28. お買い物 #2
「次は魔道具だけど、どんなのとか希望ある?」
「どんなのと言われても…どんなのがあるんだ?」
「あーそっか、知らないんだっけ…大きく分けて2種類あるかな。効果系と直接系、わたしの造語だけど」
リーサはそう言って、親指と人差し指を立てた。
「効果系は、武器に魔法陣を刻んで使う。例えば加速の魔法陣を剣に刻めば振る速度が上がるし、逆に減速の魔法陣を盾に刻んで防御力を上げたりもできる。主に青魔法使いの人たちはこっちを使ってるね。わたしもそう」
多分俺がこの世界に来たときに使った重力操作陣と似たようなものだろう。
あれは陣の上の空間に対して作用するものだったが、多少変えれば陣が刻まれたもの自体に対しても作用させることができる。
「直接系は、魔法陣から火とか水を発生させて敵を攻撃するやつ。こっちは魔力…魔素だっけ?をたくさん使うから赤魔法使いの人がよくやってるかな」
「じゃあ俺はそっちのほうがいいかな?正直運動苦手だし…」
「冒険者やるならちゃんと体力つけといたほうがいいよ。いくら技術大学といえど、学校でも体育あるしね」
「ですよねー…」
会社でデスクワークをして家で魔法理論を書いていた俺のような人間がまともに動いていたのは、せいぜい通勤くらいだった。
…もしかして俺、不摂生が祟って向こうの世界で死んだのでは?
それに比べると、最近早起きしては冒険者として依頼を受けに行っている生活のなんと健康なことか。
「とりあえずは直接系で行くよ。ほとんどの人が青魔法使いなら、たぶんそっちのほうが求められてるだろうから」
「運動をサボる口実にしないならそれでいいと思う」
「手厳しい…」
そうボヤきつつ、リーサについていった。
「初心者向けならこういうのかな」
リーサが手渡してきたのは2000ガットの杖だった。
どこか見覚えがある。
「あ、これもしかして最初に会ったときリーサが持ってたやつ?」
「そうそう。青魔法使いでも使える珍しいタイプのやつ。射程は落ちるけど、赤魔法使いが使えばいい感じに使えると思うよ」
「なるほど?試しに使えたりしないのかな」
「向こうで使えるよ。50ガットかかるけど」
「やってみるか」
店員に小銭を渡して、屋外に設けられた試し撃ち場へと出た。
壁を見ると、焼け焦げた跡が残っている。
アニメとか漫画でよく見るような感じで、杖を片手で前に差し出す。
そこで俺は、あることに気がついた。
「これ、何が出るんだ?」
「…知らないでやってたのね…杖の構え方からして違うからそんな気はしてたけど…」
リーサに呆れられてしまった。
ちょっとワクワクしてたからすっかり訊くのを忘れていた。
「よく見て。上の飾り部分に魔法陣があるでしょ。片手で杖を持って、もう片手を魔法陣に添えて魔力…じゃなかった、魔素を流し込む」
「ここか」
見てみると、直径7cmほどの魔法陣が刻まれていた。
だが、どこか違和感がある。
「…なるほどね、爆発する火の玉を飛ばすのか。距離はだいたいこっから壁まで。で、次が撃てるようになるまでに2、3秒待ち時間がある、と」
「あれ、知ってたの?」
「いや、魔法陣を見たから…」
「へ?」
「A環とB環…内側2つの環で延長線上に水素を発生させ燃焼…外側3つの環で上方向への力場を発生させてそいつらをまとめて飛ばす。魔法陣に溜まった魔素が抜けるまで2、3秒あるからその間は使えない」
「…魔法陣を解析したの?」
「基礎的な知識があれば誰でもできるぞ。ま、俺は詳しいからこの一瞬で解析できるんだけどな!」
めちゃくちゃドヤ顔でリーサに向き直る。
しかし、リーサの顔は尊敬するような表情でもなくウザそうな表情でもなく、ただ目を見開いていた。
ただならぬ表情のリーサに、俺のドヤ顔はフェードアウトし、困惑を浮かべるしかなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます