14. 赤魔法開発

「ほう」

「わたしは、なんとしても今の貧乏な生活から抜け出したい。もっと自由に、好きなことをやりたい。研究をしたい。…魔族でなくなってしまったとしても、赤魔法が使えればわたしの可能性は広がるの」


 思いの丈を一息に吐き出したリーサは、深呼吸をひとつ。


「もちろん、タダでなんて言わない。お金は…その、ギリギリだからあげられないけど…そ、そのかわり、わたしの体を好きにしていいから!」

「なぁっ!?」


 爆弾発言に慄く俺をよそに、リーサは真っ赤な顔で俺の手を掴み、胸に押し付けた。リーサの決して大きくない胸が、やわらかな感触を手に伝えてくる。そして彼女は寝間着の下には何もつけていない。わずかに浮き上がった先端が布越しに指先に触れ、俺は何も考えられなくなってしまった。


「わ、わたしの胸は、小さいけど、形はいいと、思うし…その、し、下だって…まだ、きれいだから…対価としては、成立すると思うの!」

「待て待て待て待て、おい待て」


 理性の防波堤が崩れ去る前に、俺はなんとかその言葉を口にした。そしてさっと腕を抜き取り、リーサの肩に手を置いた。


「な?頼むからまずは落ち着こう、な?」


 薄い布1枚に覆われた肩の触り心地もまた生々しくて、正直俺が落ち着いてはいられなくなりそうだったが、それでもなんとか耐えきった。

 リーサは、すとんとベッドに腰を下ろし、俺の横に並んだ。


「…ごめん。でも、言ったことは全部本当の気持ち。青魔法しか使えない普通の人だって、普通に生きていくことはできるけど…うちがそうじゃないのは、なんとなくわかったでしょ」

「まあ、そうだな」

「わたしは、もっと自由に生活したい。普通の人よりお金持ちで、やりたいことが自由にできるようになりたい。もし魔族であるということを対価に赤魔法使いになれるのであれば、わたしはそうする。各国から引っ張りだこなんかにならなくていいから、赤魔法使いになってお金がほしい。赤魔法使いになるためだったら、わたしの純潔なんてどうでもいい」

「たしかに、お前にも赤魔法が使えると俺は言った。だがそれが嘘である可能性は考えなかったのか」

「嘘でさえ、今まで赤魔法を使えるようになるなんて言った人はいなかった。赤魔法を使えるのは偶然の産物か神の祝福か、そういうものだったの。あなたは唯一、赤魔法が使えるようになると言った人」

「…いやまあ、そうだけどさ。だからって女の子が初めてまで捧げるか?対面してまだ1日経ってないぞ」

「仮にあなたがデブでブサイクで気持ち悪いオッサンだったとしても、赤魔法が使えるようになるなら喜んで体を捧げる。今のわたしにとって、お金はそれくらい大事」


 リーサがそういう相手に抱かれているのをふと想像してしまい、吐き気を催した。

 望まない相手と体を重ねるのは、自分で望んだ仕事とかならともかく必要に迫られてやるべきことではないだろうに。


「…わかった、リーサを赤魔法使いにすりゃいいんだろ。そんぐらいやってやるよ」

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