第149話クリスマスパーティー

 翌日の午前中、俺はリビングにて準備を進めていた。


 飾り付けをしたり、テーブルをくっつけたり……。


 今日は久々に全員が揃うので、俺も気合いが入ってるのかもしれない。




「お兄! わたし、もう出かけるね!」


「おう、気をつけろよ。知らない人についていくなよ?」


「もう! 子供じゃないんだから!」


「なにを言ってる? まだまだ子供だよ」


「むぅ……とにかく、行ってきます!」


「おう、行ってらっしゃい」


 麻里奈の方も、友達とクリスマスパーティーをするそうだ。

 きちんと夜までには帰ってくるので、そこまで問題ないだろう。






 そして、お昼過ぎになった頃……チャイムの音が聞こえてくる。


「おっ、来たか」


 少しそわそわしつつ、玄関のドアを開けると……。


「「「「「メリークリスマス!」」」」」


 そこにはアキ、智、剛真、飛鳥、小百合の五人が揃っていた。


「おう、メリークリスマス。まあ、上がってくれ」


 それぞれがお邪魔しますと言い、家に上がってくる。


「さて、手洗いうがいをしたら……まずは、全員で挨拶をしてくれるか?」


 全員が黙って頷き、手洗いうがいを済ませ……和室にやってくる。


「母さん、ようやく全員が揃ってうちに来てくれました。今日は騒がしくなるかもしれないけど、大目に見てください」






 全員で挨拶をしたら、リビングに移る。


 そして、お菓子を食べつつ……。


「イェーイ!」

「イェーイ!」

「「盛り上がってるかい!?」」


 騒がしい二大巨頭のアキと飛鳥が盛り上げ……。


「やれやれ、相変わらず騒がしい人たちですね」

「あら、そんな飛鳥ちゃんが好きな男の子は誰かしら?」

「くっ!? 」

「まあ、嫉妬する気持ちはわかるわ」

「はっ? ……どういうことだい?」

「そりゃ、私の飛鳥ちゃんと仲良くしてることよ」

「でしょうね!」


 冷静な二人は静かに見守りつつ、話に花を咲かせている。


「んで、剛真……森川とかどうだった? お前達も、昨日はデートだったんだろ?」


「う、うむ……と、冬馬……キスとは、いつして良いのだ?」


「なに?……難しい質問だな。相手を三秒以上見つめてみろ、それで目を逸らされなかったら平気かもしれん」


「なるほど……俺が逸らしてしまうな」


「おいおい! そこは俺に聞くべきだろ!」


 アキが、俺の肩を組んでくる。


「貴方に聞いても意味ないわよ。どうせ、ろくなこと言わないんだから」


 その目の前に、小百合がいる。


「あのね! 私はね、智が——ムゥ〜!」


 飛鳥が前のめりになって、話をしようとし……。


「は、話すなよ!?」


 智が、急いで口をふさぐ。


 その光景に、俺は思わず……。


「ハハッ! ……また、こうやってバカやれるなんてな」


 中学時代によく見た光景だ。

 俺が剛真と話す出すと、アキが絡んできて……。

 小百合がやってきて、何かしら突っ込んで……。

 なになに!?と飛鳥がやってきて……。

 それを智がストッパーの役割を担って……。

 そんな日々を過ごしていたな。


「へっ……二年もかかっちまったけどな」


「うむ……感慨深いものがある」


「そうですね……悪くないですね」


「ウンウン! 楽しいねっ!」


「ふふ、みんな大分変わったけれどね」


「みんな、俺のせいで随分遅れちまったけど……これからも、よろしく頼む」


 それぞれが頷き、笑顔を見せてくれる。


 月並みなセリフだが……友達って良いもんだな。





 そして、話は恋愛方面へ向かう……。


「小百合! 聞いてよ! 智ったら、クリスマスなのに手を出さないの!」


「あらあら、ヘタレね」


「ちょ、ちょっと!? おい! 冬馬!?」


 止めようとする智を、俺が羽交い締めにする。


「まあまあ、しっかり聞こうぜ」


「ほうほう、面白そうじゃん」


「うむ、興味深いな」


「わたしは、キスから先を待ってたのに……そう、ヘタレよ!」


「ぐぅ……しかし、冬馬だって」


「えっと……すまん、詳しくは言えないが、それよりは進んでる」


「ぬぅ……俺は耳が痛い」


「やれやれ、俺がレクチャーしてやろうか?」


「それはやだよー! エロいこと教えるでしょ!?」


「あだぼーよ! というか、それを求めてるじゃないのか?」


「違うの! そういうんじゃなくて……ゴニョゴニョ」


 恥ずかしそうに、俯いている姿はまさしく女の子である。

 変われば変わるものなんだな……それは俺もか。


「クク、すっかり女の子になって。飛鳥、俺がいうのもなんだが……よかったな」


「冬馬……うんっ! わたしも良かったっ! 冬馬と友達に戻れて!」


「それにしても……はぁー、あの飛鳥がねぇ」


「ふふん! 私だって花の女子高生だもん! これで、小百合とアキだけだね?」


 ……おっ、良いところに切り込んだぞ。


「はっ、そこの女と一緒にすんなよ。俺は作らないだけだし」


「あら、心外ね? 私だって作らないだけよ。釣り合う男がいなくて」


「ハァ? お前は性格悪いからだろ?」


「なるほど、私にケンカを売ると? ……よし、覚悟しておきなさい。年明けには、貴方の恥ずかしい記事を書いて学校に張り出すから」


「はい、ごめんなさい」


「どうせ、性格悪いですよ」


「そんなことありません。小百合様はヤサシイデス」


「もう、二人が付き合えば良いのに」


「「ハァ!?」」


「なに赤くなってんだよ!」


「な、なってないわよ! 勘違いしないで!」


「やれやれ、昔と変わりませんね」


「ははっ! 相変わらず仲が良いな!」


「「よくないっ!」」


「いや、シンクロしてるし」


 ……この二人は、前途多難そうだな。


 まあ、気長に様子を見た方が良さそうだ。


 それにしても……真兄の言った通りだったな。


 昔からの友達は大事にしろって……後になって、後悔するからと。


 俺はこいつらを失ったまま、もし年を重ねていたら……。


 きっと、後悔していたに違いない。

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