疑っていた、リョウリもしぶしぶ納得する。結界が無くなっては、

創派党単独の兵力では、まず蹂躙されるのは時間の問題だろうというのは、

彼も十二分にわかっている。


アマト達は翌日にでも出発したかったが、ハン二老に一日の猶予を求められる。

一族全員へ説明するとの事だ、この地へ移住した時からの、重大事を行う時の

習わしだそうだ。

その夜は、一応宿が与えられ食事が出されたが、質素なものだった。

ラティスとラファイアは温泉がある事を知り、上機嫌で出かけて行った。


・・・・・・・・


 翌日は、朝から集まりがあるという事で、アマト達は宿でのんびりしていた。

無論、妖精の2人は温泉に入り浸りだ。


午後遅く、集まりが終わったようで、人々が戻っていくのが見えた。

ユウイが、外を見たいと言ったので、アマトはラティスを伴って、

村の中に出ている。


人々の疑念と不安と期待の入り混じった視線が痛い。それでなくても

アマト達の、幾何学模様のはいった服は、無地の生地の服だけの村で

アマト達が異邦人であることを目立たせている。


家々は木造の彩色された壁を持つ小さな造りの家が多く、そのほとんどが細部まで

手入れされているのが、見て取れた。


「アマトちゃん、きれいな色の家が多いわね。お姉ちゃん、帝都でも、

こういう家に住みたいな。」


その願い叶えてあげたいなと、アマトは微笑むユウイの横顔を見て、思っていた。

 

 村の外れまできた時、周りにいた人の中から、1人の赤ん坊を抱いた女が、

ラティスのところに駆け寄り、足元に縋り付き、


「暗黒の妖精様。ラティス様。本当にお力をお貸しいただけるのでしょうか?

この村で、幼子をかかえる母親は、もはや、予言されたあなた様に、

おすがりするしか、子供を守るすべはないのです。」


さすがに、ラティスも驚いて、跪きながら、


「そうするつもりだけど。」


と女性の目を見ながら話す。女性は、一瞬目を見開き、ワッと泣き出し


「ありがとうございます。」


「ありがとうございます。」


を繰り返す。母親の泣き声に、赤ん坊まで泣きだし、

収拾のつかないありさまになる。

周りの人の中から、父親らしき男が飛び出してきて、 


「ラティス様、家内が失礼をしました。本当にお許し下さい。」


と深く頭を下げて、家の方へ引いて連れて行った。


アマトもラティスも全く訳が分からないので、絶句していると、ユウイが

畑に降りていき、指で土ををすくう、じっとそれ見ながら、


「アマトちゃん、この土では、ほとんど作物が取れないでしょうね。もし畑が

 ここで見える限りなら、家の数が多すぎるわ。」


と悲しそうに言った。


 気まずくなり、足早に宿へ帰る。3人が沈んでいるので、エリースが心配する。

アマトが、エリースたちに、創派の村の現状を説明する。


エリースが聞きづらそうに、一番気がかりな事をアマトへ聞く、


「つまり義兄ィ、なんというか・・・・」


「エリース、僕の方から言う。たぶん、もう食料の自給が

できなくなりかけている。」


だれも、その後、話す事ができなかった。客人に対する質素な食事も納得できる。


アマトは身につまされていた。アマトが妖精契約の失敗で、

執行されそうになった火あぶり。

あれも、大飢饉が長期に続いた頃から、始まったと歴史書は伝えている。

ほとんど、眠れぬままに朝を迎えた、アマトであった。


☆☆☆☆


 ラファイアの分身が、帝都方面に向かう方向に、開閉可能になった、

結界のほころびをきのう見つけていた。

ふたりの妖精も、一日中、温泉で遊んでいただけではなかったようだ。

アマト達の鉄馬車はそこから帝都を目指す。


アマト達との連絡役に、キョウショウが同行することになった。

リョウリ・スキ二・タスクでは、どうみても執事には野性的過ぎる容貌で、

まず見えないとの事らしい。


村の出口で、メライ老やハン二老らから別れの挨拶を受ける。


それもそこそこに終らせ、今、鉄馬車は盆地の出口へ坂を駆けあがっていく。


 グスタンと3人の騎士が鉄馬で、盆地の出口に、見送りに待っていた。


鉄馬車を止めさせ、ラティスがリョウリに声をかける。


「リョウリ、ここで荷車の部分は切り離していくから。」


「は、どういう意味ですか?」


「あんた達も戦うにあたって、装備がいるでしょう、その中に

白金貨や金貨・銀貨が積んであるわ。

無論、装備品を揃えた残りで、食料に使おうが構わないから。」


「失礼な、我々には十分に手入れされた装備が・・・」


「リョウリわからんのか!ラティス様は残った分は食料に使っても

かまわんと、おっしゃっているのだぞ。

装備品のくだりは、我々の誇りを損なわないための気遣いよ。」


グスタンが、若い騎士をたしなめる。


「あ・・・。」


それに気づき、リョウリは姿勢を正し、鐙から足を外し、深く頭を下げる。


「ラティス様、先日の件は、誠に失礼をしました。あのような非礼をおかした

私にこのような・・・・。」


声が震え、言葉がでない。


グスタンだけではなく、スキ二・タスク・御者台で手綱を捌くキョウショウの

目も潤んでいる。


ラティスが満足そうに、4人を見て、声をあげる。


「さあ行くわよ。目指すは帝都!!」


朝日を浴びて、再び鉄馬車が動き出す。


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