209話 先手

 城内を進んでいると……。


「待て! ……そこにいるのは誰だ?」


 物陰から一人の男が現れた。


「お前は……」

「ど、どうも……」

「全員下がってろ。俺が話をする」


 皆を待機させ、そいつに近づいていく。


「勝手に出てきたのか?」

「い、いえ、ライル様が味方の兵士達を解放する際に、一緒に解放させて頂きました。でも、どうしていいか分からず、ずっと隠れてて……でも、アレス様が来たって話を聞いて……し、信用できないですよね?」


 さて、どうする?

 今は一人でも戦力が欲しいところだ。

 信用は出来ないが……変わりたいと言ったことを信じるとしよう。


「完全には無理だ。だが、出てきた以上……戦う気はあるってことか?」

「……はいっ! 俺にできることがあるなら!」

「わかった、ではついてこい」




 そいつを連れ、再び玉座の間に向かう。


 それにしても……場内には敵しかいないのか?


 先ほど、兄上が味方の兵士達を解放したと言った。


 しかし、味方らしき人たちが見当たらない。


 まさか、全員やられてしまったのか?





 そして、玉座の間に近づくと……。


「主人殿! 敵が退いていくのだ!」

「なに? いや……なるほど、逃がさないようにか」


 玉座の間の通路の両端には兵士達が溢れている。

 俺たちが中に入ったら、出ることは難しいだろう。


「どうします〜?」

「問題ない——このまま突入する!」


 俺は闇のマントを展開して、姿を消しておく。


 カグラが先頭に立ち……その扉を開ける!


 その中では、六人が待ち構えていた。


 その中の一人にターゲットを絞り——駆け出す!


「来たか……ん? アレスがいない? なるほど、消えているのか」

「闇のマントですか……ふっ、今更ですね——私には通用しませんよっ!」


 ターレスの側近が、接近してきた俺に剣を向ける!

 その剣は、俺の刀と交わり……闇が解け始める。


「ふふ、闇に乗じての先制攻撃とは考えましたが……」

「やれ」

「なっ!?」


 闇が解け——もう一人の男が姿を現す。


「敵を貫け——アースランス!!」

「ガァァ!?」


 土の槍は、右に避けようとしたハロルドの左腕を貫いた。


「く、くそっ! 仕留められなかった!」

「上等だ——ロレンソ。これで、あいつの戦力は半減する。あとは、オルガに任せよう」


 そう、先ほどあった人物こそがロレンソ-ハデスだ。


 以前の騒動の時に死刑を免れて、牢屋に入れられていた。


 そして、俺に恩義を感じている彼は、勇気を出して戦いに参加すると言った。


 あの時、助けるか迷ったが——これにて先手はもらった。

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