第60話冬馬君はラッキースケベ

 その後、なんでもない顔をして、自分のクラスの場所に戻る。


 森川や黒野辺りはニヤニヤしていたが、あえて無視をする……俺は。


「綾〜何してたの?」


「な、なにも!」


「顔真っ赤よ?触らせたの?」


「触らせてないよ!」


「あれれ〜……となると……」


「ああ、アレかしら?」


「あぅぅ……!」


 ……恥ずかしがる綾、可愛いなぁ。

 しばらくの間、俺はその様子を眺めるのであった。



 その後、順調に種目は進んでいく。


 そして、いよいよ最後の種目となる。


 男女混合リレーである。


 4人の選手は、俺、綾、バスケ部の中野、黒野となる。


「練習してないが……行けるのか?というか、黒野って速いのか?」


「大丈夫よ。ねっ、中野」


「そうだね。同じ中学で陸上部だったからね」


「ん?ああ、中野はそういうパターンか。陸上部は、どこの部活行っても活躍できるポテンシャルがあるからな」


「身長が、高校に入る前に急に伸びたからね。というわけで、俺と黒野の連携は問題ないよ。どっちかというと、吉野と清水さん……心配ないか」


「中野、黒野、綾、俺の順番か。フッ、舐めるなよ?愛のパワーの前には、連携など関係ない。たとえ綾が失敗しようとも、俺がカバーする。それが、恋人というものだ」


「あ、あ、愛……!」


「あらら……使い物になるかしら?」


 それぞれ配置につき、準備をする。


 すると……。


「冬馬ーー!!頑張れよーー!!」


「お兄ーー!!頑張ってねーー!!」


 ビデオカメラをまわしながら、親父が手を振っている。


 さらに……。


「綾ーー!!こけるんじゃないよーー!!」


「お姉ちゃんーー!!怪我しないでねーー!!」


 ……あらら、結構恥ずいな、これ……。


 そして始まりのピストルが鳴り響く!


 中野が先頭に出て、トップで黒野にバトンを渡す。

 その黒野だが速い!

 1位を継続して、綾にバトンを渡す。


「綾ー!!頑張れー!!」


 ……綾が走ってきたのだが……。

 バインバインではなく、ユッサユッサとあるものが揺れている……。

 大きすぎず小さくないアレが、俺の目を釘付けにする。

 ……ということは……!

 他の奴らも見ているということではないか!

 様子を見ると拝んでいる奴までいる始末。


「綾ーー!!ゆっくりでいい!!」


「えぇーー!?なんでーー!?」


 綾はそのまま走ってきたのだが……。

 あっ!と思った瞬間、俺は駆け寄る!


「きゃあ!?」


「あぶねー!」


 転びそうになった綾を、なんとかバトン受け渡しゾーンで抱きとめたのたが……。

 柔らかなものが手の中に……こ、これは……!


「キャーー!!」


「す、すまん!」


 驚いて離す際に、再び微かに触れてしまう……。


「ひゃん!?あ、え、は、はい!バトン!!」


「お、おう!」


 1位できたが、すでに2人が前に出ていた。


「だが……ウオオオオオオ!!!!!!」


 今の俺は!蒸気機関車だーー!!

 燃料は!たった今投下された!

 それは……オッパイだーーー!!!

 なんだ!?あの素晴らしい感触は!!


 最後のアンカーは200メートル走る。

 ならば、まだ追いつける!!

 俺は全力疾走し、1人抜き、もう1人に猛追する!


「嘘だろ!?俺は全国大会に出場したんだぞ!?」


「知るかーー!!そんなものは!今の俺には関係ない!」



「おーっと!冬馬選手!速い速い!ラッキースケベにより、今の彼を止められる者はいないでしょう!アレの感触を知る者なら理解できるはず!」


「あのマシュマロに触ったのなら、それは仕方のないことですね。良いわね、私も触りたい……ちょっと?なんでマイクをきろうとするの?」


 ……あいつら、うるせーー!!

 あとで覚えてろ!


 そいつも抜き去り、トップでゴールテープをきる!


「ゼェ、ゼェ、ゼェ……死ぬ……」


 さすがに心臓がバクバクして、一歩も動けない……。

 横にずれて、大の字になる。


「冬馬君!だ、大丈夫!?」


「綾、すまなかった……決してわざとではなくて……ゼェ……」


「わ、わかってるよ!冬馬君はそんな狡い手は使わないこと!そ、それに私を助けてくれたんだし……お、驚いてごめんね?イヤだから叫んだんじゃないよ?その……好きだから」


「わかってる……いや、しかし……疲れた……」


 その後なんとか立ち上がり、クラスの席に座る。

 皆から、肩や背中をバシバシと叩かれる。

 おい?強くね?恨みこもってない?という奴も、何人か居たが許す。

 それほどに素晴らしい感触であった。

 いかんな……感触を知ってしまった……。

 そうなると、なおさら触りたいと思ってしまう……。


 そして、うちのクラスは優勝したらしいのだが、あまり俺の耳には入ってこない。

 俺の頭の中は、アレの感触で一杯になってしまっていた……。







 そして体育祭も終わり、俺は綾の家の前にいた。


「冬馬君?大丈夫?やっぱり疲れたよね?」


「いや、大丈夫だ。じゃあ、バイト行くわな」


 今日はバイトがあるので、ついでに綾を家まで送ったのだ。


「ま、待って!こ、こっちきて!」


 綾に引っ張られて、玄関前の死角の部分に連れてかれる。


「ど、どうした?」


「が、頑張ったら……ご、ご褒美……はぅ……」


「ああ、あれか。いや、無理しなくて良い。さっき、偶然とはいえ貰ったしな」


「だ、だ、だから……さ、触ってもいいです……」


 ……ホワッツ?

 今、なんと申した?

 ……触ってもいい?どこを?

 まあ、落ち着け。

 勘違いしたら、ただのイタイ奴だ。

 よしよし、俺は冷静な男。


「ど、ど、どこを……?」


 全然冷静じゃなかった……。


「む、胸……さ、触ってもいいです……はう」


 な・ん・だ・と・?








「と、冬馬君……?」


 おっといけない、意識が飛んだ。


「そ、その……良いのか?」


「と、冬馬君なら……良いです……」


 さ、触る?どうやって?揉む?いや、それは……。

 いや!綾が勇気を出して言ったんだ!

 俺がヘタレでどうする!?

 俺は震えそうな手を押さえつけ、正面から手を胸に伸ばす。


 ……そして、意識して初めて……ソレを揉む。


「はぅん……」









 ……俺は気がつくと家にいた。


 あまりの衝撃に、あの後の記憶が曖昧である。


 店長にメールすると、バイトに来たというので一安心ではある。


 ただ、物凄い働きぶりだったそうだ。


 ……スゲェー感触だった。


 あんなに気持ちの良い感触が、この世に存在したのか……。


 しかも……綾の声がエロかった……。


 オッパイでこんなのなら、本番とかどうなってしまうのだ?


 ……というか、本番で暴走しない自信がない。


 ハァ……また、アキに相談しなくてはな……。

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