第78話冬馬君はケリをつける
今日は10月の12日。
……いよいよ、決行する日を迎えた。
そろそろ、文化祭の準備も始まる。
俺は、綾との文化祭を楽しみにしているんだ……!
というわけで……後顧の憂いは絶たせてもらおうか……!
「さて……綾、準備はいいか?」
「う、うん!」
「安心してくれ。何があろうと俺が守る」
「は、はぃ……はぅ……」
「ガハハ!行くとするか!」
剛真と綾を連れて、ブルーエンペラーのアジトへ向かう。
真司さんと森川は、後から来る予定だ。
もちろん、私服を持ってきたので、それに着替えてある。
そして……。
ビルの周りには人だかりが出来ていた。
赤い服と青い服の連中が睨み合っている……。
「わっ!いっぱいいる……け、警察とか来ないのかな?」
「時間がかかれば来るだろうな……だが、蓮二さんが足止めをしてくれる手筈になってる」
「では、俺も安心して暴れられるな!」
先頭を切って、俺はビルに近づいていく……。
「あっ!レッドウルフだ!」
「この間のやつか!」
「なんかめちゃくちゃ可愛い子もいる!」
「ゴリラみたいのもいるぞ!?」
チッ……乱闘は避けたいところだが……。
「冬馬!!そのまま行け!こっちは任せろ!」
「淳さん!ありがとうございます!」
騒ぐ外野をレッドギャングのメンツが抑えている……。
その間に俺たちは、ビルの内部に入る。
そして……とあるドアを開ける……いたな。
中央に永倉慎吾。
その隣には東郷拓也。
いるのはその2人だけで、取り巻きは全部外にいるようだな。
……ん?あのデカイのがいないな……。
一応、警戒しておくか。
「……まさかな……お前がレッドウルフだったとはな……」
「よう、よく逃げなかったな?」
「あぁ?なんで逃げる必要がある?むしろ好都合だ……例の良い女も連れてるしな。そっちも狙っていたからな……今日辺り連れ去る予定だったが……今ここで、お前の目の前で犯してやるよ……!」
「と、冬馬君……」
俺は綾の肩を抱き寄せ、やつを睨みつける……!
「貴様は今、俺の逆鱗に触れた……五体満足でここから出られると思うなよ……?」
「こっちのセリフだ!!たくっよー!あの女もすぐにヤらせるかと思えば、全然ヤらせねえしよー!あんな見た目で何純情ぶってやがる!さっさとヤらせろっつーの!」
「ひ、ひどい……!愛子は!貴方のこと好きなのに!」
「はぁ?じゃあ、ヤらせろっつーの!」
「違うよ!好きだからだよ!だからこそ恥ずかしいし、中々踏み出せないんだもん!」
「はぁ?……意味わからん。まあ、良い。あの女よりお前のがあっちの具合がよさそうだ」
……俺の我慢が限界を超えた……。
「おい……クズ」
「あぁ!?」
「もういい、喋るな。その腐った性根を叩き直してやる……!」
「ハッ!俺を哲也と一緒にするなよ?イイぜ……拓也!お前はあの女を捕まえろ!」
「させるわけがないだろうが!!剛真!!」
「おう!任せとけい!」
「え〜……見るからに強そう……だけど……退いてもらうよ……!」
「綾!扉の前にいろ!そこは大丈夫だ!」
「う、うん!」
俺は部屋の中央で、永倉と対峙する……。
「お前の所為で金ヅルは消えるわ、ろくなことがねえな……消えろ」
パンチが繰り出される!
「チッ!速いな!」
ボクシングスタイルにより、連続してジャブが繰り出される!
「オラオラ!!どうした!?手も足も出ないか!?」
「……金づると言ったな……?アキのことか……?」
「あったりめーだろが!哲也のバカが!!こんな奴に負けやがって!」
「お前を許せない理由が増えた……一発で沈むなよ……?」
「ハッ!なにを───グハッ!?」
「どうした?ボディに一発ぶち込んだだけだぞ?」
「カ、カハッ!お、重てえ……!」
「当たり前だ。お前らみたいな、なんちゃってヤンキーとは違う。俺は、本物のヤンキーを知っている。お前らみたいのがいるから、誤解されるんだよ!」
「ククク……まいったぜ……こんな強いとはな……哲也!!やれ!!」
綾がいるドアが開き、誰かが入ってくる!
