第38話2人の夏休み最終日

 今日は8月31日。


 いよいよ、夏休み最終日を迎えた。


 宿題も終わらせて、明日の準備も昨日のうちにやっておいた。


 何故なら、今日は午前中からデートをするからだ。






 まずは、綾を迎えにいく。


「おはよう、綾。今日も可愛いな。ポニテに、水色のシュシュがよく似合っている」


 今日の綾は、動きやすそうな格好をしている。

 おそらく、長い時間を疲れないようにするためだろう。

 シンプルにV字の赤Tシャツに、青のホットパンツを履いている。

 健康的な脚線美が、眩しい……。


「エヘヘ……だって、冬馬君好きだって言ってたから……」


「そうか、ありがとな。うん、好きだな」


「ありがとう!じゃあ、行こ!」


「ああ、いくか。後ろに乗りな」


「うん!よいしょと、はい!オッケーです!」


 どうやら、相当ご機嫌のようだな。

 提案した甲斐があるというものだ。

 朝から夕方まで、デートをしないか?と。

 したことなかったから、電話越しで大喜びしてだな……可愛かったな。






 まずは、午前中カラオケに行く。


「ねえねえ!冬馬君!これ歌えるかな?」


「うん?……ああ、これなら歌えるな」


「ホント!?い、入れてもいい?」


「ああ、歌ってあげるよ」


 綾のリクエストに応えつつも、楽しく歌う。

 これも、俺にとっては考えられないことである。

 綾が、俺を変えたのだろうな。

 だが、悪い気はしない。


「わぁー!上手!次は、デュエット曲とか歌ってみたい!」


「いいぞ。うーん、これとかか?」


「あっ!これなら歌えるよ!」


「じゃあ、これにするか」


「うん!」


 2人で、沖縄出身で有名なアルファベット2文字のバンドの歌を歌う。


「冬馬君!凄いね!ラップも完璧だったね!」


「フッ、まあな。これも、1人カラオケの成果だな」


「今更だけど……私と一緒で楽しいかな?」


「ん?つまらなそうに見えるか?」


「ううん!見えないけど、気を遣ってるのかなーとか……」


 俺は両手で、綾の頬に触れる。


「ひゃっ!?」


「おい、俺を見ろ」


「は、はい……」


「これがつまらなそうな目か?」


「そ、そんなことないですぅ……か、顔が近いよぉ……」


「おっと、いかんいかん。さすがに、ここでするわけにはいかんな」


「はぅ……」


 その後、気を取り直して二時間ほど歌い、カラオケを終える。


 お昼時なので、喫茶店アイルに向かい入店する。


「マスター、こんにちは」


「こんにちは!」


「ええ、こんにちは。お二人とも、いらっしゃいませ。ホホ、冬馬君は持ってますね。今日も、いつもの席空いてますよ」


「おっ、最近いつもですね。では、使わせてもらいます」


 席に着き、すぐに注文を済ませる。


「マスター、アレあるかな?」


「おや、運がいいですね。今ならありますよ。たまたま、昨日気分が良くて作りましたよ」


「よしっ!では、それを二つでお願いします」


「ええ、かしこまりました。少々お待ちください」


「ねえねえ、何を頼んだの?」


「それは来てからのお楽しみさ」


「うーん……なんだろ……?」


「それよりも、明日の確認だ。まずは、一緒に学校へ行く」


「うん!それで、みんなの反応を見るんだよね?」


「ああ、そうだ。別に付き合ってます!って宣言する必要はない。聞かれたら『あっ、付き合ってます』と自然体な感じでいえば、おそらく突っ込まれずらくなるはずだ」


「……確かに、そうかも。変に恥ずかしがったり、自分から言うとからかわれそうだね」


「そういうことだ。もし、それでも言ってくる奴がいたら、その時に考えよう」


「うん!わかった!」


 その後、明日の待ち合わせ場所や時間を決める。

 すると、タイミングよくマスターがやってくる。


「お待たせしました。こちらが当店の裏メニューのカレーでございます」


「ありがとう、マスター。では、いただきます」


「カレーが裏メニュー……?い、いただきます」


「うん!相変わらず美味い!」


「美味しい!コクが凄い!苦味……?なんだろう?」


「ホホ、お嬢さんは味覚が優れていますね。では、失礼。冬馬君、あとは頼みますね」


「ええ、わかりました。さて、ここは何屋さんだ?」


