第42話冬馬君は制服デートにドギマギする

 さて、皆さん。


 今、私は非常にマズイ状態です。


 え?口調が変だって?


 いやいや、何も変なことはありませんよ?


 ……ただ、疑似賢者モードというやつですよ。


 でないと、アレがアレでアレアレですから……。





「綾?そろそろ離してくれると、助かるんですけど?」


「ヤダ!このまま!エヘヘ、冬馬君……」


 ダメだ……嬉しいのかわからないが、恥ずかしさもぶっ飛んでいるようだ。

 ……それにしても……ヤダって可愛いな。

 それに、ワガママ言われたのも初めてだな……悪くない。

 疑似賢者モードを継続するとしよう……俺、頑張ってーー!!


「わかった、もういいよ……で、今日はどうする?まずは昼飯か」


「私、ラーメン食べたいです!冬馬君のバイト先でもいい!?」


「ん?そういや……付き合ってから行ったことないか」


「そうなのです!わ、私を紹介してほしいです!」


 うーん……テンション上がってるな。

 これはこれで、めちゃくそ可愛いからいいけど。


 結局腕を組んだまま、駅まで行くことになる。





 フゥ……助かった。

 トイレに行くといい、なんとか逃れることができた。

 いや、幸せだし、嬉しいし、可愛いから勿体ない気はするが……。

 いかんせん、男としての生理現象が……アレが……おさまってくれ……!!

 あっ、ちなみに言いますが、処理してないからね?

 ただ、鎮めただけたからね?

 ……全く、色々な意味でドギマギさせてくれる可愛い彼女だこと。



「あっ!冬馬君!そ、そのごめんね?恥ずかしかったよね?」


 綾は今更ながら、恥ずかしがっているようだ。

 もう、ほんとうに、どうしてくれようか……!

 ただでさえ、セーラー服にドギマギしているというのに……!


「い、いや、そんなことはない。嬉しい、いや、待て……」


「と、冬馬君が照れてる……可愛い……エヘヘ、頑張った甲斐あったね!」


「可愛いって……綾、勘弁してください。全く……ほどほどにな」


「なんかいいね!制服デートって!これも夢だったんだ!」


「まあ、それには同意しよう。こう、フワフワした気持ちになるな」


「一緒だね!嬉しい!」


 その後電車に乗り、綾の地元駅に到着する。


「でも、こういう時校則緩くて良かったよね」


「確かにな。厳しいところだと、学校帰りに寄ってはいけないところもあるからな」


「あれ?……そういえば、冬馬君はバイクで学校来ないの?確か……通学許可とれば、平気だよね?」


「ああ……いや、だって目立ちたくないんだよ」


「あっ、そういえば……でも、私がいうのもアレなんだけど、もう目立っちゃったよね?」


「まあな。ただ、あのバイク元は40万くらいするんだよ。あんなの乗って行ったら盗られちまうよ。もしくは、イタズラされるな」


「えぇ!?そんなにするの!?わ、私はいつもそんなモノに……改めて、ありがとうございます。あのね……私、冬馬君の後ろに乗るの好き!広い背中がね、すっごく安心して、キュンとなるの!」


 キュンとしてるのは、俺だっつーのーー!!

 ドギマギさせてくれるじゃねえか……!!


「そ、そうか……いや、それにな……」


 いかん……!

 今日は、上手く言葉が出てこない……!


「冬馬君?どうしたの?」


 手を後ろで組んで、下から覗き込むなーー!!

 狙ってるのか!?天然なのか!?


「えっとだな……バイクで通ったら、綾と登下校できないだろ?そのー、俺は割と楽しみにしてるのだが?」


「……冬馬君、顔赤いよ?」


「ほっとけ。綾こそ赤いが?」


「はぇ?ホ、ホント!?あ、ホントだ。顔熱くなってる……」


「と、とりあえず、行くか」


「そ、そうだね!お腹減ったね!」





 そして、ラーメン屋に入店する。

 少しお昼時を過ぎていたので、ノーゲス状態だ。

 放課後残っていたし、いちゃついていたからだな……。


「おう、冬馬か。おや……その子は……」


「あ、あの時はどうも!えっと、正式に彼女になりました、清水綾と申します!」


「ご丁寧にありがとう。友野です。そうか、あの時は違ったのか。冬馬、食っていくのか?」


「ええ、お願いしていいですか?」


「もちろんだ。よし、今日は奢ってやる。好きなの頼みな。店長は、飯食いに行ってるしな」


「いや、それは悪いですって!」


「おいおい、ラーメンぐらい奢らせてくれ。いつも、冬馬には助けられているんだ。これぐらいはさせてくれ」


「……はい、わかりました。ありがとうございます!」


「あ、ありがとうございます!」





 そして席に着く。


「えっと……いいのかな?私まで……」


「まあ、それを言ったら俺もなんだけど……」


「はいよ、お冷だ。全く、お似合いのカップルだな。若いのに遠慮して。仕方ない、俺が決めてやる。ラーメンと餃子でいいか?」


「では、それでお願いします。ありがとうございます」


「ありがとうございます!」


「さっきも聞いたな。まあ、良いことだな。じゃ、待ってな」





「カッコいいよなぁ……」


「と、冬馬君も、カッコいいよ?」


「お、おう。いや、ああいう大人に憧れるよなー」





 そして、すぐにラーメンと餃子がやってくる。


「ごゆっくりどうぞ」


「ありがとうございます。頂きます」


「有り難く頂きます」


 そしてラーメンを食べ始めるのだが……。


「冬馬君……私、餃子食べたいです!」


「はい?食べればいいかと……」


「ほっ……良かったぁ。ニンニク臭い女の子嫌かなって……でも、私餃子好きで……」


「本人が気になるならアレだけど、俺は気にしないぞ?これからも、気にせずに好きなものを食べるといい。俺はそんなことで嫌になどならない」


「冬馬君……好き……」


 ノーゲスで良かったな……。


 ただ、友野さんにはからかわれるな……。


 次のバイト日が少し怖いが、甘んじて受け入れよう……。




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