第15話 節約愛妻弁当
さて、今日からGW明けの授業が始まったわけだが。
昨日まで休みだった事もあってか。
クラスの奴らもイマイチ授業の身が入っていない奴が多いように思える。
かくいう俺も、眠気を抑えるのに必死だった。
一方、
というわけで、時は過ぎて昼休み。
「はい。愛妻弁当だよ、みーくん♪」
ニコニコしながら、俺の机を前の机とくっつけて、朝作っていたお弁当を差し出してくる。
前の席に座っていた女の子は、古織が来るや否や、凄まじい勢いで去っていった。
「あ、夫婦水入らずで過ごしたいよね!」と言い残して。
「わざわざ愛妻弁当って言うところ、こだわるなあ」
その気持ちはよくわかるのだけど。
「なあに?みーくんは私を愛していないっていうの?」
「もちろん、愛してるって。ただ、結婚してから一ヶ月だろ。多少慣れは来るっていうかさ」
徐々にこの光景が当たり前になり始めているのが少し恐ろしい。
「新婚一ヶ月でもうマンネリ?うわーん。みーくんが私に飽きちゃったよ−」
古織がわざとらしい泣き真似をした……かと思いきや、目からじんわりと涙が出てくる。
「ああ、その特技使うのやめろって。演技だってわかってても、罪悪感湧くんだよ」
古織の特技の一つで、こういう風に泣き真似をしながら実際に涙を出せる。
「だって、こうすれば、みーくんが優しくしてくれるでしょ?」
すぐに泣き止んでニッコリ笑顔。
「そういう
そう言って、古織の首の後ろをこしょこしょとくすぐる。
「わひゃ。わひゃひゃ。みーくん。くすぐった……」
俺の手の動きに合わせて悶える古織。
こういうときが実にたまらない。
やっぱり、古織の言う通り、俺はサディストなんだろうか。
「ちょ、みーくん。ぎぶ!ぎぶあーっぷ!」
あっさりと古織が降参したので、くすぐりの刑は停止。
「も、もう。手練手管覚えろって言ったのはみーくんのくせに!」
まだくすぐりの刑の影響が残っているのか。
少し痙攣しながら言う様はちょっと艶めかしい。
「あんたら、その漫才何回やってるのよ……」
「こういうのも微笑ましいと思うよ」
隣の席に来ていた
「単にあーんとかするだけだと芸がないだろ。だから、スパイスをだな……」
「古織の愛妻弁当の話、さっさとしなさいよ?ずっとイチャイチャイチャイチャと」
「それは、みーくんがイジメるからだよー」
「ノリノリの古織も同罪!」
「まあ、冗談はこれくらいにしておくか」
そう言って、古織から渡された弁当箱を開ける。
そこにあったのは、白米が1/2程、もやしのナムル、鶏肉の野菜炒めと言ったところ。
「うんうん。美味しそうだ。さすが俺の嫁」
ご褒美に撫で撫でをしてあげる。
「んー。気持ちいい……」
目を細めてナデナデを受け入れる古織。
「あんたらは、ご飯食べるまでに毎度毎度……!」
じゃれ合い過ぎたせいか、雪華がキレそうになっている。
「真面目に食うか。いただきます」
「うん。いただきます」
向かいに座った古織と合わせて、食前の挨拶をする。
きっちり「いただきます」をするのは、倉敷家で厳しく躾けられたせいだ。
「もやしのナムルいいよな。ご飯にすっげ合う」
「作るのは簡単だけど、おかずにちょうどいいでしょ?」
「それに、鶏肉の野菜炒めもなかなか。濃い目の味付けなのがグッドだな」
「みーくんはご飯に合うおかず好きでしょ?濃い目にしてみたの」
「さすが、古織。よくわかってるな」
和気あいあいと食事を進める俺たち。そこに、
「先月と比べて古織のお弁当、少し地味になってない?」
雪華のツッコミ。
「うん。先月は、お金使いすぎちゃったから、お弁当も節約しようってことになったの」
俺達は二人にことの次第を伝える。
「二人きりって、羨ましいとばっかり思っていたけど、意外にシビアなのね」
いつも白い目で俺たちを見ていた雪華もさすがに感心したらしい。
「お金がないと、ほんと何も出来ないって思い知った先月だったよ……」
「で、値段が安いもやしに、肉でも安い鶏肉メインのおかずになったわけだ」
そんなやり取りをどう思ったのか。
「凄い主婦スキルね、古織」
雪華はそう褒め称える。
「ああ、うん。でも、ほとんど、みーくんのおかげなんだけどね」
「食材のチョイスは古織がちゃんとやっただろ」
「でも、高い食材に手を出すの、みーくんが止めてくれたからだし」
そんな風に謙遜しあう俺たち。
「微笑ましいのはいいことだけど、夫婦二人で力を合わせてでいいんじゃないかな?」
「幸太郎もたまにはうまくまとめるじゃない?」
幸太郎に、なんだかいい話にまとめられてしまった俺達は少し居心地が悪い。
「そのうち、こいつらもからかってやる」
「うん。今度、相談しようね」
そう誓いあったのだった。
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