第19話:防御力強化と料理教室
日本と異世界の往復は、ネット注文していた商品の配送に応じて行った。
その間の石姫皇女の食欲暴走については、何も言うまい。
言ってもむなしいだけだし、腹も立つ。
ただ異世界氏子衆の食生活が劇的に変化した事だけは言っておきたい。
商品になる強力粉は食べられないが、ライ麦と大麦を卵と一緒に食べている。
以前伝えた卵入り大麦粥と茹卵から、卵を挟んだライ麦サンドイッチに進化した。
毎日最低でも2000個の卵を廃鶏が産むのだ。
刻んだ茹卵をたっぷりライ麦パンにはさみ、ケチケチせずに塩を振って食べる。
氏子衆には御馳走のようで、幸せそうに食べていた。
その程度の料理で幸せそうにしている氏子衆を見ていると、もっと美味しいモノを食べさせてあげたくなるから不思議だ。
バターやサラダ油が使えれば、もっと美味しいパンが作れるし、目玉焼きや玉子焼き、フライドエッグだって作ることができる。
「女神様、配祀神様、親鶏のすき焼きができました」
ライラが俺に変わって鶏すきを作ってくれた。
俺は子供の頃から、牛や豚のすき焼きよりも鶏のすき焼きが好きだった。
特にひね鶏と呼ばれる、卵の産みが悪くなった廃鶏のすき焼きが大好きだった。
廃鶏には独特の硬さはあるが、じっくり煮込んだすき焼きなら関係がない。
塩胡椒で焼くにしても、上手に筋切りしたら全く問題がない。
亡父が鶏肉販売をしていた時期があり、亡父から多少の手ほどきを受けているから、巫女衆に筋切りの技術を教えた。
「私達はこれでもう十分満足した、後は下げ渡すから分けて食べなさい」
「「「「「有難き幸せでございます」」」」」
本当は巫女達と一緒に和気あいあいと食べたいのだが、それでは神としての威厳がなくなるし、俺はともかく石姫皇女が怒り出すかもしれない。
俺の若い女の子達と一緒にご飯が食べたいという欲望のために、石姫皇女を怒らせてしまって、氏子衆の支援ができなくなっては大変だ。
それに俺にも、住宅ローンの支払い分と、一生寝て暮らせるくらいの金を異世界で手に入れたいという欲がある。
その為には石姫皇女を怒らせる事だけは避けたいのだ。
「広志、お前の心に浮かんだ鶏ミンチのハンバーグはそんなに美味しいのか。
鶏つくねと鶏ハンバーグの違いをもっとしっかり調べるのじゃ。
ブロイラーのミンチに比べて廃鶏のミンチはそんなに美味いか。
さっさと調べて作るのじゃ」
石姫皇女には本当に困る。
巫女衆が席を外すと、とたんに身勝手な事を言い出す。
仕方ないからんネットで調べたのだが、つくねは、こねて丸めるという意味をもつ「捏ねる」からきている。
手でしっかりとこねて丸めるめてから、棒や串に刺して形を作って焼いた料理の事を「つくね」と呼ぶべきだと思う。
ハンバーグの起源は、18世紀頃にドイツのハンブルクで労働者が好んで食べていたタルタルステーキという説が濃厚だ。
タルタルステーキは生肉を細かく切り、タマネギ、塩コショウ、香辛料を混ぜたものだったが、それがアメリカに伝わり「ハンブルク風ステーキ(ハンバーグステーキ)」と呼ばれるようになり、今日のハンバーグの形態になったというのが定説だ。
基本的に、ハンバーグは牛肉あるいは牛と豚の合い挽き肉を使用する。
肉、玉ねぎ、パン粉、卵、塩、コショウ、香辛料をよく混ぜ合わせ、楕円形に形成しフライパンやグリルで焼く。
だから鶏を材料にした料理をハンバーグと呼ぶこと自体が間違いだと思う。
話はそれるが「つみれ」という物もある。
「つみれ」の語源は「摘み入れる」からきているから、肉や魚を包丁で叩いたりすり鉢で擦るなどした、ミンチ状よりも肉類を細かく滑らかにして、そこにつなぎの卵や片栗粉、調味料を加え混ぜて「つくね」よりもペースト状に近いタネにしてから、直接だし汁や湯の中に入れて茹で固める料理を呼ぶべきだと思う。
「ええい、もうよい、説や考えなどどうでもよくなった。
ここの巫女衆に作り方を教えるのじゃ。
私が何時ここに来ても同じものが食べられるようにするのじゃ」
本当に石姫皇女は身勝手だ。
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