……なんてな、手は打ってある。
「よう、冬馬。なんかデカイのがいたからぶん殴ったが……まずかったか?」
「いや、真兄。それで良いよ、ありがとう」
「な、な───!!ア、アンタは……!?」
「ん……?なるほど……今のボスがお前とはな。永倉……」
「真司……!まだレッドウルフと繋がってたのか……!」
「し、慎吾さん……」
そこには……悲しい表情をした森川がいた。
「あぁ?なんでオメーが……そういうことか」
「う、嘘だよね……?」
「はっ?バカな女だな!あーあ、面倒くせ……お前はただのお遊びだよ。みんなでまわす予定だった……はい、これでおしまい」
「そ、そんな……!」
「愛子……」
森川は泣き崩れる……。
そして……俺が殴る前に奴が動いた。
「ウラァーー!!」
「ゴハッ!?」
体当たりをくらい、永倉が吹っ飛ぶ!
「貴様──!恥を知れ!!俺が惚れた女子を泣かすんじゃない!」
あっ、あれ死んだかな?
……どうやら、気を失ったようだな。
「は、浜中君……?え?ア、アタシのこと……?」
「こ、これは……!いや、そのですな……」
……あっちは放っておこう。
そういえば、東郷拓也は……?
目線を向けた先には、床に横たわる奴がいた。
どうやら、瞬殺されたようだな……さすがは剛真だ。
「冬馬、お前らはさっさと帰れ。後始末は俺がしておく。安心しろ、こいつらは余罪が多い。未成年とはいえ、そう出てはこれないだろう。それに……いや、良い。早く行け」
「綾、帰るぞ」
「え?で、でも、先生一人で……」
「大丈夫だ、俺らがいたら邪魔だ。剛真!森川を連れてけ!」
「お、おう!た、立てるか?」
「え?う、うん……」
そうして、四人で急いでその場を後にする。
……こっからは、綾には見せられないからな。
真兄はおそらく……奴らを締め上げる気だ。
二度とそんな気が起きないように……。
「さて……ここまでくれば平気だろ」
ビルとビルの間で、一息つく。
「綾……アタシ、バカだったね……簡単に騙されちゃって……」
「愛子……ううん!悪いのはあの人だよ!愛子はなにも悪くないよ!」
「そうそう、森川気にすんな……とは言わん。だが、さっさと忘れた方が良い。大丈夫だ、他にも良い男はたくさんいる。なっ!剛真?」
「そ、そうだ!森川さんみたいな、か、可愛らしい女性ならもっと他に良い男が見つかる!!」
「吉野……浜中君……そ、そうかな〜……うん!そうかも!あ〜あ!なんでいつも男運悪いんだろうな〜……」
「愛子……」
「綾、ありがとね。吉野も浜中君も……実際に聞いてみなきゃ、私信じなかったし……全然気づかなかった……あっ……」
森川がふらつく……無理もない。
「剛真、森川を送って行け」
「え?お、俺でいいのか?」
「お前しかいないだろうが。なにせ、何も問題は起こっていない
「え?わ、悪いよ……」
「そうだよな……俺みたいのと一緒じゃいやだよな……」
「え?ち、違うし!あ〜!わかったよ!お願いするよ!さっきは堂々としてたのに……」
「いや、あれは……」
「ほら!いくよ〜!」
「ま、待ってくれ!」
……そうして、二人は人混みに消えていった。
「ふふ、どうだろうね?」
「さあな……まあ、外野がどうこういうことはないだろう。もし惹かれ合うなら、自然とそうなるだろ……俺と綾のようにな……」
「え……?う、うん、そうだね……あ、ありがとね!今回は私のために……冬馬君がいて、本当に良かった。いなかったら、愛子がどうなっていたか……」
「そうだな……じゃあ、お礼が欲しいところだな。目をつぶってくれるか?」
「え?あ、は、はぃ……」
俺はビルの壁に手を当て、綾にキスをするのだった。
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