第77話冬馬君は決行日を決める

 翌日の火曜日の昼休み、俺は他クラスを訪ねた。


 今日は、綾は森川と黒野と食べるそうだ。


 なので、1人で急いで昼飯を食べて、こちらにきたわけだ。


「おう、剛真。昨日はありがとな」


「ガハハ!気にするな!」


「今、平気か?ジュースでも奢るからよ」


「おっ!気にせんでも……いや、ちょうどいい!」


「はい?……まあ、いい。じゃあ、行こうぜ」


 2人で中庭のベンチに座りながら、コーラ缶を開けて飲む。


「プハァ!あー!炭酸が美味えな!」


「ガハハ!だな!」


「……さて、改めて礼を言う。綾と森川を守ってくれてありがとう」


「うむ、受け取ろう。して……相談なんだが……」


「うん?俺にか?」


「う、うむ……あの、森川という女子なのだが……悪い男に引っかかっているのか?」


「……まあ、そうだな。なんだ、惚れたか?」


「なぬっ!?な、何故わかったのだ!?」


「おい!揺さぶるな!馬鹿力なんだから!」


「おっと、すまん……」


「たくっ……で、何をどうしてそうなったんだ?」


「うむ……まず、初対面の女の子に怖がられなかったのだ……」


「あー、なるほど……でも、それなら綾もだろ?」


「まあ、そうなのだが……清水さんは、冬馬の友だから安心して、普通に接してくれる面もあるだろう?だが、あの森川という女の子は……本当に普通に接してくれたのだ。それに……え、笑顔が可愛いのだ……ウ、ウォォーー!!」


「だから揺さぶるな!肩が外れるわ!」


「う、うむ……でだ……俺が付き合えるとは、これっぽっちも思っていない。だが、そんな男に引っかかっているなら……手助けをしたい……!」


「剛真……だが、部活があるお前は……」


「先生と部員には説明してきた。彼女でも友達でもないが、好きな女の子が危ない目に遭うかもしれないと……なので、最悪暴力沙汰になると。そしてその場合は、部員から名前を消してくれとな……皆から励まされてしまったがな。頑張ってくださいと」


「剛真……気に入った!!それでこそだ!わかった、もしもの時は連絡する。それでいいか?」


「ああ!頼む!なんでも言ってくれ!」


 こうして、昼休みが終わった……。


 ……さて、正直言って助かる。


 剛真の力は、場合によっては俺を超える。


 作戦を立てておかなくてはな。





 そして放課後、学校の帰り道……。


「ヘェ〜!?やっぱり、そうなんだ〜!」


「ああ、そうらしい……やっぱり?」


「うん、なんかそうかなーって……愛子は気づいてなかったけどね。でも、愛子も良い男って褒めてたよー?友情に熱い男だって。あと、ナンパも撃退してくれたって」


「ほう?まあ、それに関してはなんとも言えんな。とりあえず、強力な助っ人ができたことは確かだ。これで、森川の守りを任せられる。俺は奴らを潰すのに専念できる……!」


「……ごめんなさい、私の都合で……」


「ふっ、気にすんな。そもそもやり方が気にくわない。女の子を傷つけるとか、男の風上にもおけない奴らだ……!さて……さっさと片付けるとするか。でないと、綾とゆっくりイチャイチャできねえじゃねえか……!あっ、めちゃくちゃ腹たってきたな……!すぐにでも行くか……?」


「ふえっ!?え?ええと……」


「よし、決めた。綾とイチャイチャするためにも、早急に奴らを潰す……!!」


「あわわっ……ど、どうしよう?凄いことされちゃうのかな……?で、でも……」


 ……よし、早急に決行日を決めよう。


 俺だってな……イチャイチャ成分が足りないんだよーー!!





 家に帰った俺は、すぐに準備をする。


「もしもし、真兄?」


『おう、冬馬か……決まったのか?』


「うん、早い方がいいかなと思って。あっちが動き出す前にね。ピンチに陥ってから救出とかは勘弁願いたいし」


「ハハハ!漫画の主人公だったら、クレームが来るところだな!そこは、森川とヒロインである清水が捕まったりして、ピンチになってからの救出劇だろ!みたいな。なんていうか、最近ではテンプレって言うんだろ?』


「いや、俺は漫画の主人公じゃないし。そもそも、それじゃ綾が怖い目にあうってことじゃんか。俺はそんなのは御免だ、テンプレなどぶち壊してやる。大体、いい加減にウンザリしてるし。俺の親友を恐喝するわ、可愛い彼女の友達を傷つけようとするわ、俺と綾のイチャイチャを邪魔するわ……あいつら、許さん……!」


『……最後の一文がなければ、カッコよかったんだが……まあ、お前らしいか。で、俺はどう動けば良い?』


「俺と綾は乗り込みます。真兄は、後から森川を連れてきてください」


『ん……?なるほど……そういう作戦か。ところで、清水を連れて行くのか?』


「迷ったんですけどね。でも気になるだろうし……森川も来るから、そのケアが必要かなと」


『流石に、お前1人だと厳しいんじゃないか?』


「いえ、剛真の助力を得ました。もちろん、アイツには極力手は出させませんけど」


『なるほどな……アイツなら百人力だな。淳に連絡したら、アジトの周りは掃除してくれるらしいから問題なさそうだな』


「あっ、そうなんだ。じゃあ……明日の夕方で平気かな?」


『ああ、俺の仕事終わり次第ってことか。明日は残る予定もないし平気だな』


「じゃあ、それでよろしくです」


『あいよ……久々に暴れるかね?』


「いや!アンタはダメだから!」


『冗談だよ……じゃあな』


 そして、通話が終わった……。


 ……いや、アレ本気だったよな……?


 うん、明日は真兄にも要注意だな。


 俺はその後も、剛真に連絡をしたり。


 綾に連絡をし、明日に備えるのだった……。









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