第137話 聖なる遺物

「イルマルガリータ様とミランダ王女は、どういった間柄だったんだ? まさか本当に、親しい仲だったなどとは言わないだろう?」


「いいえ、お兄様。親友かどうかは分かりませんが、あのお二人はお互いを理解し合っておいででした。イルマルガリータ様はミランダ王女を〈同類〉とおっしゃって……」



 まるで寝耳に水だというように、エルヴィンが銀髪をくしゃくしゃと掻いた。



「あの、もう時間がないのです。これをお持ちください。ミランダ王女にお渡しして」



 そう言うと。


 背後に置いてあった小箱を拾い上げ、フィルメラルナへと渡す。



「これは――?」


「イルマルガリータ様のおこつです。お体をお渡しするよう申し付けられていましたので、その部分を焼却し、残った灰とお骨です。聖なる遺物としてお受け取りください」



 頭部は歴史棟へと、すでに届けられたと聞いている。


 フィルメラルナはその姿を見たわけではないが、ヘンデルもエルヴィンもそれを確認しているはずだ。



 ミランダとの会話では、受け取るものがイルマルガリータの骨であるとは聞いていなかった。


 体を引き取るものだと思っていたため、フィルメラルナは動揺を隠せない。



「そのお骨がイルマルガリータ様のものだと、どう証明できるのだ」



 直球でエルヴィンが聞く。


 が、すでにフィルメラルナには分かっていた。



 蔦の印でつながりし神妃同士、とでも言うのだろうか。


 額がまるで共鳴するように騒がしい。



「ユリウス王子に、そしてミランダ王女に。イルマルガリータ様がお約束された彼らには、きっと見分けがつくはずです」



 静かに言い置いて。


 ミシェルは片足を引き、フィルメラルナから離れた。



「待て、待つんだ、ミシェル!」


「どうか、もうわたくしのことは忘れてください。お兄様の妹ミシェルは、ずっと前に死んだのです」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る