第31話 ランクS
イレーヌとは城門で別れ、カイは定宿に戻りそこをチェックアウトするとギルドに顔を出す。
そうしてギルドマスターに探している刀の1本が王家の宝物庫の中にあり、無事手に入れたと報告すると。
「よかったじゃないか。武道会に参加した甲斐があったな」
自分のことの様に喜んでくれるギルマスに頭を下げ、
「本当だ。ギルマスには世話になった。これから一度アマミに戻って刀を奉納する。それから再びもう1本の刀を探す旅にでるつもりだ」
カイの言葉に頷き、
「キアナの街には顔をだせよ。ランクSになってたらそこでカードを受け取るといいだろう」
ランクのことはすっかり忘れていたカイ。言われて思い出して、
「わかった」
「ではまた」
ギルドを出るとそのまま王都の城門から外に出て、一路キアナの街を目指して歩き始めた。
そうして王都に来た道を反対に歩いて4週間後にカイは懐かしいキアナの街の門を通り、市内に入っていった。
ギルドに顔を出すと、カウンターに座っていた受付のスーザンがカイを見つけ、
「おかえりなさい。そして武道会の優勝おめでとうございます」
そう言うと奥の部屋にカイを案内する。すぐにギルマスのシンプソンが部屋に入ってくるなり、
「武道会での優勝おめでとう。カイ」
握手をして向かい合う様に部屋のソファに座る。
「このキアナにもニュースが流れてきて、そりゃあここの冒険者達は皆大盛り上がりだったぞ」
どう言う返事をすれば良いか分からないカイが黙っていると、
「それでだ。カイも知っていると思うが王都のギルマスから出されたカイをランクSに昇格させる件、満場一致で認められた。今日からランクSだ」
そう言うとカイのギルドカードを預かり職員に渡す。
「ランクSはここ20年程出ていなかったが、今回のカイの昇格には誰も反対しなかった。そりゃそうだろう。3年連続で武道会優勝の王国の騎士をあっという間に倒したんだからな。しかも魔法も使わず刀だけでそれだ。当然だが誰からも文句がでなかった」
「なるほど。で、ランクSになると何か変わるのか?」
カイはランクには興味はなかったが一応聞いてみる。
「基本は変わらん。カイの場合には幻の名刀を探すという使命があるからな。好きにすればいい」
「それは助かる」
「もし他国に行く場合はランクSのカードがあれば何かと便利だろう。今回のランクS昇格は大陸中の全てのギルドにも案内をしているからな」
頷くカイ。自分の生活リズムが変わらないと聞いて安心していると、
「ところで王家の宝物の中に、カイが探している刀はあったのか?」
ギルマスが聞いてくると、アイテムボックスから小太刀の鬼哭を取り出してテーブルの上に置き、
「これが探している2本の中の1本だ。王家が保管していた」
テーブルに置かれた刀をじっとみるギルマス。
「これがそうか。俺は刀のことはよく分からないがそれでもこの刀が並の刀ではないことがわかるぞ」
肩に乗っていたカーバンクルも肩から降り、テーブルの上の鬼哭をじっと見る。
そのクズハの背中を撫でながら、
「城で国王が側近に聞いてくれたが、この国の貴族の中で刀を持っている貴族は聞いたことがないそうだ」
「そうなると他国か、あるいはダンジョンの奥か」
その言葉に頷き、
「そうなる」
カイが鬼哭を収納すると、
「アマミに戻るのか?」
聞いてきたギルマスの顔を見ながら、
「ああ。一度戻ってこれを奉納せねばならない。そうしてもう1本の正宗探しの旅にでるつもりだ」
「しばらくあちこちに移動したり、武道会に出たりと忙しかっただろう?アマミでゆっくりしてくればいいじゃないか」
「そうさせてもらうつもりだ。またアマミを出た時にはこの街に寄らせてもらう」
そうして新しいランクSのギルドカードを職員から返してもらったカイはギルドの部屋から出てカウンターのある入り口に戻ると、そこにいた冒険者に誘われ奥の酒場に移動し、そこで武道会での話をしながらの飲み会となった。
「これがランクSのカードか」
皆初めて見るランクSのカードを食い入る様に見ている。
ランクSになるとカードがさらに煌びやかになっている。一目見て分かるためだろうかカードの左上には金文字で大きく”S Rank”と彫ってあり、カードの作りもランクAの素材より良いものを使っている様で硬くて頑丈そうだ。
外から帰ってきたランクAのイーグルやハンス、サイモンらも合流してそのまま宴会となっていく。
「俺があっさり負けた騎士にあっさり勝つとは流石にカイだな。ランクSになったのも肯ける」
カイがランクSになったという発表はカイが王都からキアナに移動している最中に発表され冒険者の中では既に周知の事実になっていたのだ。
イーグルやサイモン、ハンスは自分より後にランクAになったカイがランクSに上り詰めたことについては全く嫉妬の感情を持っていなかった。
強い奴が上のランクに上がっていくのは当然というルール、仕組みを理解しているからだ。彼らは自分達でもカイに勝てるとは思っていなかった。
イーグルの言葉に続けてサイモンが
「カイが対戦した奴らの実力はどうだった?」
「正直決勝のイレーヌ以外は相手にならないレベルだった。イレーヌは別格だ。あの女騎士はまだまだ上手くなるな」
イレーヌとの試合を思い出しながら言うカイ。
「イレーヌ以外を雑魚扱いか」
ハンスもカイの言葉に絶句していて、
「そう言えるからランクSなんだろうな」
その言葉に周囲も頷く。
「それで王家の宝物庫にカイの探し物はあったのかい?」
相変わらずイーグルがリーダー格で、話を進めていく。
「ああ。1本あった」
その言葉にイーグルやサイモン、ハンスもよかったなと喜び、
「あと1本だな」
「城に行った時に国王が側近に聞いてくれたが、どうやらこの国の貴族の中で刀を持っているのはいないそうだ」
「となるとダンジョン、あるいは他の国の貴族か王家か」
「そうなるな。俺はまずこれからアマミに戻って見つけた1本を奉納して少し休んでから2本目を探す旅に出る」
「キアナにはまたくるんだろ?」
「もちろんだ。この辺りが一番レベルが高い敵がいるからな。それにまだクリアしていないダンジョンもある。ここでしっかりと鍛錬してそれから必要があれば旅に出るつもりだよ」
カイの言葉に周囲から、
「キアナ所属の冒険者からランクSが出たってのは俺たちも自慢できるしな」
「そうそう、キアナのレベルが高いって証明になるし」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます