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朝、ベットの上でくうっと伸びをする。二日連続で縛られない朝が来た。時刻を見ると7時を少し回っていた。朝食がついてくるプランだったので、着替えを済ませると部屋を出ると隣の隼人の部屋をノックした。
すると一分ぐらいしてからのっそりと隼人は出てきた。
「遅い」私がそう言うと彼は頭を掻いた。
「遅いといってもね。土曜にこんな早く起きることなんて滅多にないから」
「そうなんだ。以外」平日は結構早く出社してるから勝手に土日も早く起きていると思っていたのだ。
朝食会場につくと結構席は埋まっていた。バイキング形式の食事を適当にお盆に載っけると、はじっこの方にあった向かい合わせに座る二人掛けのテーブルに座った。久しぶりに自分が作ったものではない朝御飯に、少々心踊ってしまった。
「やけに嬉しそうだね」隼人がそう言う。
「朝は幸せじゃない」そう言うと私はいただきます、と手を合わせた。隼人もそれに合わせると、パンをかじり始めていた。かくいう私もパンである。
そう言えば両親がパン食を絶対に嫌うので、パンを食べること事態が久しぶりだった。私は久しぶりのその味をゆっくりと噛み締めた。
9時になると私たちはホテルを出た。
「それでさ、隼人、いつまで言わないんだ?」
「ん、ああ、付き合って欲しいことね」そう言うと彼は取り敢えず路面電車に乗ろうと言った。
そしてたどり着いたのはこの街最大の駅だった。そして隼人はその駅ビルの横を指差した。
「あそこにいきたかった」
「え?」私はそちらの方を見た。するとそこには大きな商業ビルがあった。
「え、服でも一緒に見たかったの?」私はそう言って笑う。
「違うよ。あれの核テナントの方」
「核テナント……?」ゆっくりとそのビルを眼でおう。あそこの核テナントといえば…!
「ビーックビックビックって奴?家電量販店の」
「おう!新しいパソコンが欲しくてさ。かなちゃんならなんか詳しいんじゃないかって思って」
私は笑い顔を意図的にすぼめた。そして、不機嫌な顔をする。
「隼人。それは酷くない?」
「……えっ!駄目なの!?」
「駄目ではない」そう言うと私は隼人の前を歩いていった。
「ちょ、まって。意味分からん!」そう言いながら隼人は私の後ろをぴったりと歩いてきた。
「だから、dvdドライブのついてそんなゲームがグリグリ動く10万円以下のノートパソコンなんてないよ!dvdドライブ省いても無理だよ!そんなゲームしたいならps5でも買えば良いじゃん!」
「ええー!そんな高いの、パソコンって……」隼人はしょんぼりしたようにへこたれる。
「んー。でもまあ、ほら、ひょいひょい」私はいつもバックにいれているノートパソコンを取り出した。
「あ、お馴染みのかなちゃんパソコン」
「これ、dvdドライブはついてないけどね。何円したと思う?ちなみにゲームもグリグリ動くよ」
「え、そんなパソコンだったの?それ」
「まあね。外で遊ばない分、これにぐっと金銭を入れ込んでるんだよ」そう言うとクックと笑って見せた。
「何円だ……。15万とか?」
「残念。25万円」そう言うと私はパソコンをバックにしまった。
「に……。25万円?駄目だ諦めよう」
「案外隼人はケチなんだね。そんな夜遊びでもしまくってるの?」
「まさか!……でもさ、うん。いって良いのかな」そう言うと隼人は小さな声で言った。
「かなちゃんこそ、そんなんでお金足りるの?」そう言うと私を見てきた。
「まあ、だからさ。家に居ないといけないんだからこういう趣味しか出来ないじゃない?」そう言うと平気だよ、と呟いた。
「……よし、決めた!」すると隼人は突然声を大きくした。
「これから予算を値上げする。30万まで」
「はい?」私は耳を疑った。「いやいや、大幅に上げすぎでしょ!なにそれ、私のせい?」
「ううん。大丈夫!俺は大丈夫」そう言うと彼は笑い始めた。
これはホントに大丈夫なのだろうかと、少々心配になりながら、結局は彼は謎のこだわり「dvdドライブ」付きの26万のノートパソコンをお買い上げした。
「よし、じゃあ帰るか?」隼人はそう言う。
「まって。ファッションコーナー行こうよ」
「服屋?」
「まあ。服だね。靴だね。鞄だね」
「ああ、ファッションね」
「からかってる?」私は軽く彼をつつく。
すると隼人はそんな訳じゃないといって笑った。
「いらっしゃいませ」久々のファッションセンターに私は心を踊らせていた。結構人が居たが、私から離れないように隼人は頑張ってついてきていた。
「ねえ、隼人。こんなのどう」私は白いセーターを見つけて、それを自分の体の前にかざして見せた。
「うん。可愛いと思う」
「そう?」私は少々上機嫌に答えた。私はそれを買い物かごに入れた。
「隼人のも探そ」
「ん、まあ」そう言うと彼は何故か眼を泳がせていた。もしやと思ったので、一応尋ねてみた。
「隼人って、ファッション興味ないでしょ?」そう言うと隼人はいきなり張り切ったように声を出した。
「興味あるよ!うん。靴下はやっぱ長い方が良いとか」
「わかった。ごめん」私は素で謝ると、彼もかしこまったように謝った。
「マジで疎いんだ」そう言うと、でも、といって彼は私の裾を引っ張ってきた。
「どうしたの?」
「でも、かなちゃんが選んでくれるなら。嬉しいかもしれない」そう言うと彼は私を見つめてきた。
私は照れた顔を思わず隠す。やっぱり私と隼人は、環境も、性格も異なっている。けれども、昨日今日で私たちはだいぶ仲良くなれた……。いや、より強い絆で結ばれたような気がした。だからこそ、私はいよいよ答えを出さないといけないと思った。仲良くなってしまったことで、私は彼に全てを打ち明けてしまったのだから。彼ならきっと、心配してしまうと、もう分かりきっているからこそ。
やはり、たちきるしかないのではないだろうか?心の奥でそんな感情が沸き上がってきていた。
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