「喫茶店……コーヒー!」


「そういうことだ。マスターオリジナルブレンドコーヒーが、隠し味で入っている。唯一無二のカレーだ」


「へぇー……凄いね、冬馬君。その年で裏メニューとか知ってるんだ?」


「まあな。ただ、マスターの気分次第だから、滅多に食えないけどな」


 その後、美味しく楽しい食事を済ませる。


 その後、ゆっくりした時間を過ごし、喫茶店を後にする。


「さて、最後はボーリングだっけ?」


「うん!やってみたい!定番だもん!」


 今日は、基本的に綾のリクエストに応えている。

 まあ、俺も嫌いじゃないからいいしな。


 歩いていける距離にあるので、手を繋いで歩いていく。


「あ、あのね……こ、恋人……あっ……」


「これで、いいか?」


「う、うん……恋人繋ぎだ……エヘヘ……なんで、手を繋ぐだけでこんなに幸せな気持ちになるんだろうね?」


「確かにな……なんとも言えない、不思議な気持ちになるよな」


 恋人繋ぎに変え、街中を歩いていく。


 そして、ボウリング場に着く。


「さて、やるか」


「うん!」


「じゃあ、俺からだな」


 よし、カッコイイところを見せなくては!


 いけーー!!ぶっ飛ばせーー!!


 俺の放ったボールは、物凄いスピードでピンにせまる!


 そして、バゴーン!!という音が響き……よし!


「すごーい!ストライクだよ!一発目なのに!」


「ふふふ、鈍ってないようで安心だ」


「あんなスピード見たことないよ!」


 次は綾が投げたのだが……。


 ……目に毒だ……。


 なんだ、あの投げる時の綺麗な脚は……。


 お尻もプリっとしている……いかんいかん!


 ……気がつくと、他の男も見ていた……。


 俺は羽織っていたシャツを脱ぐ。


「綾、ちょっと……」


「うん?どうしたの?」


 俺は綾の後ろに回り、腰にシャツをまきつける。


「え?え?」


「その……脚がな、凄い見られている。すまん、俺が嫌なんだ」


「え?あ、え、は、はい……」


 他の男から落胆の声が聞こえるが、嫌なものは嫌だからな。


「すまんな……なんと器が小さいことか……!」


「う、ううん!いいの!わ、私が気合い入れすぎたのかも……冬馬君、脚が綺麗だって褒めてくれたから……」


 なんということだ……!

 嬉しいが、俺以外には見せたくない……!


「そういうことか……その気持ちはとても嬉しい。そして、綺麗だ」


「あ、ありがとう……」


 その後3ゲームし、ボーリング場をでる。



「ねえ、冬馬君」


「ん?どうした?」


「今日は、ありがとう!私のしたいことに全部付き合ってくれて……」


「いや、いいさ。俺も楽しかったしな」


「あ、あのね!まだ、時間あるかな!?」


「うん?そうだな……5時半か……まあ、少しなら平気だな」


「じゃあ、あそこのベンチ座ろう!」


 綾に手を引かれ、ベンチに座る。


「おいおい、引っ張るなよ。どうした?」


「あ、あのね!最後にしたいことと言いますか……してあげたいといいますか、冬馬君が喜ぶことしたいなって……」


「うん?要領を得ないな……俺は、何をどうすればいい?」


「はい!どうぞ!」


 綾は恥ずかしそうにしながら、太ももをポンポンしている。


 ……これは、まさか……聞くのは無粋というものか。


「し、失礼します……」


 俺はゆっくりと身体を傾けていく……そして、頭が柔らかなものに触れる……。


「ひゃっ!?」


「す、すまん!」


「ち、違うの!そのままでいて!少し、びっくりしただけだから……」


「そ、そうか……あぁ………」


 これが膝枕というやつか……天国だな。

 目の前には好きな女の子の顔があるし。


「き、気持ちいいかな?これが好きだって書いてあって……だから、脚が見えるのを……」


「そういうことか。ああ、気持ちいいよ。ありがとな、綾」


「よ、良かったぁー。あとね……」


 綾は自分の髪を押さえながら、俺に近づき軽くキスをした。


「こ、これ夢だったの……」


 そう言い、顔を両手で押さえて、悶えている。


 ……めちゃくちゃ可愛いのだが?


 ……俺、こんなんで学校生活できるのだろうか?


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