13. Todo
岩塩が取れるのかそれとも海が近いのか、とりあえず塩が安かったので、俺は歯磨き用に買って帰ることにした。
1日1000ガットで生活しなければいけないわけだが、一食に300ガット費やしたとしても100ガットは余るので、塩を買うくらいはできた。
口を塩まみれにして指を突っ込みながら、俺はベッドに寝転んでこれからのことを考えた。
今日は5月1日。週のシステムも地球と同じで、今日は日曜日に当たるらしい。
明日からは平日なわけで、リーサは高校に通うのだろう。俺が高校に通うにはちょうど1ヶ月後、6月1日に行われる転入試験に受かる必要がある。少なくともこの世界の歴史などについて深堀りされるわけではないらしいから、魔法知識のある俺なら受かるだろうというのがリーサの見立てだった。
技術大学の附属校だけあって多少は科学の試験も出るようだが、大魔法理論を組み立てる際に必要だった部分の科学知識はつけている。量子力学の問題をガッツリ解かされるとかそういうレベルでなければ大丈夫だ。
知識はあるし、金も支援を受けられる。問題は文字、というか言語だ。身分証を見た限り、おそらく言語が完全に違っている。やり取りに問題がなくとも、さすがにそれは不便だしテストも受けられない。
(リーサに頼み込んで、教えてもらうか?)
場合によっては、食費を削ったり冒険者稼業をやったりして金を支払う必要があるだろう。
さすがにタダでとは言いづらいし、失礼だ。既に色々と助けられているというのに。
だが一方で、リーサは俺を誘拐しようとした。未遂ではあるが犯罪者だ。
それならば、犯罪を黙っている代わりにこき使ってやっても構わないのでは?
(…いや、ダメだろ)
許しを口にしたのは俺だ。今更ひっくり返したところでどうにもならない。
「はぁーあ、どうすっかなぁ」
わざとらしく口を開いてはみたが、返事はない。狭い部屋に俺は一人だ。
今日は一日、いろいろありすぎて疲れた。先行きが不透明でいろいろと不安ではあるが、無理矢理にでも押し込んで寝てしまったほうがいい。
俺はそう判断して、蝋燭を吹き消そうとした。
「…もう寝るところだった?」
だが、その行動はリーサが俺の部屋に入ってきたことによって中断された。
リーサは若干サイズの合っていない寝間着を着ていた。おそらく買い換えるお金がないのか、節約のためにあえて買い換えていないのだろう。
今は比較的暖かいために風邪をひくことはないだろうが、ほっそりとした腹がちらりと覗いているのはちょっと心臓に悪い。
「まあ、そのつもりだったが…どうした?誘拐なら間に合ってるぞ」
「しないって」
俺の冗談にリーサは少し微笑んだ。
その美少女っぷりが、本性を現す前の姿と重なった。
「それならいいが。何の用だ?」
「えーっと…その…」
リーサはもじもじと指を動かしたあと、意を決したように言った。
「わたしも、赤魔法を使えるようにしてほしいの!」
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