第39話 空中バイクと見舞い


彼 それから

エルや俺と三人で 学校にある食堂で昼食を食べながら仲良く話しをしていた


訓練地の一つ 衛星を訓練機関にした場所で宇宙空間での作業も実地で行われ

宇宙空間で 宇宙服を着けて

レーヴが乗っていた空中バイクにも乗ってみた


そして・・

「ファリ! ファリ! 前だ!前の氷の塊にぶつかるぞ!」

「え!!」

ものの見事に 宇宙に浮かぶ氷の塊にぶつかり

空中バイクは大破・・俺も大怪我を負った


まあ・・相手が氷の塊で まだ良かった・・

でなければ 怪我ぐらいで済まなかったはずだから


俺としては・・・

レーヴや妹達には 心配するだろうし

俺の親父殿は 戦士たるものが!と呆れられるに違いないだろうし


あのレーヴだけには こんな間抜けな事態を知られるのは

もちろん 気恥ずかしかったのだが

だが・・・


そう もちろん黙っているつもりだったのだが

彼レーヴの妹エルや彼の父親ピウスが心配をして 

しっかりと・・俺の怪我についての連絡が 彼等に伝わり


予想通りの親父殿の御小言の言葉のメッセージに

心配する祖母に妹リリーシュやレーヴのメッセージもついて


見舞いの品々が しばらく後に山のように届けられたのであった


見舞いには 砂魚サマクの干したものに

惑星で収穫されたというパイナップルにナツメヤシ

品種改良したコケの実トリブル


コケの実トリブルは レーヴの品種改良の成果で種類が増えて

味も格段と上手くなっていた

レーヴのおかげだった


それらの

果実が沢山 それは食べきれない程の量・・

俺の惑星は 穀物や果実を多く生産出来る惑星へ


それに産出されるレアメタルや砂漠にあふれる砂金で

豊かな星へと変貌をとげつつあった・・。


やがて・・うわさ(見舞いの品)を聴きつけた

学友達が見舞いと称して現れて それらを事ごとく

彼等の腹に収めて帰っていったのだった


まあ・・どうにか 

一部は俺の腹にも 当然 無事におさまったのだが


エルやナギ・ナジュアナリが交互によく見舞いに来ては

俺の世話を焼いてくれた


「林檎をむいたの・・食べる?ファリ?」

「ああ!有難うエル!」


淡い金の髪から 甘い香りがする

彼女の綺麗な瞳が 俺をじっと見てる

すぐ傍にいる 彼女エルの笑顔にドギマギしている自分がいる


「ファリ! 調子はどう? エル 元気?」

ドアを開けて 微笑む ナギ・ナジュアナリ 


「今日の授業の講義 パソコンにデータとしてまとめておいたから」

「はい!どうぞ」

「二人とも成績が優秀だって 父さんが褒めてたよ ふふ」

とエル


「ふふふ、俺はナギ・ナジュアリ程ではないよ

まあ・・本もない世界で育って・・その分

ここでは 頑張らないとな・・」と俺ファリは笑う


「ファリは 努力家だよね 感心する

でも・・育った本のない環境で 条件は同じでも 僕の場合は

ファリと違って 軍事の鍛錬は まったく駄目だけど

だから、その他の教科で 点数を稼がないとね」

ナギ・ナジュアナリ


「何言ってんだよナギ・ナジュアナリ・・あれほど高得点な成績を

修めておいて」


「軍事訓練の場合

俺は 部族では 戦士の一人だったから、ある程度は 向いていたんだろうから」

首をすくめる俺


「それに ナギは 楽器の演奏が得意なんだって! 

今度聞かせてくれるか?」


「うん ファリ!」

見舞いの林檎を食べながら・・


「これも 持ってゆけよナギ

この果物・・レーヴが品種改良して作っただけど

何だと思う?」


「え! 何?」ナギ・ナジュアナリ


「ザファールの実に こっちはコケの実トリブル・・品種改良版だよ」


「ええ!色も大きさも違う! 

それにサボテンのザファールはめったに実をつけないのに」


「ザファールが沢山 実をつけるように品種改良したってさ

一つ食べてみて?ナギ・ナジュアナリ」


「うわああ!美味しい すごく甘い!

これレーヴさんが品種改良をして作ったの!すごいや!」


「沢山あるから、これもナギ・ナジュアナリ」


「有難う・・レーヴさんにも御礼のメールしなくちゃ!」


「あ、じゃあ お邪魔しちゃ 悪いから

僕はこの辺で・・またね ファリ エル!」


「あ!せっかくだから 砂魚サマクはいらないか?」


「え!いいの 果実に砂魚まで 有難う ファリ」

彼は微笑んで 土産の砂魚サマクを受け取ると

春の風のように そっと立ち去った


長い艶やかな黒髪を揺れらしながら部屋のドアを閉める

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