第27話 決勝の後
そうして会場を後にしてギルドに向かうカイだが既にカイが優勝したことは既に街中に知れ渡っており、通りを歩くといろんな人から声をかけられ、普段の倍の時間がかかってようやくギルドについた。
と同時にカイが王国の武道会でイレーヌを破って優勝したことはあっという間に国内に広まっていった。
王都ギルドではバーセル、ゴメスを始め多くの冒険者、そしてギルマスのキンバリーもいてカイを見つけると、
「おめでとう、カイ。それにしてもあのイレーヌをやっつけるとはな。これで冒険者ギルドの格もあがるだろう」
その後は酒場で宴会となった。
皆イレーヌをどうやって倒したか聞きたがっていたが説明するのは面倒くさかったので質問形式にして聞かれた事に答える様にした。
もっぱらバーセルとゴメスのランクAの2人が聞きそれに対してカイが答える。周囲の冒険者は耳を済ませてやりとりを聞くという風に自然となっていった。
「対峙したときに抜刀してたな。やっぱりイレーヌは今までの対戦相手とは違ったか」
バーセルが聞くと、
「全く違う。本物の剣士のオーラが出ていた。それに相手も剣を構えていた。本物の剣士が剣を構えたら俺もそれに応える必要がある」
カイはその時の状況を思い出しながら説明する。
「最初のぶつかりあい、殆どの奴、まぁ俺もだが剣筋が見えなかったが一体どうなったんだ?」
ゴメスの質問に答えるカイ。
カイはイレーヌが大剣を振り下ろしてきたのを左手の小太刀で受けながら右の刀を首筋に向けると不自由な体制ながら剣をずらせて右手の刀を受け止めたこと、そしてすぐに自分の左手の小太刀の動きもまた剣の峰で受け止め、その際にほんの少しバランスを崩したのでやられる前に背後に飛んだんだろうと説明する。
「てことは最初のぶつかり合いで3回剣を合わせてたのか」
「そうなる」
「なぜイレーヌが体制を崩した時に止めを刺さなかったんだ?」
カイは聞いてきたバーセルの目を見ながら、
「敬意だ。これが魔物相手なら言うようにその場でとどめを刺している。だがこれは武道大会だ。しかも相手は滅多にいない力量の持ち主だ。俺はお互いにベストの状態で剣と刀を合わせたかった」
「なるほど。武士道ってやつか」
バーセルの言葉に頷くカイ。
「そして2度目のぶつかりあい」
ゴメスの言葉にカイが続けて
「2度目は1度目より簡単だった。相手の動きから今度は大剣を横に払うというのがわかったからな」
そこまでいうとゴメスが思わず
「見えていたのか?」
「ああ。見えていた。ちょっとした体の動きが最初の上から振り下ろす動きと違った。違うとなれば今度は横から払うしかないからな」
そこまで言うとカイの話を聞いていた周囲の冒険者、もちろんゴメスもバーセルもびっくりしてしまう。
「そこまで見えていたら楽だな」
バーセルが言うとそちらを向いて頷き、
「横から来るとわかれば左手の小太刀で剣を上に払い上げるのは難しくない。横の動きをまともに受け止めようとすると力がいるが払うのは刀を下から上にあげる動作だからな。手首を効かせれば力はいらない」
「いやあっさり言うけどよ、それも相当な技術だぜ」
バーセルの言葉に周囲がそうだそうだと頷いている。
「俺にとっては難しい技ではなかった。そうして小太刀を下から上に上げて大剣を弾き飛ばしたら俺の勝ちだった」
淡々と言うカイだが、周囲は次元の違う戦闘のレベルの話しに言葉もでない。
「もうランクSでもいいんじゃないの?」
そうバーセルが言うと、カウンターから
「そのつもりだ。カイはランクSになる資格がある」
その声をした方を見るとそこに立っていたのはこのギルドのギルマスだった。ギルマスのキンバリーはカイらが座っているテーブルに近づくと、
「今日の結果を踏まえてカイをランクSにする様にギルドの連中に提案している。承認されればカイはランクSになる」
ギルマスの言葉に酒場の冒険者達が声を出して騒ぎ出す
「ランクS。 今までいたのかよ?」
「なぁ、ギルマス。ランクSって今までいたのか?」
同じ質問をギルマスにする冒険者。
「20年程前になるが1人いた。当然とっくに引退している。それ以来ランクSは出ていない。なので今回申請が認められれば約20年ぶりのランクSの冒険者ということになるな。俺自身はカイはランクSを名乗る資格があると思っている。実際にカイの実力でランクAにしておくには他のランクAと差がありすぎるからな。バーセルとゴメスもそう思うだろう?」
話を振られたバーセルとゴメス。お互いに顔を見合わせてからバーセルが、
「俺とゴメスは昨日今日と会場で試合を見ていた。特に今日の決勝戦、俺もゴメスも二人の剣捌きはほとんど見えなかった。ここまで差があると気持ちがいいくらいだ。ギルマスの提案はもっともだと俺もゴメスも思っている。しかもだ、カイはこの武道会で魔術を一切使っていない。実際はもっと強いはずだ。カイはランクSの資格が十二分にあると思うぜ」
王都でナンバー1と2を張っているバーセルとゴメス。この二人がカイには脱帽だと言ってるのだ。
バーセルの言葉に頷くギルマスのキンバリー。カイはランクには拘ってなかったのでギルマスとのやりとりを黙って聞いていた。クズハはもちろんカイの腹の上でゴロゴロとリラックス中だ。
「ところでカイ、城にはいつ行くんだ?」
ギルマスが話を振ってくると、
「明日の午後に来てくれと言われている」
「そうか。探している刀があるといいな」
「そうだな」
その後は再び冒険者同士で盛り上がって盛大に酒を飲み食事をして夜遅くまで祝勝会は続いた。
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