第7話 俺、沙耶香にアタックする⑶

 昼休みになって、クラスはわいわいとにぎやかになっていた。


 二限目三限目の休み時間に二~三人「看破」してみたが、好感度は「1」か「2」だったので、そのまま放っておいている。授業中、俺の机の上でずっと寝そべっていたクロぼうに聞いたところ、看破した女の子へのアタックはいつでもよいということなので、焦って無理やり突っつくもんでもない。


 再びクラス内を物色するように見渡す。


 ――と、生徒たちからプリントを回収していた学園二大美少女の内の一人、優等生アイドルの高城紗耶香と目が合った。


 紗耶香はいつもの様に俺の視線に対してにこやかな笑みで答えてくれた。その後、少し恥ずかしいという面持ちで視線を逸らせる。


 その頬が、薄っすらと桜色に染まっていたように見えたのは気のせいだろうか?


 こんな反応をする女生徒は、高城紗耶香だけだ。


 生徒会長としてのクラスメイトに対する応対もあるのだろうが、この柔らかな反応を示してくれる黒髪ロング美少女の「好感度」がふと気になってしまった。


 1だろうか。2だろうか。


 それとも今の段階では観たことはないが、0なのであろうか。


 俺の事を男子として見てくれているとは思えないのだが、高城さんの反応から少しだけ。少しだけ高城さんの好感度を期待してしまって。


 もし10もあれば、俺は跳んで喜んでしまうかもしれない。0ならば、表面上の優しさとのギャップに女の子というものに幻滅してしまうかもしれない。


 全く期待していない普通の女生徒なら気にもしないで『看破』なのだが、相手は俺を構ってくれる全校生徒の中の二人のうちの一人とあって、清水の舞台から飛び降りる気持ちにもなって、えいままよっと『看破』を唱える。


 視界がブレ……


 紗耶香の上に数字が浮かんで……


 俺はその好感度パラメータ―をこわごわ見て、絶句する。


 なんと、100の数値をたたき出していたのだ!


 え? っと目をこすって、再びプリント回収中の紗耶香を見る。


 100で間違いなかった。


「いいねいいね。好感度100は最高値だよ。まず間違いなくアタック成功だね。いい娘見つけたね。夢魔の僕から見ても見栄えは間違いないし」


 目の前に寝そべっていたはずのクロぼうがいつの間にか起き出している。


 紗耶香はプリントを集め終わり、教室を後にしようとしている。


 俺は未だに100という数字の衝撃と、その混乱から立ち直っていなかったが、慌てて立ち上がる。


 マジか? ホントなのか?


 頭の中で疑問がくるくる回転している。


 あり得ないと思う一方、学園生徒会長アイドルが俺に気のありそうな反応を見せてくれていたというのも事実だ。


 これは……


 ゴクリと、口内に溜まっていた唾液を飲み込む。


 期待して……いいのか?


 混乱の中、『看破』とやらの精度を確かめたいという思いもあって、俺は紗耶香の後を追う。


 教室を出たところで、紗耶香に追いついた。

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