恋愛コンプライアンス

 たちばな さくは、ゆき りっつきかげ の両名を好きで、どちらとも恋人になりたいと願っている。


 しかしりっは、さくに自分だけ選んでもらい1対1の恋人になりたいと願っている。好きな人には自分だけを見ていてほしいからと。


 さくも2人には自分だけ見ていてほしいと願っている。なのに自分だけ二股を許してほしいと願う図々しさは承知の上で、自分たちが幸せになるには他に方法がないと説得しているが──



《《ハーレムとか、ありえないし》》



 現代日本の法律では一夫多妻は認められていないし、結婚する以前の恋人関係だとしても二股は社会通念上、不道徳。


 2人とも道徳にはあまり囚われない価値観をしているが、別に全ての道徳に背く主義なわけでもない。


 それにさくと違って2人には、それに敢えて背く動機がない。さくは『2人で争う必要がなくなる』ことが動機になるのではと訊いたが、2人は『争いたくない』とは考えていなかった。


 なので恋敵として、争っている。


 だが仲は悪くなく、むしろ良い。


 2人は元から幼馴染の親友で、さくから2人に告白するまでは水面下で女の戦いをしていたが、告白されて以降は本音をさらけだしあうようになったことで前より仲良くなった。


 『だったら仲良くシェアしてくれない?』とさくは頼んだが、仲良く『『ダ~メ♡』』と断られた。


 そんなやりとりを。


 告白した小学5年生の夏休みから延々くりかえし、中学入学を控えた春休みの今もそれは相変わらずだが、さくが2人となにも進展していないわけではない。


 進展とは?


 AとかBとかCとか、そういうことをどこまでしたか、ということである! ただしさくと2人は正式に恋人になるまでは一定以上のそうした接触をしないと定めている。



■ 規約 ■

 さくは自らの唇および掌による、りっの唇・胸・股・尻への接触を禁ずる。またりっの唇および掌を強制的に自らの唇・股・尻にふれさせる行為を禁ずる。破った場合、その相手1人だけの恋人になることに同意したと見なす。


 りっおよびは自らの唇および掌による、さくの唇・股・尻への接触を禁ずる。またさくの唇および掌を強制的に自らの唇・胸・股・尻にふれさせる行為を禁ずる。破った場合、自身は2人でさくの恋人になることに同意したと見なす。



 3人ともこれを遵守している。


 が、両想いと分かっている以上、好きな人にふれたい気持ちは抑えがたく、規約違反にならぬ範囲でふれまくっている。


 さくりっに、規約で禁止されていない箇所へとキスしている。頬や額や耳や首筋、髪や手の甲にも。


 同様のキスはりっからさくへもされているが、2人はよりギリギリのラインも責めてきている。



 は……


 よく正面から抱きついてくる。さくの胴体に腕を回して、密着してくる。そうするとさくの胸にの日に日に成長している胸が押しあてられて、むにゅっ♡  と潰れる。


 そんなことをされてはさくの股間の男性器は、海綿体に血流が集中して膨張──勃起してしまう!


 ソレが服越しではあってもの下半身に当たる事態にならないよう、さくはへっぴり腰になる。そんなさくの顔をは悪戯っぽく見上げてきて──



さく、Hなこと考えてる?》


《そりゃ、こんな状態じゃ!》


《これだけでいいの? アンタはアタシの好きな人なんだから、この胸さわったり揉んだり舐めたり吸ったりしていいのよ?》


《そうやって規約を破らせようとして! 物凄くしたいけど‼ りっと2人で僕の彼女になってくれるまでは絶対しないから‼》


《チッ!》



 りっは……


 よくソファーに座るさくの上に乗ってくる。そうするとさくの太腿にりっの小さいがその胸よりはボリュームのあるお尻が押しあてあられて、ぷにっ♡  と潰れる。


 そんなことをされてはさくの股間の男性器は、海綿体に血流が集中して膨張──勃起してしまう!


 ソレは服越しではあってもりっの股間の中心、一番大事な所を下から圧迫する! さくが腰を引いても、りっが腰を押しつけて離れない。そしてりっが振りかえってきて──



《裸だったら、はいっちゃってるね♡》


《ぐはっ……!》


《リッカくんのここ、わたしの中にはいりたくて、こうなってるんだよね? 嬉しい。わたしも、はいってきてほしい。リッカくんと1つになりたい。切ないよ、どうしてれてくれないの?》


《そうやって規約を破らせようとして! 物凄くしたいけど‼ りっと2人で僕の彼女になってくれるまでは絶対しないから‼》



《性器同士の接触、結合は規約違反にならないよ?》



《⁉ ……い、いや、ダメだ! 手や唇で愛撫せずにれるだけなんて我慢できない! するなら全身でイチャイチャしたい‼》


《なら、そうして♡》


《そうやって規約を破らせようとして! 物凄くしたいけど‼ りっと2人で僕の彼女になってくれるまでは絶対しないから‼》


《ぶー》



 2人ともさくを誘惑し、挑発し、手を出させて自分だけのものになるよう仕向けてくる。


 さくは毎回それに耐えては、1人になってから『誘惑に負けていたらどうなったか』思い浮かべながら自慰オナニーをして、誘惑されて昂った情欲を発散している。


 そうしていることは2人にも知られている。自分から話したりしないが、2人からオナニー事情を訊かれて吐かされた。2人も自分を想ってオカズにオナニーしていると教えてくれた。


 なんつー話をしてるのか。


 まだ付きあってもいないのに、もうヤルことヤッたカップルのような距離感になっていた。



 それで今。



 ファミリーレストランの客席でソファー側の壁際に座るさくの隣には、りっが座ってさくと腕を組んでおり。


 正面に座っているは、テーブルの下で自分の脚をさくの脚と絡めてきている。位置的に他の客席や、通路を歩く人からは見えないと、宇宙飛行士を目指す優れた頭脳で計算ずくで。


 世間的にはさくりっ常磐ときわが恋人と思われていて、4人はさくりっの本当の関係を隠すため噂を放置して利用しているので、こういう配置になる。


 そしての隣。


 さくとは対角の位置に座る常磐ときわが、もはやこの状況には慣れているようになんの反応も示さず、いつもどおりの真面目な表情でさくに頭を下げた。



「すまなかった」

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