OOPARTS(2)
一筋の光も差さない自分の居るべき場所は、この世界が抱え込んだ大いなる憂鬱のメタファーかと錯覚してしまいそうである。自嘲気味に溜息をついた「彼」は漸く瞼を開けた。飛び込んできたのは光ではなく、まだ終幕の時さえ知らぬ魔王の声。
「(皮肉、だな)」
終幕の回避を目指す者は敵対している。
「(悪い夢、とはよく言ったものだ)」
終幕を齎す者は善意のままに健全で純粋である。
「彼」は再び瞼を閉じた。
かつて、というよりもっとずっと遥か遠い昔の事だが、「彼」もまた苦しんでいたことがある。戦いを余儀なくされている者を徒に“勇者”ともてはやして逆境に甘んじている民を目の当たりにしては、守るべきものを見失って現実に悪態をついているばかりで。
「(それでも……)」
いつまでたっても奇跡的なまでに、相も変わらずバカみたいに傷付きながら、守ると決めたものは何に盾突いてでも守り抜く史上最強の“甘チャン”が傍らにいた。何度と無く失望や絶望に直面したのに、あれだけ難渋していた「守るべきもの」は思いのほか近いところで見つかった。
丁度、「彼」はそんな事を思い出していたところである。
「苦しめばいい」
誰とも言わず、「彼」は冷笑を覗かせた。
「苦しまなければ見つからないのだろう」
アンチテーゼ、とは――
“勇者”が自分を呼ぶ声が聞こえる。行かねばならない。隣人にも聞こえているだろうか聊か気になったので、「彼」は一応声をかけておいた。
「起きろ、低能。出番だぞ」
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