冬馬君は遅れたモノを取り戻す
第95話冬馬君は久々のお一人様にて色々気づく
次の日の日曜日のこと。
俺は朝から精力的に活動していた。
休日の、朝の恒例行事であるトレーニングをしたり。
さらに、そこから筋トレに励んでだり。
意識的に背筋を伸ばして歩いたり。
公園の遊具で体幹を鍛えたり。
これらは、ミスターコンテストのためだな。
その後は徒歩にて、久々に本屋を訪ねていた。
理由は簡単で、新作が発売したからだな。
「弥生さん、おはようございます」
「あら、冬馬君。やっぱり、来たのね。はい、どうぞ」
「ありがとうございます。今日は親父さんは?」
「まだ寝てるわ。昨日飲みすぎたみたいね。もう、起きると思うけど」
「そうですか。では、よろしくお伝えください。それと……綾は上手くやっているでしょうか?もし、俺に気遣ってるなら遠慮はいりません。仕事は仕事ですから」
「フフフ……ますます良い男の人になってきたわね。大丈夫よ、綾さんはしっかり仕事をしてくれているわ。お父さんも褒めていたし」
「ホッ……そうですか。いや、綾なら大丈夫だと思ってはいたんですけどね……」
「わかってるわ。私達のために言ってくれたのよね?」
「いや、それもありますが……意外とポンコツなところあるんで……まあ、それが可愛くもあるんですけどね」
「フフフ……愛されてるわね、羨ましいくらいに。私も恋したいわ。どっかに、男前で男気に溢れた殿方はいないかしら?うちのお父さんにもビビらないくらいの……」
「ハハ……アレにビビらない人ですか……中々条件が厳しいですね……俺も初めての時は、怖かったですし」
「懐かしいわぁ……もう、すっかり男の子になって」
「いえ、まだまだです。綾にも迷惑をかけていますし。ただ、弥生さんにそう言ってもらえると嬉しいです」
「男の子は大変ね。綾ちゃんは可愛いし、色々あるでしょうし……あら、引き止めてしまったわ。ごめんなさいね」
「いえ、こちらこそお仕事中申し訳ないです。では、失礼します」
……うーむ、弥生さんの親父さんにビビらない人かぁ。
あっ——何人かいるな……いや、でもなぁ……うん、一応考えておこう。
俺にとってお姉さんみたいな弥生さんには、幸せになって欲しいもんな。
俺は本屋を出て、喫茶店アイルに向かう。
「そういや、ここで綾と会ったんだよなぁ……いやはや、人生とはわからないものだな」
そんなことを考えつつ、喫茶店アイルに入店する。
「いらっしゃいませ……おや?今日はお一人ですか?」
「マスター、おはようございます。ええ、今日は発売日だったもので。綾も、今日は友達と遊んでいますし」
「ええ、おはようございます。なるほど、そうですか。まあ、友達付き合いも大事ですから。この歳になるとよくわかります。冬馬君も、今ならばわかるのではありませんか?」
「マスターが言うと含蓄がありますね……でも、言う通りだと思います。最近、新しい友達も増えたりして楽しいんですよね」
「それは
「そうですね……では、機会があれば連れてきますね。もちろん、マスターの店の雰囲気を壊すような真似はしません」
アレだな、啓介とかだったら問題ないかもな。
なんたかんだ最近はよく話すし、あっちから話しかけてくるようになったし。
そういや……一度も、プライベートでは遊んでないな……クラスのやつと。
「ええ、その辺りは信用していますよ……では、ごゆっくりどうぞ」
「はい、ありがとうございます」
俺はおなじみの席に着き、小説を読み始める……。
そして毎度のことながら、読了後はなんとも言えない気持ちになる。
「面白いのはもちろんのことだけど……こう、胸が熱くなるというか……うん、自分が物語の中に入ったような感覚……何回味わっても良いものだ……」
やはり、自分の時間も大事だな……。
めちゃくちゃ楽しいし、満足感もある。
ただ、少し——寂しくもある。
綾に会いたいと思ったり、友達とかも気になる。
いつの間にか、意識が変わっていたんだな……。
「やりたいことがたくさんありすぎて時間が足りないか……」
前にも思っていたが、さらに思うようになった。
好きなことの時間に、友達付き合いも入ったってことが大きいと思う。
こっからは、念密に計画を立てていかないといけないな。
その後美味しいコーヒーをいただき、お昼ご飯を食べて会計を済ませる。
「マスター、ご馳走様でした」
「ええ、またいらしてください」
店を出た俺は読了感に浸りながら、涼しくなってきた街を散策する。
「もう、11月も過ぎたもんな……」
さて……まずは、啓介に連絡して。
博と黒野も、一度会わせないとだな。
剛真や智も、ダブルデートしてほしいって言ってるし……。
2人きりだと緊張するみたいだな。
もちろん、その気持ちはよくわかるので協力はしようと思う。
「俺も綾と会う時、緊張したもんなぁ……今は緊張こそしないけど……ドキドキはずっとしているしな……何言ってんだ俺は……」
そんな時、スマホが鳴る。
「おっ、真兄からか。なになに……2時に駅前に来いか。なら、このままいくとするか」
今日の午後は、蓮二さんや淳さんと遊ぶ日なのだ。
俺は、駅前に向けて歩き出すのだった……。
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