第130話祭りの後の話

 文化祭の翌日、いつもの時間に駅へと到着する。


「あっ——冬馬君、おはよう」


「おう、おはよう。どうだった?」


「うん、後はお母さんがやるから気にしなくて良いって」


「そうか。まあ、専門家でもあるからな」


「こ、怖かったよ〜! お母さんが、必ず後悔させてやるって……」


「うわー、そりゃ怖いわ。そういや、親父さんには? あと誠也は?」


「言わないでおこうって。心配するだろうし、もう終わったことでもあるからって」


「そっか……まあ、話し合って決めたら俺から言うことはないな」


「あっ、お母さんが冬馬君の予定を聞いてって……」


「ん?」


「是非、お礼がしたいって……」


「「いらんわ、そんなもん」」


「………おい?」


「えへへー、言うと思ったもん」


「まいったな……」


 まあ、綾が楽しそうだから良いか。




 電車を降りて、いつものように学校へ歩いていく。


「そういや、今更だが……」


「なぁに?」


「いや、一度も怖いって言ってなかったよな?」


 不安そうではあったが。


「ふえっ? ……ふふ、意外と鈍いところもあるんだね?」


「あん?」


「そんなの——冬馬君がいたからに決まってるよ」


 そう言い、目が眩むような笑顔を見せてくる。

 俺の脳内を刺激し、頭がクラクラしてくる……。


「そ、そうか」


「おや? 照れてますねー?」


「はいはい、照れてますよー」


 全く……敵わんぜ。



 学校に到着すると……。


「冬馬——!!」


「ウルセェ——!」


「いや、お前も煩いから」


「ったく、どうした?」


 アキと剛真という珍しい組み合わせだ。


「いや、たまたま一緒になってな。冬馬に話があってよ。剛真、お前からで良いぜ」


「あっ、もしかして……」


「ん?」


「ううん、どうぞ」


「ゴホン!……愛子さんとお付き合いをすることになった」


「「はい??」」


 俺とアキの声が重なる。


「う、うむ! 俺とてよくわからないのだが……後夜祭の後、家まで送ってくれと言われて……告白されてしまったのだっ!」


「「………まじか」」


「まじだ」


「ププッ! へんな三人! そっかぁ……あの後言えたんだ」


「いや、俺たちからしたらなぁ?」


「衝撃だよ! 事件だよ! かぁー! どいつもこいつも!」


「で、それを報告に?」


「う、うむ! 元はと言えば冬馬のおかげだからな。知り合ったのも、その先のアドバイスも……感謝する」


「そんなのお前が頑張ったからだよ。俺は何もしていない。ほら、頭を上げろって」


「ふっ、相変わらずの男よ。それでこそ、俺が認める数少ない男だ」


「ちなみに俺は?」


「答えた方がいいか?」


「いや、やめておく……ハァ、俺も彼女作るかね」


 ……小百合に聞いてみるか?

 まだ確信はないが……。



 そして、剛真はそれだけいうと走っていった。


「で、お前は?」


「ほら、行こうぜ。主役2人の登場だ」


「あん?」


「あっ——冬馬君! いこ!」


「おい、引っ張るなって!」



 綾に連れていかれ……下駄箱の先を見ると。


「あっ、忘れてた」


「お前って奴は……まあ、目的は果たしてるもんな」


「わぁ……! 冬馬君、おめでとう!」


「おう、ありがとな」


 そこにはミスターコンテスト優勝者として、俺のポスターが真ん中に貼られていた。


 すこし、いや、かなり恥ずかしいが……これで、煩い奴も減るだろう。


「冬馬君! すごいねっ! ぶっちぎりだよ〜!」


「やれやれ、参ったぜ。二位の俺より1.5倍かよ」


 すると森川と黒野もやってくる。


「凄いじゃん!」


「まさかと思ったけど。綾、良かったわね?」


「うんっ! あっ——愛子っ! もう! すぐに言ってよ〜!」


「そうよ。私だって、今さっき知ったんだから」


「いや〜少し気恥ずかしかったというかー余韻に浸ってたというか……」


 そのまま三人で話しているので、俺はそっと離れる。


 すると……。


「あら、来たのね」


「おう、小百合」


「げげっ!」


「相変わらずアキは失礼ね。こんな美少女が現れたっていうのに」


「自分で言うなっ!」


「貴方だって自分でイケメンとか言ってるじゃない。ププッ……負けてるけどね」


「ぐぬぬ……!」


 相変わらず、こいつらは仲が良いんだか悪いんだか。

 小百合の件は、俺の気のせいだったか?


「でも、賭けは私の勝ちね?」


「くそっ! 優勝できなかったからな……!」


「おい? なにを勝手に巻き込んでいる?」


「いや、こいつが冬馬のがカッコいいしモテるって言うからよ……」


「あん?」


「ふふ、今回はお手柄だったわ。これで、何か一つ言うことを聞いてもらえるから」


「……まさか、そこまで計算していたとは」


 本当になんというか、抜け目がないな。

 利用された形だが……まあ、なんでもするって言ったのは俺だしな。

 それに、俺にも利はあったし。


「で、何がいいんだよ?」


「それは後でのお楽しみよ。ふふ、恐怖に怯えていなさい」


「クッ! 冬馬、どうやら俺の命はここまでのようだ。ハァ……教室行くわ」


「おう、骨は拾ってやる」


「冬馬?」


「おっと……」


「全く……さて、貴方に相談があるわ。乗ってくれるのよね?」


「ん? ああ、もちろんだ」


「じゃあ、あとで連絡するわ」


「あいよ、俺にできることならやるさ」


「こんな相談、貴方にしか出来ないわよ」


 そう言い、小百合も去っていった。


 俺も綾と合流して、教室へと向かう。


 さて……あの二人はどうなることやら。




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