第53話:出張料理人
異世界で料理をさせるにあたり、大きな問題があった。
鍋釜が全く足らなかったのだ。
元祖氏子衆はそれなりの料理道具を持っていたが、奴隷希望者は違う。
着の身着のままで逃げてきて、ろくな料理道具を持っていない。
元々買い与えなければいけないと思っていたから、思い切って掘っ立て小屋の数だけ料理道具を買い与えた。
同時に料理の才能がある者を発掘すべく、料理大会を開催した。
大量の食材も買い与えなければいけなかったが、石姫皇女が面白がってイベリコ豚から興味をそらせたのでよしとした。
大量に雑炊が作れるように、アルミ製の48cm79リットルの寸胴鍋9180円を400個買って367万2000円使った。
36cmの片手中華鍋を2079円を400個買って83万1600円使った。
36cmの鉄製フライパンを3333円を400個買って133万3200円使って、残金が2億2800万円になった。
廃鶏と米と小麦だけで一冬過ごしてもらう心算だったが、そうはいかなくなった。
キャベツ、白菜、玉葱、ジャガイモ、サツマイモ、大根、人参など大量に買った。
異世界の豚の代わりになる、豚肉も大量に買った。
それでお手本の料理を作ってもらった。
異世界の豚を使って作る料理を、日本の豚で作ってもらった。
異世界の氏子衆に、異世界の豚を屠殺して解体してもらった。
ドライソーセージとセミドライソーセージ、使う部位ごとに色々作ってもらった。
ハムも生ハムから燻製を強く利かせたものを、部位ごとに作ってもらった。
大好きなベーコンがレパートリーにあった事はとてもうれしかった。
基本冬の間食いつなぐ保存食だから、塩分や燻製が強い物が多い。
俺が苦手な血を使ったブラッドソーセージやレバーを使ったレバーソーセージは、一度石姫皇女に試食してもらって、口にあわなければ現地の人に食べてもらう。
石姫皇女が元々食べたがったのは、イベリコ豚の生ハムだったのだから。
異世界にもドイツのヴァイスヴルストのような、作って半日で食べる鮮度重視もウィンナーもあれば、ブラートヴルストのようなものもあった。
ハンガリーサラミのような物もあれば、スペインのチョリソのような物もあった。
作りたて茹でたて焼き立てのソーセージは絶品だった。
これには石姫皇女も舌鼓をうっていた。
だが、直ぐに石姫皇女は俺に料理を作らせる事思い出した。
いや、今まで忘れたふりをして異世界人料理大会を楽しんでいたんだ。
直ぐに出張料理人を自宅に呼んで料理させろと言いだした。
出張料理人を派遣している会社を調べたが、料理の種類が限られていた。
イタリアンの調理人が31人。
フレンチの調理人が24人。
中華の調理人が2人。
創作の調理人が8人。
和食の調理人が17人
もう2社調べたが同じような感じだった。
結局何度もやり取りして、こちらが用意した異世界の豚肉と、向こうが用意した食材を使ってイベリコ豚料理を作ってもらうことになった。
しかもイベリコ豚を使ったスペイン店にも食べに行くことになってしまった。
別ジャンルの料理人が作ったイベリコ豚料理では満足できないというのだ。
そして本職のスペイン料理人が作ったイベリコ豚料理を、異世界で再現しろと無茶振りをする。
俺はそんなに器用じゃない。
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