第59話冬馬君は借り物競争でテンプレ通りになる
午後の競技は、玉入れ、グルグルバット徒競走、大玉ころがし。
俺が出場する、借り物競争、男女混合リレー、以上となる。
ただ、その前に……見たいが見せたくないものが始まる。
そう、チアガールによる応援の時間である。
可愛い女の子達がボンボンを持ち、華麗なダンスを披露する。
「「「ウォォォ!!!」」」
野郎どもの野太い声が響き渡る!!
無理もない、もちろん綾が1番可愛い。
だが、基本的に見栄えの良い女子が多い。
見ているだけで、眼福というものだ。
物凄い盛り上がりを見せる……ただ、俺が複雑なのを除いては。
そしてダンスを終えた綾が、俺に駆け寄ってくる。
「と、冬馬君!どうだったかな!?」
「顔が可愛い、脚が綺麗、おへそも綺麗、ポニテ可愛い……好きだ」
「……エヘヘ、嬉しい……と、冬馬君に見て欲しくて頑張ったんだよ?」
大好きな彼女にこんなこと言われて我慢できる男がいるだろうか。
いや、そんな奴はいない、いたならそれは頭のおかしい奴だ。
つまり……思わず抱きしめてしまう。
「はぇーー!?と、冬馬君!?あ、あの!ご家族も見てるよ!?」
「いい、抱きしめさせてくれ。いやか?」
「い、いやじゃないです……えへへ」
周りからヤジが飛ぶが、そんなことはどうでもいい。
俺は、満足いくまで綾を抱きしめるのであった……。
さて、いよいよ借り物競争の時間がきた。
俺は準備をし、定位置につく。
え?あの後どうしたかって?
真司さんが来て、思い切り引っ叩かれたよ。
全く、邪魔しないでいただきたい。
そして、ピストルが鳴る!
「ウォォーー!!」
俺はいち早く、お題が入っている箱にたどり着く!
ナメンナヨ!?こちとら陸上部に勝った男だぜ!
「どんなお題だろうがやってやる!なになに……ほう?こんな簡単なお題で良いのか」
ククク……今の俺にはもってこいのお題だな。
周りにも、良いアピールになるであろう。
お題を理解した俺は、綾の元に行く。
「と、冬馬君??ど、どうしたの?真剣な表情して……」
「綾ーー!!好きだーー!!俺と付き合ってくれーー!!」
「……え?はぇー!?わ、私達、付き合ってなかったのーー!?」
「ポンコツか!!……いや!そうではなくて!お題だ!好きな子に告白して連れてこいという!」
「……こ、こんな、みんないるのに……でも、う、嬉しい……!」
「綾!時間がない!失礼!」
「ひゃあ!?冬馬君!?」
綾をお姫様抱っこし、お題地点まで戻ってから、再び走り出す!
「おっーと!吉野選手!お題は……一目瞭然ですね!それにしても速い速い!さすがは、今来てる男は違いますねー!彼女ともラブラブのようです。何やら、これを機に一歩進みたいようです。え?彼ですか?俺の親友ですよ」
……アキーー!!午後の部を実況してんのお前かよ!!
「ええ、彼はとても良い男です。未だに認めない方々もいるようですが、彼女の顔を見てください!あの両手で顔を隠す恥じらいの姿!それでいて、身を任せている信頼感!ベタ惚れじゃないですか!え?私ですか?生徒会長です。え?知ってる?ああ、そういうことですか。私は、彼と腐れ縁です」
……お前もかー!!小百合ーー!!
「冬馬ーー!!私、アンタのこと諦めてあげるーー!!」
「冬馬ーー!!ありがとうございます!おかげで、目が覚めました!」
……飛鳥と智也か……どうやら、上手くまとまったようだな。
これで、少しは不義理を贖罪できたかね。
「ガハハ!昔を思い出すな!」
やれやれ……剛真か……これも綾のおかげだな。
綾がいなければ、あいつらとも再び関わることもなかっただろう。
俺に、再び人と関わる勇気をくれた綾に、感謝をしなくてはな。
照れ臭いが、きちんと伝えるとしよう。
俺は綾をお姫様抱っこしたまま、一位でゴールテープをきるのだった。
「綾?大丈夫か?」
「は、はい……ドキドキしたよぉ……」
綾を降ろすと、小百合がマイクをこちらに向ける。
……いつの間に!?これもお前かよ!?
「はい!吉野さん!お題の確認をしますね!……好きな子に告白して、一緒にゴールすること!はい!確かに!この難題をクリアしました!一位です!おめでとうございます!」
「ありがとうございます」
「では、ついてですが……彼女のどこに惹かれたのですか?」
「ひゃい!?」
「……彼女の容姿が優れていることは、誰もが知ってることだと思います。もちろん、それを好きなことは否定しません。ただ、俺は……それ以上に、彼女の優しさに惹かれました。俺は、とても薄情な人間でした。とある事情により自ら壁を作り、心配してくれる友に不義理を働いてしまいました。そして、傷つくことを恐れました。そんな俺の心を、彼女の優しい心が溶かしてくれました。このまま友達との仲を修復しなかったら、俺は将来後悔していたでしょう。一度途切れたものを修復するのは、容易なことではありません。ただ、彼女がその勇気をくれました。綾、ありがとう。お前のおかげで、俺はこいつらと再び友達になれた」
「冬馬君……ううん!私こそ!」
「冬馬……綾さん、ありがとね」
「綾ちゃんーー!!ありがとうーー!!」
「清水さん!ありがとうございます!」
「ガハハ!感謝する!」
「冬馬ーー!これからもよろしくなー!!」
「よくわからないが、感動した!」
「若いって良いな!」
「昔を思い出すわね!」
ギャラリーから拍手が巻き起こる!
その後、綾に連れ出され、ひと気のない場所へ行く。
「もうなにがなんだか……」
「ごめんな、ずっと言いたかったんだ。綾がいたから、俺は仲直りする勇気を持つことができた」
「冬馬君……えへへ、嬉しいね。私でも、冬馬君の力になれるんだね。なんか、私ばっかり色々貰ってるみたいで……」
「何を言うかと思えば……いつだって力になっているさ。言っておくが……俺は、綾のことが大好きなんだ。そして好きな子に、誇れる自分でいたいからな」
「冬馬君……」
目を閉じた綾に、俺は優しくキスをするのだった……。
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