第19話 天空人と交わった砂漠の民の子孫

漠を渡る準備をすませ デアンカ(ラクダ)に乗り

砂の海を行く


砂漠の酷暑にも 俺の心配をよそに レーヴは元気について来た。


彼ナギ・ナジュアナリが書いた地図を元に 

夜半 無事に彼の村まで辿りつく


「あそこの角の小さな家が彼の家のはず・・」

地図を見る


「なんでも 閉じ込めれて 妹さんと弟さんの三人で

今は暮らしていたらしいが


水不足で村人達が 水欲しさに

別の村から まだ幼かった彼らを捕まえて 

東の部族の村の連中に差し出したらしい」


「誰かが来る」


俺達はそっと物陰に隠れた


「まだ見つからないのか!」村人の一人が怒鳴る


「ああ、あの天空人の瞳を持った子供が 東の部族の元から逃げ出して

俺達に文句を言ってきた!」


「逃げ出したのは 奴らの手落ちのくせに

残りの代価の水を渡さないって 言いやがる!

 生贄向きな綺麗な子だと喜んだくせに


すぐに代わりの生贄をよこせだと! 

あいつ等 人の足元ばかり見やがって!!」


・・ナギ・ナジュアリの事だな

ファリとレーヴは思う


「で・・まだ見つからないのか!奴の妹と弟は!!」


「ああ・・弟の方は 俺達と同じ姿だから 奴らも

つき返してくる可能性があるが


「妹の方は 兄貴と同じ天空人の瞳に白い肌を持っているから

東の部族の連中も満足するだろう・・」


「来年 水が不足した時のために 

妹の方はとっておきたかったんだが しかない」


「なんて酷い連中だ!」怒るレーヴの肩をポンと軽く


「そんなもんだ

こんな苛酷な環境じゃ まあ元来の性格があっても

人間の気持ちは 荒れても仕方ないさ」


「それよか逃げ出したとなると・・あ・・!」


「レーヴ お前 確か通信機とかいう 

遠くからでも話が出来る機械持ってたよな」


「うんファリ あるよ! どうすんの?」


「まず、逃げ出したらなら どこに行きそうか

ナジュアナリに聴いてくれるか?」


「なるほど! で・・」

「それから・・」


俺達は通信機で 彼ナギ・ナジュアナリに連絡した

「・・・妹や弟が行きそうな場所ですか?」

心配そうな声が通信機から聞こえてくる


「多分 近くの洞窟 村から左手に進み1キロ先あります」

 

「行ってみる 

また後で連絡するから 頼むよ」


洞窟に行き 俺達は 彼の妹や弟の名前を呼ぶ

「アファイア それからウインダム」


「出ておいで・・俺達は 君達ナギ・ナジュアナリ兄さんの友達だ!」


「証拠はあるの?」 奥の方から小さな子供の声が響く


「ほら 見てごらん 僕は天空人だ」レーヴが呼びかける


「・・・・」

「お兄ちゃんや私と違うもん!」女の子の声


「ええっと・・同じ天空人でも種族が違うから・・

どうしたもんかな~ファリい・・」


「ま・・こんな時こそ 天空人の魔法を使わせてもらうさ」


俺はニコリと笑うと・・通信機のスイッチを入れ 

まずは彼等の兄であるナギ・ナジュアナリに呼びかけた


「これ 確か音を拡大する事が出来たな・・レーヴ?」


「ああ! そうか!わかった 今やる・・

よし! これでいい」


「いいかい 今 君達のお兄さんナギ・ナジュアナリが呼びかける

これは 通信機という天空人の魔法の道具さ

君達のナギ・ナジュアナリ兄さんの御話を聴いてくれるね


じゃあ 呼びかけてくれるかい?」


今度は俺は 通信機の向こうにいる彼等の兄ナギ・ナジュアナリ

に呼びかける


「うん わかった!」

「じゃあ!頼む!」

通信機の音の拡大装置にスイッチが入る

そして・・

「アファイア  ウインダム

僕だよ ナギ・ナジュアナリ兄さんだ


その人達が僕を助けてくれて

今度は お前達を兄さんの代わりに迎えにきてくれたんだ


今 兄さんは怪我をして お前達を迎えにいけないけど

その人達を信用して 一緒に来てくれる?


兄さんは 彼等の村で待ってるから」


「兄ちゃん!ナギ兄ちゃん!」

二人の小さな子供達が洞窟の奥から飛び出してきた!


二人をレーヴが抱きとめ 俺やレーヴに抱えられて

洞窟から出て 俺達の村に向かうことにした


もうすぐ朝

まだ暗闇だが うっすらと光がさし始めている


「朝の光は 綺麗だが 俺達の村までは少し遠いか・・

まあいい レーヴや子供達は大丈夫か?」 


「ここはまだ 南の村の奴らの土地だから 

早く逃げないと」


「あ・・大事なものとか あるなら・・

ちょっとばかり ギリギリだが 夜の闇に紛れて

間に合うぞ 家まで戻って取ってくるが?」

子供達は首を横にふる


子供たちは大きな袋を大事そうにかかえてた


人形やら岩を削って作った手製の玩具に

小さな笛


くしゃくしゃになった布に子供達が描いた

家族の似顔絵 


それから櫛などの小物が少々


沢山のお菓子に水筒が入っていた


「よし!大事なものは 残らずあるな


急いで ナギ・ナジュアナリ兄さんの所に行こうな


俺達の村には 沢山お菓子や甘い飲み物があるから

楽しみにしておいで・・」


俺は しゃがんで 子供達に視線をあわせて

努めて 優しくゆっくりと話した


妹のリリーシュや優しい祖母アリアならば 小さな子供の扱いは

上手いのだが・・


洞窟から出てしばらく 注意しながら 

砂漠の海を行く

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